RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.3 [Sun,15 April]
Streets of Long Beach

不運のファイナルラップ
 フィニッシュまで残り5コーナーと迫ったファイナルラップでライアン・ハンターレイに接触され、3位の座を失った琢磨にとって、ロングビーチでの一戦は実に悔しい結果に終わったといえる。

 レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラDW12ホンダに乗る琢磨は、2回も首位に立つ素晴らしいレースを演じた。したがって、8位という最終結果では、琢磨とチームの努力は到底報われない。

 「今回のレースはいろいろな意味ですごいレースでしたね」と琢磨。「過去2年間のロングビーチとは大きく異なっていました。別に僕がこのコースのことを嫌いだからというわけではなく、ただ運がなかったのです。ロングビーチは大観衆が集まる1戦ですし、ロングビーチと同じ市街地コースのセントピーターズバーグでは力強いパフォーマンスを発揮できたので、ここに戻ってくることを楽しみにしていました」

 「けれども、初日は信じられないことに雨が降り、肌寒くなりました。普段のカリフォルニアとはかけ離れた天候です。コースは湿っていて、セッションの終盤でようやくドライタイアが使えるようになりました。このため走るたびに速くなっていったので、マシーンを評価するのはとても困難な状況です。チェックできたのは、せいぜいギアレシオとライドハイトくらいのものでした」

 このセッションで琢磨は2番手となったものの、続くセッションは雨のために中止。そして土曜日のプラクティスでは9番手となった。「セッションは1時間しかないのに、トラック上で様々なアクシデントが起き、何度も赤旗が提示されました。バランスはそれほど悪くありませんが、改善したいポイントはいくつか残っています。周回数は少なく、このセッションでできることは限られていましたが、僕たちは今度こそQ2に進出することを期待していました」

 残念ながら、滑りやすい路面で琢磨は「僕のミスでした。マシーンをスライドさせてウォールに軽く接触してしまったのです。そのまま走行を続けられましたが、リアのトラックリンクが曲がっていて、まるでスローパンクチャーを起こしているように感じられました。その後、ダメージを負ったマシーンでラップタイムの更新に成功します。このタイムで、僕はグループの7番手となりました」

 Q2に進出できるのはグループ内のトップ6なので、結果的にQ1突破はならなかったが、エンジン交換に伴うペナルティがシボレー・ユーザーに科せられた結果、琢磨は6番グリッドからスタートできることになった。

 「いろいろな状況を考えると、上位グリッドからスタートできるのはラッキーでした。トップグループの近くにいるときは定石というか、理論的にもっともいいレース戦略をとるのが一般的で、今回の場合でいえば柔らかめのレッド・タイアでスタートすることになります。けれども、僕たちはこの戦略を選ばず、ブラック・タイアでスタートすることにしました。というのも、もしも最初のスティントをしっかり走りきることができれば、シボレー勢の追い上げが予想される第2スティントと第3スティントを有利に戦えると考えたからです。いかにポジションを落とさずに前半戦を終えられるか、もしくは、たとえ落としたとしても最小限に食い止められるかどうかが、勝負の鍵を握っていたのです」
 
 「僕の前からスタートしたマシーンの全車、それに僕の直後につけていたマシーンはすべてレッド・タイアを装着していたので、完全に囲まれてしまいました! けれども、僕はスタートでポジションを守り抜き、リスタートはとてもエキサイティングなものになります。なにしろ、いまはブラック・タイアを履いているけど、この後でレッド・タイアに履き替えることになっていたんですから……」

 ここから琢磨はトップを目指して走り続けていく。「首位で迎えたリスタートは本当に楽しかったですよ。周囲は強敵ばかり。僕の横につけていたのは、その前に一度追い抜いたダリオ・フランキッティですが、彼はレッド・タイアを装着しています。したがって、完璧なタイミングでダッシュしなければなりませんが、これに成功したので最高の気分でした」

 「その後コーションになったときには、燃料補給をしてもいい周回数となっていました。僕は首位を走行していましたが、ピットの呼びかけに応えてピットストップに飛び込みます。『ずいぶんと勇気ある判断だね』と言われそうですが、僕に異論はありませんでした。僕はレッド・タイアに履き替えると、大きな集団に呑み込まれ、12番手まで順位を落とします。それでも、リスタートには自信がありました。レッド・タイアのパフォーマンスを生かしてプッシュし、このレースで優勝することになるウィル・パワーや、そのほかの上位陣をオーバーテイクしていきました」

 やがて、琢磨は再びトップに返り咲く。マシーンのバランスも上々だったが、ここで新たな“敵”が登場する。それは燃費だった。「このレースは計算上、2ストップで走りきることが可能でした。僕はウィル・パワーを13秒も引き離していましたが、ここからは燃料をセーブしなければいけません。その後、周回遅れに行く手を阻まれてタイムをロスしたところ、ウィルが急速に追いついてきて、僕をパスしていきます。侮りがたいスピードでした。シモン・パジェノーも速く、しかも3ストップを選んでいたために激しくプッシュしており、燃料をセーブしていた僕を追い越していきました」

 それでも、琢磨は3位の座を守ったままファイナルラップに入ったが、ハンター−レイに接触され、順位を落とすことになる。その後、ハンター−レイの行為は違反と見なされ、ペナルティが科せられて6位に降格したが、これは8位に転落した琢磨にとってせめてもの慰めとなった。

 「あとはフィニッシュするだけでよかったのに、ライアンがやってきて、僕を強引に押しのけていったのです。今年はまだチェッカードフラッグを見ていませんが、徐々にフィニッシュに近づいていることは間違いありません」

 「非常に残念でした。チームは最高の仕事をしてくれたので、チームの皆のことを考えると申し訳なく思うしとても悔しいです。とはいえ、今回もいいパフォーマンスを示すことができたし、今後に結びつくであろう、実り多い1日でした」

 次戦は、2011年に琢磨が力強くレースをリードしたサンパウロの市街地コースで開催される。「まずは完走できるように、流れを変えないといけませんね。いまの勢いを上手く保つことができれば、きっとそれもできると思います!」

written by Marcus Simmon
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