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自分たちの競争力に確信が持てないまま迎えたベライゾン・インディカー・シリーズのテキサス・モーター・スピードウェイ戦で、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングと佐藤琢磨は7位完走にこぎ着ける健闘を示した。過去、チームはこの1.5マイル(約2.4km)のオーバルコースをあまり得意としてこなかったが、No.30をつけたダラーラ・ホンダが見せた好走により、彼らは高い評価を得ることになった。しかも、琢磨は途中2ラップ・ダウンとなりながらこの結果を残したのである。
土曜日に248ラップの決勝を行う週末のスケジュールはいつもより短いもので、金曜日に1回だけ行われたフリープラクティスで琢磨は11番手となる。「パフォーマンスとバランスに関していえば、僕たちはまずまず満足していました」と琢磨。「オーバルコースではいつも予想がつかない部分があって、ラップタイムはどれだけスリップストリームを使ったかなどによって結果が大きく変わります。僕たちは最速だったわけではありませんが、比較的コンペティティブで、バランスについては満足していました。このプラクティスは通常よりも30分間延長されていました。その理由は、ファイアストンは数ヶ月前にテストを実施したものの、この日はとても難しいコンディションだったからです。今シーズンはダウンフォースが減ったことでタイアにとっては厳しい状況となりましたが、これ以外にテストの機会はありません。そこでファイアストンは右側に硬めのコンパウンドを、左側にソフトなコンパウンドを採用しました」 フリープラクティスは決勝レースに向けてタイアの皮むきに費やされることになり、ニュータイアを装着しては計測ラップを2周走り、またニュータイアを装着しては走行するの繰り返しとなる。マシーンのセットアップはこれを終えてから進められた。「僕たちが持ち込んだセッティングはとても良好でした。ただし、チームメイトのグレアムは苦しんでいました。ターン1やターン2でリアが不安定に感じたようです」 テキサスのターン1とターン2はかつてに比べるとバンク角が浅くなり、しかも2018年はダウンフォースが削減されたことでとてもチャレンジングなドライビングを強いられることになったのだ。「これまでは強い縦Gを感じていましたが、今回はステアリングを切る量が増え、大きな横Gを感じながら走行することになりました。正直いって気持ちのいいものではありません。これはロードコースに似たドライビングで、右リアタイアに大きな負担がかかります。そしていつグリップを失うことになるのかと不安になりますが、グレアムはこれが好きではないのです」 このためレイホールは予選で苦戦。いっぽうの琢磨は9番グリッドを獲得することになる。「できることはすべてやったように思います。僕たちがいちばん速かったわけではありません。しかし、オーバルで9番手だったので、チームは本当によく頑張ったと思います。ギアリングはほぼ完璧でした。シャシー・バランスは、ターン1とターン2ではステアリングと格闘することになりましたが、ターン3とターン4では軽いアンダーステアでした。9番手という結果に飛び上がるほど喜んだわけではありませんが、悪くない結果だったと思います」 昨シーズンに比べてレースセットアップで400ポンド(約182kg)もダウンフォースを削減したのは、接近戦を作り出すことが目的ではなく、結果的にタイアの負担を大きくするとともに先行するマシーンに追随するのが難しい状況を生み出した。そしてウォームアップで琢磨は4番手という好結果を得ることになる。「僕はまずまず満足していましたが、最大の心配はタイアのブリスタリングで、レースではこの点が気がかりでした。事前に行ったタイアの皮むきが役に立ってくれるとともに、翌日のレースはスタートが30分間遅いことに期待を寄せていました。いずれにしても、僕たちには自信がありました」 最初のスティントの大半を琢磨はトップ10圏内で走行。その途中でジェイムズ・ヒンチクリフと好バトルを演じた。「最初のスティントはいつも難しいものです。先の見えないコンディションでは、特にフロントウィングのダウンフォースをあまり増やしたくないので、どうしてもコンサバティブな走りになりがちです。僕のマシーンはほんの少しだけアンダーステアが強めでしたが、いずれもコントロールできる範囲でした」 最初のピットストップが一巡したところで琢磨は9番手につけていたが、予期せぬタイア・トラブルが発生したため、2回目のピットストップを予定より大幅に早めて行うことになる。「2スティント目の途中からフロントタイアにブリスターが起きたのがわかったので、ウェイトジャッカーなどのツールを駆使してこれに対応しました。ところが第2スティントの2/3が終わったあたりで今度はリアタイアのグリップが急激に低下したのです。ひどいブリスターが起きたのが原因でしたが、まるでタイアがバーストしたように感じられました。そこでタイア交換の必要があることを無線でチームに知らせました。『あと1周は持つかもしれないけれど、それ以上は無理』と伝えたのです」 これで琢磨は2周遅れとなったが、その後のピットストップが一巡しても琢磨はトップ10圏内に留まっていた。やがてロバート・ウィッケンズとエド・カーペンターがクラッシュしてコーションとなり、ここで琢磨は1ラップ分を取り戻すこと(ウェイブアラウンド)が認められて1周遅れとなる。さらにレース終盤にはウィル・パワーとザッハ・クラマン・デメロの接触によりコーションとなり、琢磨はついにリードラップに返り咲くこととなった。「最後のスティントを迎えるまで自分が2ラップ・ダウンとは気づきませんでした! トップと同一周回に戻るまで150ラップほどを費やしたことになります。長いレースで、やや待ちくたびれました。それでも、レース中にライアン・ハンター-レイ、ヒンチクリフ、2台のペンスキーなどと素晴らしいバトルを演じることができました」 「僕たちの戦い方が実を結んだのです。すべてのスティントでブリスターが発生しましたが、第3スティント、第4スティント、第5スティントはコントロールできる範囲でした。僕たちのペースは決して遅くなく、ときにはトップグループと同じくらいの速さでした」 好バトルを演じた末の7位は決して悪い結果ではない。しかし、エアロダイナミクスのルールが変更になった影響でツーワイドで走行するのは困難になり、使える車線は1.5レーンほどしかなかった。つまり、オーバーテイクは極めて困難だったのである。 次週はロードアメリカでのテストが行われるためにレースは開催されない。テストを終えた琢磨はブリヂストンのイベントに出演するために一時帰国。続いてロードアメリカでのレースに臨むことになる。 written by Marcus Simmons |