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カリフォルニアのソノマ・ロードコースで行なわれたインディカーシリーズ第13戦は、佐藤琢磨にとって難しい一戦となったが、それでも琢磨はレース終盤にトップ10まで盛り返し、それまでの苦労が報われる成果を手に入れようとしていた。
ところが、最後のリスタートが終わると、琢磨はフロントのグリップが極端に低下するという奇妙なトラブルに見舞われ、これが引き金となってアクシデントに遭遇する。ここでピットインした琢磨は、18位という不本意な結果でチェッカードフラッグを受けることとなった。 このレースに先立ち、琢磨とKVレーシング・テクノロジーはロータス・カラーのダラーラ・ホンダをサーキットに持ち込み、今シーズン2度目となる事前テストを行なった。しかし、ことは期待どおりには運ばなかった。 「ミドオハイオでは本当に力強いレースができましたが、それはテストで前向きな答えが得られたことと、様々なことを理解できたおかげでした」と琢磨。「すでに成功を収めたこのパッケージをソノマに持ちこみましたが、ここではいい結果を得られませんでした。このサーキットにマッチしているのはもう少し別の考え方で、なかなかいいセッティングは見つかりませんでした。それさえも、いま色々なことを学んでいる最中の我々にとっては有用な情報になったといえます」 「つまり、テストは成功で、その結果を検討してからサーキットに戻り、マシーンが順調に仕上がっていることを期待していました。ところが、プラクティスのコンディションはテストのときとは異なり、しかも、チームはセットアップにおいて根本的な何かを見落としてしまっていたようです。ドライビングしにくいうえ、スピードも伸び悩んでいました。ひとつだけのことではありません。バランスとグリップが不足していたのです」 「ソノマは魅力的なサーキットで、いままで走ったどんなサーキットとも異なっていました。コースのアップ・ダウンが激しく、テレビで見ているだけだとその半分ほどしか伝わってきません。ターン1とターン2はまるで壁のようで──スパのオールージュと同じように──、しかも、そこでブレーキングして90度ターンしなければなりません。ドライバーの集中力という意味ではとてもチャレンジングなサーキットで、バランスのいいクルマに乗っていたら、走っていて最高に面白いサーキットだったと思います」 予選は落胆すべき結果に終わる。予選グループ内における琢磨の順位は9位で、決勝には17番グリッドから挑むことになった。「KVレーシングのドライバーは揃って苦戦を強いられ、全員がQ2進出を逃しました」と琢磨。「状況を立てなおすにはウォームアップが最後のチャンスでしたが、そこでセットアップを少し変更したところ、ポジティブな感触を掴むことができました」 スタートはいきなりドラマチックな展開となる。まだスタートラインの手前だったというのに、琢磨は横転するダン・ウェルドンをランオフエリアまで使って避けなければならなかったのだから! 「スタート前にアクシデントが起きるべきではありませんが、それくらい、ドライバー同士が間隔を詰めていたのです。ダンが空中に舞い上がるのを見た直後、レースが中断になったと聞かされたので、事故に巻き込まれないよう、またコース上に散らばった破片を拾わないよう気をつけながら大回りをし、スピードを落としたので、いくつか順位を落としました。事故はスタートラインを越える前に起きたので、順位を落としてももともとのポジションからスタートできると信じていましたが、現実はそうなりませんでした」 琢磨はリズムを取り戻すと、ベルトラン・バゲットやラファエル・マトスらを相手に戦いながら、レースの大半を過ごした。「燃料をセーブしながら前方のドライバーを追いかけることができたし、アタックもできました」と琢磨。「レース中に何台もオーバーテイクできたので、とても面白かったですよ。僕たちは最初のスティントを短め、次のスティントを長めにする作戦を立てていました。普通とは違う戦略ですが、だからこそ順位を上げられる可能性とチャンスが生まれるのです。今日は前を走るドライバーを次々と捉えることができたので、とてもエキサイティングなだけでなく、強い手応えを感じていました」 少しずつ順位を上げていった琢磨は、最後のコーション・フラッグが振り下ろされたとき、トップ10圏内を走っていた。しかし、この後、状況は一転してしまう。「リスタートして以降、フロントグリップの著しい低下に襲われました。僕たちは何が原因か調べています。とにかくひどいアンダーステアでした。通常よりずっと手前からブレーキングしてもタイアがロックするような状態で、スローパンクチャーを起こした2001年のドニントン・レースにそっくりでした。マシーンはまともに直進できないくらい、不安定な状況に陥っていました。それでもなんとかコース上に留まろうとして努力しましたが、それさえもできませんでした」 「バックストレートの終わりで僕を追い越していったダニカ・パトリックとアレックス・ロイドが、次のコーナーに進入しようとしたときのことです。2台はなだれ込むようにしてコーナーに進入し、僕は接触を避けようとしたのですが、ダメージもしくはトラブルの状況は深刻で、マシーンの向きを変えることもままならず、不運にもダニカと絡んでしまいました。その後、タイアが完全にパンクしたのでピットに戻り、周回遅れでフィニッシュしました」 これでロードコースおよびストリートコースでのレースは終了し、インディカーシリーズの一団はオーバルコースでの戦いを再開することになる。その緒戦は、次の土曜日にシカゴから30マイルほど離れたシカゴランドで開催される。 「困難なスタートを乗り越えて以降、状況は好転し、ミドオハイオでそうしたのと同じように、上位グループへの返り咲きを目指して懸命に走り続けました。期待どおりの結果が得られなかったことは残念ですが、いまは思考を切り替え、完全にオーバルモードにスイッチしなければいけません。シーズン序盤、僕たちはオーバルレースで強い手応えを掴んでいたので、もてぎに向けていい流れを作っていきたいと思います」 written by Marcus Simmons |