COLUMN |
日本に一時帰国した佐藤琢磨が鈴鹿で見せたスピードには目を見張るものがあったが、新しい名称を得た国内トップフォーミュラカー・シリーズで琢磨が残した成績は残念なものだった。
昨年までフォーミュラ・ニッポンと呼ばれていたチャンピオンシップはスーパーフォーミュラとシリーズ名を改めたが、琢磨は昨年同様、IZODインディカー・シリーズの合間を縫って日本に戻り、母国ファンの前でチーム無限のスイフト・ホンダを操った。 次の週末にはAJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダを駆ってロングビーチのレースに出場しなければならないので、今回は1戦限りの参戦となったが、今季もインディカー・シリーズが終わった後、菅生と鈴鹿のスーパーフォーミュラ・シリーズに出場する予定となっている。 今回、チーム無限からフル参戦している山本尚貴とともに挑んだ鈴鹿といえば、F1時代の琢磨がジョーダンとBARでポイント獲得を果たしたサーキットとして記憶されている。「シーズン前、チーム無限は懸命に働いてくれました」と琢磨。「3月に行ったテストも成功裏に終わりました。気温が低いとき、マシーンは驚異的な速さを見せましたが、今回はそのときよりずっと温かいので、改めて良好なバランスを見つけ出さなければいけません」 「スーパーフォーミュラのマシーンは恐ろしいほどデリケートです。しかも、このマシーンが登場してもう何年も経っているので、多くのチームがその限界を引き出せるようになっており、勝負はいついかなるときも良好なバランスを作り上げられるかどうかにかかっています。鈴鹿の路面はとてもスムーズで、グリップレベルが高く、ブリヂストン・タイアはとてもセンシティブです。また、グリップレベルがピークにあるときは非常に速いけれど、オーバーステアやアンダーステアを出すと簡単にタイアは痛んでしまいます」 それでもチーム無限のふたりは予選で健闘し、Q2では山本と琢磨が1-2フィニッシュを達成する。しかし、Q3ではそれぞれ5位と6位となって予選を終えた。 「プラクティスでは引き続きいくつかのことを試していました。マシーンのバランスには必ずしも満足できませんでしたが、予選はプラクティスの時よりもずっと温かくなりました。これでグリップレベルが下がり、マシーンのバランスも更にシフトしましたが、僕らにとっては好都合な状態でした。僕と尚貴はとても高いレベルで上位争いを演じることができました。マシーンは好調で、ハードにプッシュできました」 「Q2の結果には勇気づけられましたが、コースインするたびに路面コンディションは変化しており、Q3では少しスピードが伸び悩んでしまいました。Q2でのタイムとほぼ同じスピードを記録できましたが、僕たちはバランスのシフトを追いきることができず、ライバルたちが先行するかたちになりました。僕は6番手となりましたが、もしも100分の4秒速ければ3番手まで浮上していました。つまり、そのくらいの僅差だったのです」 好スタートを切った琢磨は山本を攻略して5番手に浮上したものの、その後の展開は残念なものだった。「スタートは上手くいきました。尚貴も僕も素早く飛び出して、前を走るチーム・インパルのマシーンを追いかける形になりました。僕は尚貴とサイド・バイ・サイドになり、目の前にはJP・デ・オリヴェイラがいました。僕はいいスタートを切り、5番手へと駒を進めました」 「けれども、その直後にポジションを落としてしまいます。レース前には8分間だけのウォームアップがあり、その後のダミーグリッド上でもマシーンのアジャストを行いましたが、どうやら、タイアの空気圧管理で理想の領域を少し越えてしまったようです。おかげで、あまり乗りやすい状態とはいえませんでした」 「これに追い打ちをかけるようにして、僕は反則スタートの判定を受けてしまいます。鈴鹿のスターティンググリッド付近はやや下り勾配になっていて、スロットルやクラッチと一緒にブレーキも踏まなければいけません。どうやら、このときのブレーキ圧力がほんの少しだけ弱かったようで、マシーンはずるずるっと下がってしまいました。もちろん、これは僕のミスですが、裁定はスタートそのものではなく、ずるずると動き出したことによることでした。ペナルティを消化するためにピットインしましたが、これで僕のレースは終わったも同然となりました」 「その後はほとんど単独走行となりました。ペースは悪くありませんでしたが、期待外れだったことには変わりありません。しかも、レース終盤の7周ほどで排気系にトラブルが発生し、パワーダウンに苦しむこととなりました」 スーパーフォーミュラ・シリーズを戦い終えた琢磨は太平洋を飛び越え、カリフォルニアのロングビーチで開催されるインディカー・レースに出場する。「鈴鹿のレースは残念でしたが、チーム無限のパフォーマンスは確実に向上しています」と琢磨。「これは嬉しいことで、しかもスーパーフォーミュラ・シリーズの幕開けに立ち会って多くのファンに会うことができたので、週末は大いに楽しめました」 written by Marcus Simmons |