RACEQUALIFYINGPRACTICE
COLUMN
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Rd.7 [Sun,02 June]
Streets of Bell Isle

ジェットコースターのような週末
 モータースポーツの世界では、思うような成績が挙げられなかったり、レース中にリタイアしたりする理由は星の数ほどあるが、デトロイトのベルアイル・サーキットで佐藤琢磨の身に降りかかったのは、そうした理由のなかでもっとも古くからあるものである。
 純粋に、運が悪かったのだ。

 IZODインディカー・シリーズのランキング2位として週末を迎えた琢磨は、ダブルヘッダー・イベントの生みの親ともいうべきデトロイトで開催されたふたつのレースで、いずれもトップ10圏内を走行していた。
 ところが、最初のレースでは4番手を走行中にガス欠となり、2ラップ遅れの19位でフィニッシュした。
 そして2レース目では8番手を走行中に押し出され、バリアと激突する憂き目に遭ったのである。

 走り始めの段階では、No.14をつけたダラーラ・ホンダのペースにチームはあまり満足していなかったが、週末を通じてAJフォイト・レーシングは次第にコンペティティブになっていった。

「デトロイトは興味深いコースです」と琢磨。
「公園のなかにレイアウトされているので市街地サーキットとも違うし、パーマネントコースでもありません。
 おそらく路面のおよそ70%はコンクリートで、しかも冬の気候が厳しいためにコースはとてもバンピーでした。
 そこでたくさんパッチを張り替えたので、路面の約50%は新しくなっていましたが、バンプのひどさは以前と変わっていませんでした」

「コースレイストも見直されました。
 ターン2に続くミッキー・マウス・セクションが改められ、ハードブレーキングで進入するターン3まで真っ直ぐ進入するレイアウトとなりました。
 彼らはいい仕事をしたと思いますが、路面は相変わらずバンピーで、肉体的に辛いコースであることには変わりありません」

「予選前のプラクティスは1度だけしかありませんでした。
 残念ながら、このセッションでは何度か赤旗が提示されたため、時間内にセットアップするのは難しい状況でした。
 僕たちはあまり好調ではなく、グリップ不足に苦しんでいました」

 予選は雨が降ったおかげで、琢磨は易々と予選グループのトップとなり、計12名のドライバーが出走する予選の第2ラウンドに進出した。
 けれども、ここで琢磨の手が及ばない事態が起きて8番手となり、ファイアストン・ファスト6には駒を進められないこととなった。

「僕は2番手のマイク・コンウェイを1秒以上も引き離していました。
 これは良かったのですが、第2ラウンドではコースが驚くほど速く乾いていきました。
 僕は、最初にユーズドのブラックタイア(コンパウンドが硬めのプライマリー・タイア)で1度チェック走行を行いました。
 それからピットに入り、新品のレッドタイア(コンパウンドが柔らかめのオルタネート・タイア)に付け替えました」

「ところが、ウォームラップを走行中に1台のマシーンがターン3でスピンしました。
 そこで、この部分のみイエローが出ていましたが、次の周にはもうイエローは提示されていないだろうと考えていました。
 ところが、ターン3ではまだイエローが提示されていたのです。
 僕は、最後のアタックに備えて、前を走るウィル・パワーとの間隔を開けようとしてペースを落としていました。
 そして、再アタックを試みたそのラップがもう少しで終わるというときにレッドフラッグが提示されたため、僕はタイムを残せませんでした。
 ターン3でスピンが起きるまで、僕はトップ6に入っていたので、これはとても悔しいできごとでした。
 イエローが提示された状況は変わらなかったにも関わらず、突然、走行を続けるには危険だと判断され、赤旗が提示されたのです。
 この間にタイムを記録できたのは数名でしたが、あのままローカルイエローのままコース全体がグリーンに保たれていれば数分間は残されていたので、トップ6に返り咲くことができたと思います」

 土曜日の午前中には第2レースの予選が行われたが、琢磨にとってはさらに悪い結果となった。
 なんと、21番グリッドに終わったのだ。
「チームにとって昨年のデトロイトはあまりいいレースではありませんでした。
 このため、このコースでマシーンを速くするために必要となる情報がやや不足していました。
 予選に向けてはいくつかのアイデアを試しましたが、残念ながらそれらは期待と反対の効果をもたらしてしまいます。
 この予選結果は、なによりもインディカー・シリーズの厳しさを物語っています。
 なにしろ、12人の予選グループで11番手に終わってしまったのです!
 このときはものすごくドライブしにくくて、グリップも低く、バランスもよくありませんでした。
 まるでマシーンがバラバラのように感じられたのです!」

 それでも第1レースでは苦労が報われそうになる。
 スタートではパワーの先行を許したが、やがてEJ.ヴィソとトリスタン・ヴォーティエをパスして7番手となり、20周目の時点ではファステストラップまで記録したのである。
 その後、何人かがピットストップを行ったので琢磨は4番手となるが、間もなく琢磨は燃料を使い果たすこととなる。
 これでフルコーションとなったために琢磨は2ラップ遅れとなっただけで済んだが、いずれにせよ、もはや取り返しようのないハンディキャップであった。

「計算ミスのためでしたが、メカニックたちにはいい仕事をして速いクルマを用意してくれていたので、本当に残念でした。
 マシーンが止まったときは、電気系のトラブルだろうと思っていたので、シートベルトを外してコクピットの外に降りようとしましたが、マシーンの止まったのがレスキューするのに難しい場所だったため、フルコーションとなりました。
 このときラリー・フォイトから無線が入り、『どうやら燃料を使い果たしたようだ』と伝えられたので、すぐさまコックピットに戻り、一部の望みにかけてピットまで戻してくれとマーシャルに頼みました」

「2周遅れとなっていたので、現実的にはチャンスは残されていません。
 もちろん、どんなことが起きるかわかりませんが、プラクティスが限られていたので、レースの残り周回数をテストとして活用し、マシーンの変化を見極めることにしました。
 このときは、マシーンのバランスにはまだ満足できていませんでしたが、レース中の最速タイムは5番手か6番手という、とても勇気づけられるラップタイムを記録することができました」

 日曜日のウォームアップは、さらに期待の持てる展開となった。
 レッドタイアを使うドライバーもいたなか、琢磨は硬めのブラックタイアを履いて5番手タイムをたたき出したのである。
「他のイベントとはタイアの振る舞いが異なっていました。
 新品のレッドタイアは、最初の1周目は速いけれど、5周か7周ほど走ると急激に性能が低下して、最終的にはブラックタイアよりも2秒近く遅くなります。
 僕は21番手からスタートしなければいけないので、スタートでは新品のレッドタイア??レース中に1度は使用しなければならない??を使い、できるだけ早い段階で義務を消化しようと考えたのです」

 もっとも、テレビで観ているだけでは気づかなかったかもしれないが、スタートの段階から琢磨のレースは間違った方向に向かい始めていた。
 混乱したレースのなか、戦略を駆使した琢磨は20周目に8番手まで浮上していたが、続くリスタートではヴォーティエと接触し、ターン3でレースを終えることとなったのだ。

「ヴォーティエのドライビングはスタート前から危険極まりないものでした」と琢磨。
「スタート・フィニッシュ・ラインの直前には90度コーナーがふたつ続くターン12とターン13があり、続くターン14は少しキンクしていて緩やかなカーブを描いています。
 2列に並んでスタートを切るインディカー・シリーズでは、ターン11を過ぎたところで整列するのが理想的です。
 僕はトリスタンのイン側にいましたが、彼が気づいていたかどうかはわかりません。
 なにしろ、ターン12ではコースの真ん中まで出てきたので、僕は激しく縁石に乗り上げる形となってしまいました。
 この縁石はあまりに高いので通常は使いません。
 おかげで、もう少しでスタート前にウォールにヒットしそうになるくらい、ものすごく危険な状態でした」

「これで彼は半車身ほど僕より前を走ることになり、彼の右リアタイア近くを僕は走っていましたが、『ひょっとすると、この男はまた僕に飛びかかってくるかもしれない』と思えました。
 最後のキンクは、簡単に全開でクリアできるセクションですが、彼が急に右へ向かってきたため、僕はスタート前にブレーキを使わなければいけなくなりました。
 そうしなかったら、きっと宙を舞っていたことでしょう」

「レースはひどい展開でした。
 数周ごとにイエローが出て、まともではありませんでした。
 それでも、僕は8番手まで浮上しました。
 あるとき、僕はトリスタンをオーバーテイクしましたが、すぐさま強引に抜き返されました。
 彼はそこら中で暴れ回って、いろいろなドライバーと接触していました」

「そして僕にとって最後のリスタートは……。
 ターン3ではいろいろなドライバーがサイド・バイ・サイドで進入していくのを何度も見ました。
 僕自身、最初のレースではパワーとやりました。
 ブレーキングで、僕はトリスタンとフェアに戦い、コーナーに進入していきましたが、突然、彼は縁石に大きく乗り上げ、この影響でテールを振り出し、これが僕のマシーンにぶつかり、僕ははじき出されるようにタイアウォールと接触してしまいました。
 これはものすごく残念であると同時に、ものすごく腹立たしい状況でもありました」

 不幸中の幸いといえるのは、次のレースまであと数日しかないことだろう。
 インディカー・シリーズの一団は南に向かい、ハイスピード、ハイバンクで知られるテキサス・モーター・スピードウェイでの一戦に臨む。
「レースではとてもコンペティティブに戦えるマシーンを用意してくれたチームに深く感謝しています。
 面白い結果を得られたかもしれないレースがこんな結末に終わってしまい、とても申し訳なく思っています」

「でも、まだたくさんのレースが控えています。
 僕たちはテキサスのスーパースピードウェイに戻ってハイスピードバトルを行った後、ショートオーバルでの2連戦に挑みます。
 僕たちのマシーンはオーバルでの好調なので、この先のレースを楽しみにしています」

written by Marcus Simmons
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