RACEQUALIFYINGPRACTICE
COLUMN
COLUMN
Rd.7 [Sat,09 June]
Texas Motor Speedway

水泡に帰した追い上げ
 テキサス・モーター・スピードウェイで行なわれたIZODインディカー・シリーズのレースで佐藤琢磨はまたしても力強い走りを示したが、20番グリッドから6番手まで追い上げたところでクラッシュを喫するという残念な結末に終わった。

 琢磨は次々とポジションを上げ、トップグループの直後にまで迫ったが、228周のレースの64周目に思わぬアクシデントに見舞われたのだ。

 インディ500で多くの人々に衝撃を与えたパフォーマンスを、琢磨はこの1.5マイルのハイバンク・オーバルでも再現するつもりでいた。しかし、密集したレース展開を回避するために導入された“ローダウンフォース・セットアップ”をダラーラ・ホンダに適合させるため、琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは新たなセットアップ作業に取り組まなければならなかった。

 「エアロダイナミクス・セッティングの面では、なかなか興味深い週末でした」と琢磨。「チームやドライバー間で合意したローダウンフォース・パッケージを取り入れなければいけなかったからです。最初のプラクティスでは非常に難しく感じられました。いつものセットアップで走ればテキサスを走るのは(単独では)それほど難易度の高いことではありませんが、今回だけはまったく状況が異なっていたのです!」

 「たくさんの作業を行わなければいけませんでしたし、特にチームは大変だったと思います。今季、僕たちがインディ以外のオーバルを走るのはこれが初めてで、残念ながらトップグループから大きく引き離されていたので、走り始めてからわずか2周でまたピットに戻らなければなりませんでした。ただし、その後はコースインするたびに失地を挽回することができました。走れば走るほど状況はよくなっていったのです」

 チームが改良を加えた結果、琢磨は予選で10番手という好成績を収めることとなる。「僕たちはまったくテストできていなかったので、10番手という成績には満足すべきなのでしょう。それはよかったのですが、コクピットのなかでドライバーがしなければいけない仕事は大変なものでした。なにしろ、およそ215mph(約344?/h)をローダウンフォース・パッケージで走るんですから!」

 予選後のプラクティスで琢磨は4番手に食い込んだが、エンジンに問題が発生したために10グリッド・ダウンとなり、20番グリッドからのスタートを強いられることになる。「マシーンのバランスはとても良好でした。さらに改善したい部分は残っていましたが、これまでに長足の進歩を果たしていたのも事実です。本当はもう少しメカニカルグリップを向上させたかったのですが、できることはすべてやっており、これについてはいくぶん自信もありました」

 「不運なことに、この最後のプラクティスでエンジン・トラブルが発生したため、エンジン交換を余儀なくされました。この場合、グリッドポジションは規則によって10番手分、降格されます。つまり、20番グリッドのスタートとなるわけですが、テキサスは他のサーキットに比べてオーバーテイクが難しくないので、これについてはあまり心配していませんでした」

 レースが始まると、No.15をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのマシーンは徐々に順位を上げていった。「スタートは上手くいきました。いくつか順位を上げたところで、レースの流れは一旦、落ち着きました。そこから1台ずつ抜いていき、13番手となります。とにかく、ローダウンフォースだったのでとてもチャレンジングな戦いでした。なにしろ、すべてのコーナーでスロットルを戻さなければいけなかったのです。でも、それと同時にとても面白かったですよ!」

 「僕たちはマシーンのバランスに問題を抱えていました。もっとも、これは誰にとっても似たような状況で、それを考えればレースの展開はよかったといえます」

 最初のコーションでドライバーたちが続々とピットストップを行うと、琢磨はさらに順位を上げた。「僕たちはフロントウィングを少し調整しましたが、メカニックたちがピットストップで素晴らしい働きを示してくれたおかげで、コースに復帰したときには10番手に浮上していました。リスタートでのダッシュも完璧に決まり、一気に3台を追い越すことができました! 引き続きマシーンは好調で、僕は6番手まで浮上し、ライアン・ブリスコーの直後につけていました」

 「トップグループのペースはかなり速く、僕はただ彼らを追いかけているだけでしたが、やがてマシーンがスライドを起こすようになります。ピットストップを行うと、マシーンは一層ナイフエッジなフィーリングを感じさせるようになり、スナップ・オーバーステアが顔を出すようになりました。2スティント目でニュータイアを装着し、20ラップほどを走行した頃、突然、ターン2の出口でリアのグリップが失われ、マシーンは360度スピン、バックストレートのアウト側のウォールにヒットしてしまいました。とても力強いレース運びをしていたので、これは残念な幕切れでした。ほかのコーナーではアンダーステアが顔を出していたのに、ターン2だけは状況が違っていて、とても走りにくい状況だったのです」

 いずれにせよ、琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは、今回のレースで見せた素晴らしいペースをポジティブに受け止めたうえで、次戦を迎えることができる。もっとも、その舞台となるのは、あの有名なミルウォーキー・マイル。テキサスとはコースの特性が大きく異なることはいうまでもない。

 「今回は、いつものテキサスとはまったく違ったレースとなりました。時には2ワイドになることもありましたが、3ワイドはあり得ない状況でした。接近戦が繰り広げられていた昨年までは、3ワイドが当たり前のように見られたのですが……。もっとも、僕たちはいい経験を積むことができましたし、状況の改善に役立つ多くのことを学びました」

 「ミルウォーキーのレースが本当に楽しみです。実際にはオーバルコースですが、ここを走っているとロードコースのような感覚が味わえます。しかも、とてもエキサイティングなコースなので、僕たちにとって素晴らしいレースとなることを期待しています」

written by Marcus Simmons
▲TOPへ

TOPページへ戻る
takumasato.com
(C)T.S.Enterprise Japan LTD.
All rights reserved.


Powered by:
Evolable Asia Corp.