RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.14 [Sun,04 September]
Streets of Baltimore

インディ・ジャパンへの期待をかき立てる抜群のスピード
 メリーランド市のバルティモア市街地コースで初開催されたレースは、あと3周走れば6位完走を果たせた佐藤琢磨にとって非常に残念な結果に終わった。

 KVレーシング・テクノロジー-ロータスのダラーラ・ホンダを駆る琢磨は、26番グリッドからスタートしながらレース途中には2番手争いを演じた。しかも、その過程で多重クラッシュに巻き込まれたにもかかわらず、トップクラスのスピードを披露しながらこのポジションまで追い上げたのである。けれども、その後に琢磨を待ち構えていたのは悪夢のような災難だった。

 実際のところ、この週末は苦難の連続だった。最初に起きたのは、コースを仕上げる作業のためプラクティスがディレイになったこと。もっとも、これは琢磨とKVレーシング・テクノロジー-ロータスだけでなく、他のドライバーやチームにとっても条件は同じだった。「コースは印象的なレイアウトでしたが、僕たちが到着した時点ではまだ一部が工事中で、このためスケジュールが延期となりました」と琢磨。「けれども、最初のプラクティスで僕たちはまずまずの手応えを掴みました」

 「コースは、性格が対照的なふたつの部分によって構成されていました。コースの半分は舗装し直されたばかりのために比較的スムーズでグリップレベルが高く、ハイスピードコーナーが含まれる複合セクション。一方、残る部分はコンクリートで舗装されており、バンピーかつ滑りやすく、低速コーナーでした。つまり、ふたつの性格がおり混ざっていたわけですが、このためドライビングはチャレンジングでしたがとても楽しく感じられました。マシーンも好調で、2回目のプラクティスでは有用な情報が手に入ったものの、内容としてはいまひとつでした」

 ふたつめのハードルは予選だった。琢磨はグループ内で3番目のタイムを記録。これは上位12名が出走できる予選の第2セッションに余裕で進出できる成績だったが、その後、フルコーションを引き起こしたため、ふたつのファステストラップが抹消されることになる。「今回、マシーンはレッドタイアを履いた状態で好調でした。最初の何周かは遅いクルマに引っかかりましたが、すぐに3番手のタイムをマークします。その次の周はさらに速いペースで周回していたところ、ダウンシフトで問題が起き、駆動力を失ってしまいました。このためヘアピンでハーフスピンに陥ってエンジンがストール。非常に残念な出来事でした」

 琢磨はマシーンに乗ってピットまで戻ったものの、残された時間では1周のフライングラップしかできない。このとき、琢磨はまたしても第2セッションに進出するのに充分なタイムをマークしたが、ふたつのファステストラップが削除されるので、有効な予選結果を残すにはもう1度アタックする必要があり、結果的に時間切れとなってしまう。「実質的に僕の予選は終わっていましたが、できることはすべてやりきるつもりでいました。いずれにせよ、ペナルティの影響は非常に厳しかったと思います」

 これで琢磨は予選28位となったが、ウォームアップでチームメイトのトニー・カナーンが関係する重大な事故が発生。この影響でカナーンとエリオ・カストロネヴェスはスペアカーでの出走を余儀なくされ、琢磨は26番グリッドからレースに挑むこととなった。「誰もケガをしないで済んだのは奇跡としかいいようがありません。ウォームアップで僕は3セットのタイアを皮むきしましたが、何度もフルコーションとなった為に計測周を行うことはできませんでした。不思議なセッションでしたが、僕自身はこのウォームアップでレースセットアップの感触を掴みたいと思っていました」

 決勝が始まると、セットアップは良好であることが確認された。「スタートすると、このコースでのオーバーテイクがいかに難しいかが理解できました。けれども、僕はブラックタイアを履いて徐々に順位を上げていったので、この展開にはとても満足していました」

 誰にとっても予想外だったのは、レース序盤に一度もフルコーションとならなかったことだろう。後方集団のドライバーのなかには、ペースの上がるレッドタイアを求めて早めのピット作業を行なう者もいたが、琢磨は22周目までコースに留まってからピットストップ、これが一巡したときには15番手となっていた。

 やがてトーマス・シェクターがスピン、ついに最初のフルコーションが訪れた。続くリスタートでは、4番手争いを演じていたライアン・ブリスコーがライアン・ハンター-レイに絡み、スピンを喫する。これを引き金として半分近いドライバーが実質的な停止状態に追い込まれ、琢磨もフロントウィングにダメージを負ってしまう。このとき琢磨はオリオール・セルヴィアの2台後方を走っていたが、セルヴィアは結果的にこのレースで2位入賞を果たす。つまり、琢磨にも上位入賞の可能性は充分にあったのだが、レギュレーション解釈の相違により、琢磨はそのチャンスを手に入れることができなかった。

 「ほとんどのクルマがほぼ停止していて、多重クラッシュが発生しました。一部のドライバーはそのままピットに入ってマシーンのリペアを行ないましたが、僕はコース上に留まりました。なぜなら、ピットレーンがクローズされていれば何も作業はできないと思ったからです。リスタート前にオフィシャルはマシーンの並び順を改め、僕は9番手となりましたが、フロントウィングはダメージを負ったまま。この状態で考えられる作戦はふたつしかありません」

 「僕たちは給油する決断を下しましたが、ノーズも交換しなければならないので、ピット作業は他の誰よりも長引いてしまいました。このため、リードラップとしては最下位の18番手でリスタートを迎えました」

 この後、琢磨は猛チャージを開始する。リスタート後にはマーティン・プロウマン、ヴィトール・メイラ、セバスチャン・サーヴェドラをパス。さらに、アクシデントに関わらなかったためにコース上がグリーンのままピットインしたドライバーを追い越すと、ブリスコーにはペナルティが科せられた。続いてダニカ・パトリックとアレックス・タリアーニをオーバーテイクして6位に浮上し、セルヴィアを先頭にしてカナーン、ダリオ・フランキッティ、スコット・ディクソンらが繰り広げる2番手争いに加わった。

 「リスタート後は本当にハードにレースを戦い、何度も何度もアタックして多くのドライバーをオーバーテイクしました。いっぽうで燃料もセーブしなければいけなかったものの、戦略は成功していました。やがて集団に追いつきましたが、ここでターン12の内側のウォールと軽く接触し、ステアリング系のトラックロッドを痛めてしまいます。そしてこれが2周後には完全に壊れてしまいます。片輪だけの操舵になってしまった僕は最終的にはヘアピンで立ち往生することになりました」

 結果的に18位となった琢磨は、この一戦を次のように振り返った。「ポジティブな部分もありましたが、とても残念な結果に終わったという意味では複雑な心境です。ただし、レース中のペースは速かったので、この勢いをもてぎにつなぎたいと思います」

 2週間後に琢磨の母国・日本で開催されるインディ・ジャパンは、今年初めてロードコースが用いられることになる。琢磨は日本人だが、実はこのコースで実戦を経験したことがまだないという。「コースレイアウトはよく知っていますが、レースを戦ったことはありません。それでも僕のホームレースなので、とても興奮していますし、楽しみにもしています。日本の皆さんの前で力強いレースを披露したいと願っています」

written by Marcus Simons
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