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Rd.10 [Sun,24 July]
Edmonton City Centre Airport

消え去った“ポール・トゥ・ウィンのチャンス”
 IZODインディカー・シリーズのロードコースおよび市街地サーキットにおいて、ウィル・パワーは53週間連続でポールポジションを獲得し、その圧倒的な強さを世に知らしめてきた。今回、カナダのエドモントン空港サーキットにおいて、佐藤琢磨はKVレーシング・テクノロジーの懸命な努力にも支えられ、オーストラリア人による連続ポールポジション獲得記録の更新を阻止することに成功した。

 この琢磨の偉業により、2010年7月に開催されたトロント以来、パワーは初めてIZODインディカー・シリーズのロードコースおよび市街地サーキットの予選で敗れる結果となった。「素晴らしい瞬間でした」と琢磨。「ペンスキーやガナッシのドライバーを倒すのは最高の気分です。KVレーシング・テクノロジーのことを誇りに思いました」

 ここに至るまでの道のりは興味深いものだった。インディカー・シリーズのルーキーだった昨年、琢磨はここエドモントンでベストリザルトを残していたが、2011年に向けてはレイアウトが一新され、サーキットは完全にデザインし直されていた。しかも、走行初日のセッションは雨天の為キャンセルされてしまう。

 「おかげで、予選前の走行は45分間のセッションが2本だけとなりました。でも、条件は誰にとっても同じです。コースは一部が従来と同じで、それ以外はまったく新しくなり、サーキットの特性は一変しました。昨年、エドモントンは中速から高速のコーナーが連続していましたが、今年は長いストレートと、ヘビーブレーキングを使って進入するタイトコーナーの組み合わせとなり、高速コーナーは完全に姿を消していました。それでも、引き続きチャレンジングでいいサーキットだと思いました」

 「新しいサーキットになったため、これまでの経験は通用しません。大きなチームは正確なシミュレーションによりあらかじめ準備しておくこともできるでしょうが、データを持っているチームはなく、どのチームも白紙の状態からスタートしなければいけませんでした」

 それでも琢磨はすぐにこのサーキットを楽しんでいる自分に気づき、2回目のセッションではファステストラップを記録していた。「最初のプラクティスでは車高をあわせ、ベーシック・セットアップを煮詰めていくことに費やしました。僕はポジティブな感触を掴んでいました。2回目のセッションでは、最終的にすべてがうまくまとまりました。このコースで1周をうまくまとめあげるのは簡単ではありません。コースの新しい部分は路面も安定していてグリップレベルは良好です。けれども、古い部分はとても滑りやすくてバンピーです。とにかく集中することが必要となります」

 予選結果はさらに注目すべきものとなった。最初の予選セグメントで琢磨はトップ、2回目は4番手となり、ファイアストン・ファスト6・シュートアウトではポールポジション獲得を決めたのである。琢磨がインディカー・シリーズでポールを手に入れたのはこれが2度目、オーバルコース以外では初めてのことである。

 「最初のセッションは最高の気分でした。柔らかめのソフト・タイアを履いたときのバランスは良好でした。2回目のセッションでは、どうやらマシーンに多くを期待しすぎてしまったらしく、セッティングを攻め込み過ぎてバランスとグリップの点で困難な状況に追い込まれました。Q3までにニュータイアはすべて使い果たしていたので、あとは、それをどう使いこなすかにかかっていました。僕たちは基本的にQ1のときと同じセットアップに戻し、少し微調整を施して、あとはこれで全力を投じました。古いタイアを履いたにもかかわらず、新品タイアを使っていたQ2とほとんど同じタイムで走れたので、とても嬉しく思いました」

 この素晴らしい流れを、琢磨は決勝にも持ち込むことに成功する。スタートでトップを守り、序盤のリスタートも持ちこたえ、18周にわたってレースをリードした。「ポールポジションは最高の気分です。最初のスタートも本当にスムーズでした。リスタートではマシーンが密集していて、よりハードに戦いましたが、首位に立つことに成功し、だんだんリズムを掴んでいきました」

 いつも優勝争いを演じているパワー、スコット・ディクソン、ダリオ・フランキッティはひと塊になって走行していたが、グリーンに塗られたNo.5のマシーンは彼らをリードしていた。その後、19周目の終わりにパワーは最終コーナーで琢磨に襲いかかり、トップに立つと、続くいくつかのコーナーで、ディクソンとフランキッティは勢いを失った琢磨を追い越していった。

 「15周目を過ぎたあたりからバランスが崩れ始めました。特にフロントのグリップが大きく低下していました。それによって挙動を乱したことからウィルにポジションを奪われ、さらに立て続けに順位を落としてしまいました。そこから首位には引き離されてしまいましたが、彼らに追いついていく為に全力でドライビングを続けました」

 次にフルコーションとなったとき、上位集団は全員がピットに飛び込んだ。ここで琢磨はライアン・ブリスコーにひとつ順位を奪われ、ステイアウトを選択したマイク・コンウェイとアレックス・タリアーニの先行を許すこととなった。リスタートでの琢磨の順位は7番手。けれども数コーナーを走ったところで、琢磨はなんと2番手へと浮上したのである。

 「本当にエキサイティングでした! 最初のリスタートは隊列が崩れた為にやり直しになりましたが、2回目はうまくいきました。おそらく5台くらいが横並びになったはずです!僕はターン1の飛び込みで既に3番手に上がり、次のヘアピンでタグリアーニをパス。リスタートに成功した僕はウィルの直後にあたる2番手になり、第1スティントで失ったものを取り戻しました。すべて順調にことは運んでいるように思えました」

 このとき、ライアン・ハンター-レイは侮り難いペースで走行していた。そしてタグリアーニをパスして3位に浮上すると、2位を狙って琢磨に近づき、そして仕掛けたのである。「ターン5に進入するヘビーブレーキングの最後のほうで、彼に接触され、僕はスピン。エンジンが止まって周回後れになりました。このときは残念ながらフルコーションになりませんでしたが、そうでなければラップダウンにならずに済んだかもしれません。僕にできることといえば、ピットに戻り、それまでの流れを諦め、トップと同一周回に復帰できるよう頑張るしかありませんでした」

 アクシデントの原因を作ったハンター-レイにはドライブスルーのペナルティが科せられたが、琢磨は21位という落胆すべき結果に終わった。「ものすごくフラストレーションのたまるレースでした。その後は本当に長くてタフな戦いになりました。僕はできるだけモチベーションを高めようとして努力しましたが、それまでと同じ気持ちを保つのは不可能でした。非常に残念でした」

 それでも、次戦に向けてのモチベーションは高い。インディカー・サーカスの一団は再び国境を越えて南に移動し、ミドオハイオの一戦に臨むことになるのだ。昨年、琢磨はここでシーズンベストの予選3位を記録している。「数日後、このサーキットでテストを1日行なうことになっています。できれば、このテストでさらにスピードを高め、再びトップグループにチャレンジしたいと思っています。とにかく最高の成績を収めることしか考えていません」

written by Marcus Simons
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