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Rd.8 [Sat,25 June]
Iowa Speedway

ついにポールポジションを獲得!
 IZODインディカー・シリーズにデビューした昨年、佐藤琢磨がもっとも力強いパフォーマンスを示したのはショートオーバルのアイオワ・スピードウェイだったが、今年はここでポールポジションを手に入れることとなった。

 全長0.9マイル、バンク角のきついこのオーバルコースで、KVレーシングテクノロジー-ロータスのダラーラ・ホンダで予選に挑んだ琢磨は36秒を切るタイムで2ラップを走行し、2001年マカオGP以来となるポールポジションを獲得。決勝でもトップ争いを繰り広げながら周回数の大半を消化したが、250ラップのレースが残り68ラップとなったところで残念なことにウォールにヒットしてしまった。

 「昨年のことがあったのでアイオワに戻ってくるのはとても楽しみでしたし、実際のところ、本当にエキサイティングな週末を過ごすことができました」と琢磨。「今年はナイトレースとなるので少し様子は異なりますが、再び強力なパッケージで戦えると期待していました」

 「プラクティスは順調で、何をしなければならないかもわかっていました。でも、僕たちは3台で協力してベストのパッケージを探すいつものやり方で臨みました。バランスはまずまず満足のいくもので、予選シミュレーションを行なう際にはニュータイアを2セット投入してスピードを追求しました。最初のセットではその時点でのセッション最速タイムをマーク、でもすぐにスコット・ディクソンに記録を塗り替えられてしまいます。2度目のアタックで再び僕はトップに立ちましたが、今度はダリオ・フランキッティが僕のタイムを上回りました。つまり、予選はガナッシと僕たちの戦いになりそうな気配でしたが、もちろん、アンドレッティやペンスキーの存在も忘れるわけにはいきませんでした」

 しかし、そのうちの誰ひとりとして琢磨を破れる者はいなかった。「自分たちがコンペティティブであることはわかっていましたが、まさかトップを獲れるとまでは思っていませんでした! ポールポジションは本当に嬉しかった。アイオワは1周17秒で走り切ってしまうショートオーバルですが、2周のアタックに先立って走れるのはたったの1周半しかありません。それまでにスピードを乗せなければならないので、のんびり構えている余裕はなく、コントロールラインを通過するまで1秒たりとも無駄にはできません。ウォームアップの最後の1周は懸命になって走り、僕はこのラップを誰よりも速いペースでクリアしました。これがポール獲得に大きく役立ったと思います。チームが素晴らしいマシーンを用意してくれたことには本当に感謝しています。文句なしにエキサイティングな瞬間でした」

 ところが、残念なことに予選後のプラクティスでアレックス・タグリアーニと接触してしまう。「このセッションはあまり順調ではありませんでした。ダウンフォースの設定を少し見誤っていたようで、集団の中を走っているときはダウンフォースが不足気味でした。ピットストップでは些細なメカニカル・トラブルがあり、これを直してからはバランスにも納得がいくようになりました。マイク・コンウェイと僕はアレックスに近づいていきました。出口側で曲率が厳しくなるターン2はとてもトリッキーで、コースの形状からアペックスを奥側にとるため、バンプや風の影響によっては非常に難しいコーナーとなります。アレックスは中央のレーン、僕はハイレーンにいたので、アウト側からアプローチすることになりました。ターンに入っていくとふたりともやや低い位置を走ることになるので、彼はいちばん下で、僕はミドルレーンを走行していました。彼との間にはスペースがあると思っていましたが、彼が少しラインを膨らんだのか、ふたりの間隔が不充分だったのか、いろいろな要素が絡み合った末、彼の右フロントと僕の左リアが接触することになりました。もっとも、これは修復することができました」

 決勝日は午後3時からインスタレーションラップを実施。すべて順調で、琢磨はレースに挑んだ。スタートは文句なし、7ラップをリードしたところでフランキッティにパスされる。「ポールポジションに立つのは特別な気分でした。前に誰もいないので、クリーンなエアフローが手に入るうえ、スタートでは後続の集団を思いどおりにコントロールできる。間違いなくいちばん有利な立場です。最初の数ラップはとても満足のいくものでしたが、この種のコースで独走するのは不可能です。しかも、バランスは完璧ではなく、軽いアンダーステア症状が出始めていたので、右フロント・タイアをかばいながら走行しました。ダリオはとても速かったので、僕はブロックすることなくスリーワイドとなり、その後で彼が首位に立ちました。でも、僕はトップグループにいられたので全く問題はありませんでした」

 コーション中に行なわれた最初のピットストップで、琢磨はチームメイトのトニー・カナーンとライアン・ブリスコーに抜かれて4番手となったが、リスタートでブリスコーをアウトから仕留め、3番手に浮上する。すると、今度はブリスコーのチームメイトであるエリオ・カストロネヴェスが追い上げてきて、激しいサイド・バイ・サイドのバトルの末に琢磨を抜き去った。「ハイレベルでクォリティの高い攻防ができて、最高にエキサイティングでした」

 またもやイエロー中に行なうこととなった次のピットストップで、この日のレースを制することになるマルコ・アンドレッティにパスされ、琢磨は5番手となるが、カストロネヴェスがピットに入ったため4番手に再浮上。次のピットストップもやはりイエロー中のことだったが、琢磨は接近戦の末にアンドレッティをパスして3番手となる。続くリスタートではカナーンのインサイドに飛び込み、2番手へと駒を進めた。ここからトップのフランキッティを追ったが、再びペースを上げてきたアンドレッティに抜かれ、琢磨は3番手となる。

「以前に比べると、かなり自信をもってリスタートに臨めるようになりました。今回もとてもエキサイティングでした。非常にコンペティティブなバトルでしたが、僕たちのパッケージは強力だったので、ずっと首位を走り続ける必要はありませんでした。先頭集団にまじっていても不安を覚えることはなく、非常に順調に周回を重ねることができました」

 その後、レースはグリーンのまま進行。新しいタイアと燃料を求めてピットストップを行なった琢磨は順位を落とすことになる。このときピット作業を行なったドライバーにとっては、新品タイアに履き替えた直後のラップをどれだけ速いペースで走行できるかが重要になる。フランキッティやアンドレッティなどの先頭集団がピットストップを行なうと琢磨の順位もそれにつれて浮上したが、不運にもターン2でコントロールを失ってしまった。

 「あのとき起こったことにはとても落胆しています。とにかくプッシュしなければいけない状況でしたが、冷えきったタイアを装着したばかりだったので、その点では注意が必要な状況でもありました。しかも、夜になってからぐっと気温は下がり、ジャケットが欲しくなるくらい辺りは冷え込んでいました。おそらく、これくらい気温の低いコンディションでオーバルを走るのは、僕にとって初めての経験だったのだと思います。アウトラップではマシーンの挙動が安定せず、いくぶんスライドもしましたが、特に問題はありませんでした。計測ラップの1周目も順調で、僕はフロントのロールバーをいちばん硬くするいっぽう、リアをいちばん柔らかくしてスタビリティを確保しました。けれども、計測ラップの2周目でバンプに乗り上げたとき、リアのコントロールを突然失ってしまいます。この日、起きたアクシデントはすべてこのバンプをきっかけにしたものでしたが、僕もそこでマシーンを滑らせてしまい、コントロール不能に陥ったのです」

 「計測ラップ2周目のことだったので、あんなことが起きるとはまったく予想していませんでしたが、僕はオーバルレーシングの難しさを再認識しました。300km/hオーバーの世界では、ちょっとしたことですべてを失ってしまうのです。いつも100%の確信をもって、何ひとつ問題がない状態にしておかなければならないのです。僕もそうしているつもりでしたが、どうやら不充分なところが残っていて、もっと深く理解しなければならなかったのでしょう。本当にオーバルは難しいと思いました」

 アイオワでの一戦を終えたインディカー・シリーズは、続いて琢磨が得意とするロードコースおよび市街地コースに戦いの舞台を移す。その緒戦はカナダのトロントだ。「しばらくもうオーバルは充分です!(苦笑) 去年、トロントでは苦戦を強いられましたが、今年の僕たちはとてもコンペティティブなので、いまは次のレースを楽しみに待っています。今度も上位を狙っていきます!」

written by Marcus Simmons
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