RACEQUALIFYINGPRACTICE
COLUMN
COLUMN
Rd.11 [Sun,13 September]
MID-OHIO RACE 2

ホームコースで味わう落胆 第10、11戦 ミドオハイオ
 チーム創設者のボビー・レイホールにとってホームコースにあたるミドオハイオは、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングにとってとりわけ重要なサーキットである。したがって、この荘厳なサーキットで行なわれる2020年のレースが、コロナ・パンデミックのまっただなかであるために中止と判断された際には深い失望が伴うこととなった。それだけに、9月半ばにダブルヘッダーが開催できるとわかったときには大きな歓びに包まれた。ところが、インディアナポリス500で優勝し、セントルイスでポールポジションを獲得したばかりの琢磨にとって、このレースはひとつの試練となったのである。琢磨は2レース目で16ラップにわたって首位を走行したものの、RLLRチームのNo.30ダラーラ・ホンダはペースが伸び悩み、不本意な17位ならびに18位という結果に終わったのである。「タフなレースでした」と琢磨。「あまり思い出したくない週末となりました。なにもかもうまくいかず、しかも純粋なスピードの点でも不十分でした」

 週末のスケジュールは予選前に75分間で行なわれる土曜日のフリープラクティスで幕を開けた。「75分間は通常よりも長い設定ですが、それでも1回だけのセッションではできることが限られてしまいます」 琢磨が続ける。「データを分析したりマシーンをガレージに戻す時間もありません。サーキットに持ち込んだときのマシーンの状態が、その週末のパフォーマンスをほぼ決めてしまうのです。僕たちは開発を行なってマシーンの状態を改善し、それにはポジティブなところもネガティブなところもありましたが、全体的に見れば平均の範囲内でした。マシーンについて特別満足していたわけではありません。まあ、悪くはないといったところでしたが、予選までに調子がよくなることを期待していました」

 それを琢磨はほとんど成し遂げようとしていた。ところがピット作業中の問題により柔らかめのソフト・タイヤで十分な周回数を走行できなかったため、彼らの努力は水泡に帰すこととなる。「予選結果は僕たちの実力を正しく反映していません」と琢磨。「ミドオハイオでは信じられないほどコースの状態がよくなっていきます。セッションの最初と終わりでは、まったく異なるカテゴリーかと思うくらいの差になるのです! ファイアストンは安定したパフォーマンスを重視し、硬めのブラック・タイヤをここに持ち込みました。なぜなら、エアロスクリーンによって重量が増加し、メカニカルグリップとダウンフォースが減少した結果、マシーンのスライドがより増えたからです。このため、ブラック・タイヤでベストラップを記録するのは4ラップ目のことでした。つまり、ずいぶんと時間が必要だったのです」

「ほとんどのドライバーはプライマリーのブラック・タイヤで4周し、オルタナティブのレッドで3周しました。レッド・タイヤでは3周目にベストラップが記録できることを誰もが承知していました。ただし、僕たちと同じ予選グループでは、ウィル・パワーがブラックで5周し、レッドで3周していました。そこで僕たちもこれにならうことにしたところ、途中まではとても好調で、マシーンの状態はプラクティスのときよりもずっとよく、僕たちは2番手につけていました。けれども、その後、僕たちはピットでちょっとしたトラブルに見舞われてしまいます。給油とタイヤ交換に要する時間が予定よりも長引いてしまったのです。おかげで3周目を走行するには15秒ほど不足してしまい、2周しかできなかったうえに、タイヤは温まりきらず、小刻みに振動しているのがはっきりと感じ取れる状態でした。この結果にはひどくガッカリしました」

 ミドオハイオはレース中にあまりコーションが出ないことで有名で、しかもコースは狭く、追い抜きが難しい。そして第1レースはまさにミドオハイオでの典型的なレース展開となった。しかも、通常は90周で行なわれる決勝レースが、今回は75周ほどのダブルヘッダーに変更されたため、誰にとっても2ストップ作戦が可能な状況である。この結果、レースは一列縦隊となって進行していった。第1スティントで順位を落とした琢磨は19番手でピットストップを実施。そしてピットストップ・サイクルの影響で17番手に浮上すると、レース後半はそのままの順位で周回を重ね、17位でチェッカードフラッグを受けたのである。

「僕たちはアグレッシブなレース戦略で挑みましたが、できることはあまり多くありませんでした。ずーっとトラフィックに捕まっている状態だったので、必要なときに速いラップタイムを刻むこともできません。しかもスタートで順位を落としており、結果的にはそれを取り戻すことしかできませんでした」

 この日は夜半に豪雨となったため、日曜日の朝に行われた第2レースのための予選セッションはコースが濡れた状態で迎えた。このようなコンディションは琢磨がもっとも得意とするところだが、今回はトップから12秒も遅れるタイムで23台中22番手のグリッドを得た。

「普段であれば、僕の好きなコンディションです。ところが、今回はどうにもできませんでした。期待するようなグリップがまったく得られなかったのです。まるで氷の上を走っているような状況で、タイヤを作動温度領域に入れることができませんでした。おかげで多くのドライバーにオーバーテイクされました。クルマに壊れている部分はなく、ただ満足に作動してくれなかっただけです。それに、このときはある種の恐怖も伴いました。合計で5ラップはしなければいけなかったのに、途中で赤旗が出て中断を余儀なくされました。まったく悪夢のような予選です。タイヤの空気圧を疑ってもみましたが、ただただショックでした」

 第2レースではイエローが何度か提示された。このうち、1回目はサンティノ・フェルッチがターン4でコースアウトしたことをきっかけとするもので、フェルッチはターン5でコースに復帰したものの、フェリックス・ローゼンクヴィストとアレックス・パロウはバリアと接触。もっとも、このイエローはタイミングが早すぎて戦略上の違いを生み出すことはなかった。16周目に提示された2回目は、ターン1でスピンしたダルトン・ケレットのマシーンを回収するためのもの。最初のリスタート直後にコナー・デイリーをパスして17番手になっていた琢磨とマルコ・アンドレッティを除く全ドライバーがピットストップした結果、ふたりが首位と2番手につけることとなった。

「ダルトンがスピンした直後、僕たちはピットストップを行なうつもりでしたが、当初コーションはローカルイエローに留まっていました。それがフルコース・コーションに変わったので、僕たちはコース上にステイアウトすることを決めたのです。このときはまだ12周分以上の燃料が残っていたため、僕たちはコース上の順位を上げることができました。コース上で僕たちにできることはほとんどなかったので、とにかく何かをしなければいけないと思っていたのです」

 No.30のマシーンはその後のリスタートにも成功すると、2番手に5秒以上のリードを築いていった。けれども、かなり長いコーションが発動されない限り、一般的な2ストップ作戦からは逃れられない。そして結果的に、琢磨は32周目にピットストップを行なって18番手へと後退してしまう。その後はトラフィックに行く手を阻まれたものの、チャーリー・キンボールをパスして17番手に浮上した。続いて上位陣が2回目のピットストップを行なったが、彼らは琢磨の前でコースに復帰。このため琢磨はタイムロスを強いられたうえ、その後、上位陣はニュータイヤの効果でペースを上げていった。こうした状況を確認したRLLRは48周目に2回目のピットストップに踏み切る。これで琢磨は17番手となったが、デイリーに抜き返された結果、18位でチェッカードフラッグを受けたのである。

「僕たちは(優勝した)コルトン・ハータに対するリードを5秒以上まで広げました」 ケレットがきっかけとなった発動されたコーション後の展開について、琢磨はそう説明する。「けれども、僕たちはピットストップに25秒も費やし、そこから6秒を取り戻すのが精一杯でした。これで何台かを攻略できると期待していたのですが……。結果的に僕たちの作戦で期待どおりの成績を得ることはできませんでした。なぜなら、僕がピットアウトした直後にトラフィックに引っかかってしまったからです。さらに、上位陣が僕の前でコースに復帰した際にも、その3周後に再びピットストップを行なうまでに5秒近くを失ったと思います」

 最後のスティントでは、セントルイスで行く手を阻まれ、多くの時間を失うことになったザック・ヴィーチの後に再びつけることとなった。「燃費走行をするザックの影響で、僕は思うようなペースで走ることができなくなりました。ただし、今回も彼の直後につけることになったのは単なる偶然です。彼に対する感情的なしこりは残っていません。ただ、そうなっただけのことです。エキサイティングなことはなく、2番手以下を置き去りにした今回のレースでいい成績を挙げられなかったことは、返す返すも残念でした」

 10月第1週の週末にインディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースで開催されるダブルヘッダーまで、インディカー・チームは束の間の休息を味わうことになる。「前回のロードレースではダメージを負ったマシーンで走らなければいけなかったので、いまはやる気満々です」と琢磨。「できれば、次回はいいパッケージを用意して、いいレースにしたいですね」


written by Marcus Simmons
▲TOPへ

TOPページへ戻る
takumasato.com
(C)T.S.Enterprise Japan LTD.
All rights reserved.


Powered by:
Evolable Asia Corp.