RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.2 [Sun,13 April]
Long Beach

大逆転後の悲しい結末
 あのロングビーチでの劇的なインディカー・シリーズ初優勝から1年。カリフォルニア州の市街地コースを舞台に繰り広げられた2014年ベライゾン・インディカー・シリーズの第2戦で、佐藤琢磨は56周目の多重クラッシュに巻き込まれた不運なドライバーのひとりとして名前を連ねることになった。

 琢磨とAJフォイト・レーシングチームの面々は、スタート直後に大きな遅れを喫したNo.14 ABCサプライ・ダラーラ・ホンダをリードラップへと送り返しただけでなく、上位フィニッシュが十分に期待できる展開に持ち込んだ。ところが、トップ争いを演じていたジョセフ・ニューガーデンとライアン・ハンター-レイが接触したことで連鎖的にアクシデントが発生し、ニューガーデンとハンター-レイのふたりだけでなく、琢磨やジェイムズ・ヒンチクリフ、トニー・カナーンといったドライバーもリタイアに追い込まれたのである。

 ここに至るまで、琢磨は懸命の復活劇を演じていた。なぜなら、2週間前にセントピーターズバーグでポールポジションを勝ち取ったあのスピード、そしてレース前半をリードした力強い走りが、ロングビーチのプラクティスと予選ではまったくといいほど発揮されなかったからだ。

 「セントピーターズバーグでポールポジションを獲得したことが多少はプレッシャーにもなりましたが、僕たちは自信がありましたし、前向きに物事を捉えていました」と琢磨。「僕は少し早めにロサンジェルス入りすると、フィジオと落ち合ってトレーニングをしたり、体調を調整するなどして充実した時間を過ごしました。メディアの取材も多く、たくさんの人たちに温かく出迎えていただきました」

 「昨年に続いて僕たちには強力なパッケージングがあると考えていましたし、セントピーターズバーグを終えてからはコンペティティブな戦いができるとの期待も抱いていました。プラクティスでは、マシーンのバランスに満足できるような状況ではなかったものの、ポジションはそれほど悪くありませんでした。なにしろ金曜日の午後は4番手だったのです。今年は新しいエアロ・コンフィギュレーションが導入されてダウンフォースが増えたほか、エンジンもパワフルになっていたので、昨年よりきっと速くなるだろうと予想していました。ただし、路面のグリップは決してよくありませんでした」

 「このことを基本にマシーンのセットアップに取り組んでいましたが、土曜日の午前中になると、このままでは上手く機能せず、思ったほど速くならないことが明らかになりました。そしてとても厳しい予選になることが予想されましたが、そのいっぽうで、柔らかめのレッドタイアでグリップが改善されれば、マシーンのバランスも好ましい方向に変化するとの期待も抱いていました。ところが、結果的に予選でもマシーンの傾向は変わりませんでした。とても神経質で、グリップ・レベルが低い状態でした。といっても、たかだかコンマ2、3秒の話ですが、現在のインディカー・シリーズはとてもコンペティティブなので、千分の数秒差でも順位が変わることがあるのです」

 琢磨は自分の予選グループ内で8位となり、トップ6だけが出走できるセグメント2には進出できなかった。この結果、琢磨のスターティンググリッドは15番手となった。「全力を尽くしましたが、スピードが足りませんでした」と琢磨。「今年のセントピーターズバーグ、そして昨年のロングビーチのことがあったので、とても残念な結果でした。いつもは上位に進出しているドライバーが何人も苦戦を強いられていました。つまり、コンディションの面ではかなり特殊な状況で、非常にタフな戦いだったといえます」

 「予選後、それまでのデータを詳細に見直し、マシーンのセッティングを根本から変更することにしました。昨年のセッティングをベースとしている限り、あまりいい結果が望めないことがわかったからです」

 日曜日の朝には、こうした努力が報われることとなる。「ウォームアップではいい感触を掴めました。スタビリティが増し、グリップ・レベルとスピードを引き上げることに成功したのです。大きな前進で、かなりのポテンシャルが感じられました。プラクティスの時間が短かったために、やりたいと思っていたことのなかに積み残しが出ていましたが、ようやく自分たちの進むべき方向が見つかったような気がしました」

 レースではいきなり後退を余儀なくされ、順位を落とすとともに予定より早くピットストップを行なわなければならず、結果として琢磨は周回遅れになった。「ロングビーチではスタンディングスタートが採用されました。ただし、僕たちは冬のテストでもあまりスタンディングスタートの練習をできませんでした。そこでロングビーチに入ってから、スタートで用いる様々なマッピングを試し、追い上げを図りました。フォーメーションラップを終え、マシーンに装着されたニュータイアはウォームアップもできていたので、グリップ・レベルはかなり上がっていましたが、このマシーンはそもそもスタンディングスタート用に開発されたものではありません。このため、クラッチの繋がるポイントが安定しないという問題があり、僕は少々困難な状況に陥ってしまいました」

 「ターン1への進入でひとつポジションを落とし、さらに小さなランダバウトのターン2では大混雑が起きていました。サイド・バイ・サイドをするのは至難の技でしたが、もちろん僕はトライしました! このときマイク・コンウェイ(なんとこのレースのウィナー!)に追突され、この衝撃で玉突き状態となり、僕は前を走っていたマシーンに接触してしまいます。これでフロントウィングにダメージを負いました。フロントウィングはすぐに交換しなければいけない状態ではありませんでしたが、勢いを失ったためにいくつかポジションを落とすこととなります。ここで僕たちは『ここで挽回するのは難しい。長いレースだし、いまのうちに戦略を切り替えよう』と判断しました。そこで7周目にピットインしてレッドタイアを装着します。予選はセグメント1しか戦わなかったので、レッドタイアはまだたくさん手元に残っていたのです。それと同時にフロントウィングも交換しましたが、この作業に手間取り、僕たちはラップダウンとなりました」

 琢磨は先頭グループに混じる形で走行すると、レース終盤まで破られることのなかったファステストラップをすぐに記録することとなる。「ペースがよかったのは嬉しかったけれど、ラップダウンになっていたのは残念でした」

 間もなくセバスチャン・ブールデがクラッシュし、幸運にもフルコース・コーションとなる。ここで先頭グループがピットインしたために琢磨はリードラップへの返り咲きに成功。2回目のピットストップを行なったときには18番手となっていた。「すべて順調でした。徐々にポジションを取り戻しつつあったのです」

 ほかのドライバーがピットインしたこともあって、最後となるはずだった自らのミットストップの直前、琢磨は5番手まで順位を上げていた。ただし上位陣のなかには、彼に続いてピットストップする予定のドライバーもいたので、この段階で琢磨は実質的に8番手につけていた。ところが、やがて予想もしなかった災難が琢磨の身に降りかかることとなる。

 「避けることが難しい、とても残念なクラッシュでした。最後のピットストップを行なったとき、僕は(結果的に3位でフィニッシュすることになる)カルロス・ムニョスとタイア交換競争を行う形となります。作業は僕のほうが少し早く終わりましたが、ピット出口ではサイド・バイ・サイトになっていました。僕が見たところ、彼がピットレーン・スピードリミッターを解除したのは決められた地点よりも手前だったので、ムニョスにはペナルティが下されると考えていました」

 「これで僕はムニョスの直後につけることとなりましたが、あまりに接近していたため、僕にはコーナーで何が起きているのか、よく見えませんでした。アクシデントが起きたのは、決して速いポイントではありませんでしたが、完全に見通しが利かない、コース幅がもっとも狭い場所でした。マシーンの勢いと横Gの影響により、レーシングラインはアウト寄りになります。ここで前方視界のあるムニョスはギリギリのところで避けましたが、僕が気づいたときには左右のあちこちで多重アクシデントが発生しており、まだ動いているマシーンもあります。そこで僕はイン側にステアリングを切りましたが、間に合いませんでした」

 「僕は新品のレッドタイアを履いていたので、ポジションを上げられるのは間違いありませんでした。しかも、プッシュ・トゥ・パスはまだ何回も使える状態にありました。けれども、事故は起きてしまいました。ただし、力強く挽回できたことはよかったと思います」

 市街地コースでの2連戦に続いては、アラバマ州の緑豊かなバーバー・モータースポーツ・パークに舞台を移しての第3戦が2週間後に開催されることになる。「ロングビーチでいい成績が得られなかったことはとても残念です。日本からはファン・クラブのメンバーが応援に駆けつけてくれたほか、ロサンジェルスには日系の方々も多く住んでいらっしゃいます。しかも、昨年ここで優勝していたので、僕たちのチームは大変な注目を集めていました。このことを考えると残念でなりません。けれども、レース中のペースはとてもよかったので、この勢いをバーバーにもそのまま持ち込むつもりです。今度こそいい成績が残せるものと期待しています」

written by Marcus Simmon
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