RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.16 [Sun,01 September]
Streets of Baltimore

トンネルの出口は見えたのか?
 朗報だったのは、ボルティモアでの佐藤琢磨がここ数戦よりはるかにコンペティティブになったこと。あまり好ましくない報せは、好調だったのがたった3周に過ぎなかったことにある。

 佐藤琢磨とNo.14をつけたAJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダは、IZODインディカー・シリーズ・レースのオープニングラップで8番手を走っていたが、エンジン・トラブルが発生したため、メリーランドで行われた市街地レースからリタイアに追い込まれることとなった。シーズン半ばの悪い流れは、どうやらまだ断ち切れてはいないようである。

 「ボルティモアには大いなる期待を抱いてやってきました」と琢磨。「昨年、チームも僕もここでコンペティティブな戦いを演じていたので、今年も力強く戦えると考えていましたし、チームのスタッフもこのレースを楽しみにしていました。ただし、タイアのスペックが変わり、コンディションも異なっていたので、新たなチャレンジでもありました」

 「最初と2回目のセッションは順調でした。僕たちはベーシックなセットアップに取り組んでいましたが、とてもポジティブな印象でした。ロードコースで行われた過去2戦よりはるかに好ましい状況です。また、2013年スペックのタイアをこのサーキットにマッチさせる作業も行いましたが、これも順調に進みました」

 琢磨は第2セッションで8番手のタイムをマークしてイベント初日を終えた。「今回も大変な接戦でしたが、僕はいつもボルティモアのレースを楽しんできました。ただ、ここでは常に運に見放されてしまうのです。今年は踏切のところに設けられたシケインが2011年のときと同じレイアウトに戻され、3つの高い縁石が作られていました。ここはとても難しく、マシーンを跳ね上げてしまうドライバーが何人もいました。縁石を乗り越えるときは、正しい角度で進入しなければいけないのです」

 土曜日の朝は上手くことが運ばなかったものの、予選では競合揃いのグループだったにもかかわらず最初のセグメントで3番手となり、12台が出走する第2セグメントに進出した。「3回目のプラクティスではマシーンにトラブルがあり、それがラップタイムにも反映される形となりました。このため難しい状況で予選に臨むことになりましたが、チームはとてもいい働きをしてくれました」

 「予選の第1セグメントは、強力なドライバーが揃ったグループでしたが、とてもうまくいきました。タイムアタックも本当に楽しかった! 僕たちは大きな期待をもって第2セグメントに挑みましたが、ベストラップを記録している最中に赤旗が提示され、残念ながら10番手に終わってしまいました」

 もしもそれがなければ、ファイアストン・ファスト6に進出できただろうか? 「それはわかりませんが、第1セグメントでは素晴らしいスピードを記録しました。だから、チャンスはあったと思います」

 それでも、決勝日当日のウォーミングアップでフォイトのマシーンは力強い走りを見せていたので、決勝でも好成績を残す望みはあった。「天気予報は雨が降るかもしれないと伝えていたので、最高の気分でした! しかも、ウォームアップでは大きな前進も果たしていたので、とても勇気づけられるとともに、強い手応えを感じるセッションでした。多くのドライバーが硬めのブラックタイアを使っているとき、僕たちは2番手か3番手につけていました。その後、ほかのドライバーが柔らかめのレッドタイアに交換すると8番手まで落ちましたが、マシーンのバランスはとても満足がいくもので、午後に行われるレースを楽しみにしていました」

 コース上に“踏切シケイン”があったこともあり、ボルティモアのスタートは2列縦隊で並んだいつものローリングスタートとはいささか様子が異なるものとなった。今年、ドライバーたちは3列に並んでいたが、スタートラインを横切ったとき、10番グリッドの琢磨と並んでいるドライバーは誰もいなかった。けれども、このおかげで琢磨は前方のドライバーたちを追い越すに足る勢いを手に入れることになり、ターン3ではライアン・ハンター-レイとトリスタン・ヴォウティエをアウト側から仕留めると、その出口ではスピードを落としたエリオ・カストロネヴェスをオーバーテイクすることになった。これで7番手となった琢磨は、チャーリー・キンボールに迫っていった。

 「スタート直後は、下り坂のうえにブレーキングゾーンにバンプがあり、さらにはターン1に向けてコース幅がぎゅっと狭くなっていたため、とてもトリッキーな状況でした。だから、僕にできることといえば、慎重に進入してアクシデントに巻き込まれるのを避けることと、次のコーナーにいい態勢で進入できるよう準備を整えることしかありませんでした」

 「ターン3は入り口がとてもワイドなため、いろいろなチャンスが手に入る素晴らしいコーナーです。舗装はコンクリートですが、なぜかグリップは良好でした。ここはいろいろなラインが選べるので、レースをするには最高の場所です。このため、誰もがまるでツーリングカーレースのような接近戦を演じていました。僕はブレーキングでアウト側に回り込むチャンスを手に入れ、コーナーの出口にかけていいポジションにつけていました。結果的に7番手まで上がれたのですから、完璧なスタートだったと思います」

 「このコースはブレーキにとってとてもきついので、その後はマシーンをいたわりつつ、タイアを持たせるとともに、燃費にも気をつけながら周回していきました。これにはスリップストリームを活用することも重要ですが、前のクルマにあまり近づきすぎると、ブレーキの冷却に問題を抱えることになります。けれども、すべては順調にいっていました」

 「ところが、4周目にシケインから脱出しようとしたところ、急激なパワーダウンに見舞われました。エンジンにトラブルが発生したようだったので、ピットに戻って問題を解決しようとしましたが、残念ながらリタイアに追い込まれることになりました」

 とても悔しい結果だったが、大荒れに荒れたボルティモアのレースでは好成績を残すチャンスもあっただろう。「これで僕たちもまともにレースを戦えるようになると、スタッフ全員が期待していました。残念で仕方ありませんでしたが、少なくとも僕たちがコンペティティブであることははっきりしました。これはとても重要なことです」

 「今回はとても荒れたレースになりました。かりにフィニッシュできたとして、何位になっていたかはわかりませんが、どうなっていたのか、本当に知りたいと思います。でも、いまの僕にできることといえば、状況を大きく変えるハードワークをこなし、コンペティティブなマシーンを用意してくれたスタッフたちに感謝することだけです」

 インディカー・シリーズはここから5週間のブレイクに入る。そして次戦はAJフォイトのホームタウンであるテキサスはヒューストンの市街地コースで開催される。ただし、9月29日に菅生で開催されるスーパーフォーミュラ・シリーズにチーム無限から挑む琢磨には、休息をとる余裕はほとんどない。

 「来週はインディアナポリスで予定が入っています。それから日本に帰っていくつかの仕事をこなしてからアメリカの西海岸に戻り、フォンタナで行われるインディカーのテストに1日参加。その日の深夜便で日本に戻り、すぐに仙台に向かいます。その後は菅生でレースウィークエンドに突入することになります!」

 「フォンタナのテストがうまくいくことを願っています。そして菅生が終わるとヒューストンのレースに挑みます。これはチームのホームレースで、(今年前半に体調を崩した)AJが久々にピットスタンドに戻ってくるイベントとなります。たくさんのスタッフが家族を連れてくるので、いいレースとなることを期待しています」

written by Marcus Simmons
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