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Rd.4 [Sun,18 April]
Streets of Long Beach

早く悪い流れを断ち切りたい
 物事をポジティブに捉えれば、今回、佐藤琢磨は初めて大きな後れをとることなくインディカー・レースをフィニッシュできたといえる。ネガティブに捉えれば、ロングビーチのレースはKVレーシング・テクノロジーにとって今季最悪のパフォーマンス不足に悩まされ、かつてのF1日本人ドライバーはカリフォルニアのストリート・サーキットで18位という不本意な成績を残すこととなった。

 先週、アラバマのバーバー・モータースポーツ・パークでトップ6に食い込む戦いを演じた琢磨は、意気揚々としてロングビーチに向かった。「自信を持ってマシーンを満足にコントロールできるようになりました」と琢磨。「僕たちはみんな乗り気で、ワクワクしながらロングビーチに到着したのです」

 けれども、ロータスのサポートを受ける琢磨のダラーラ・ホンダも、彼のチームメイトも金曜日のプラクティスでは揃って苦戦を強いられ、期待したほどの“ワクワク”は味わえなかった。「ロングビーチには歴史があるし、雰囲気は素晴らしかったのですが、チームはグリップ不足に苦しむことになりました。マシーンが跳ねたりスライドして、まるでいい感触をつかめません。挙動の予測がつかないマシーンでコースを覚えるのは厄介なものです。特に、ヘアピンに向かう最後のセクションはいくつかラインがあるように思えて、少し悩みました」

 状況は土曜日になっても好転しなかった。「セッティングはほぼ全面的に変更しましたが、それでもよくなりませんでした。うまくいかなかったのは僕だけでなく、チームメイトのEJヴィソも同じでした。去年、予選で4位だった彼が、今年はものすごく苦しんでいた。そこで僕たちは、予選に向けてもう一度、大幅な変更を行なうことにしたのです」

 今度こそ、うまくいった? 「残念ながら、答えはノーでした。バランスはそれほど悪いわけじゃなかったし、ストリート・サーキットではそもそも完璧なバランスなんてありえないんです。それは僕たちにもわかっていました。グリップ感がものすごく低くて、タイアはまるで路面に食いついてくれなかったのです」

 さらに悪いことに、くじ引きの結果、琢磨、ヴィソ、それにマリオ・モラレスの3人は、揃って先に予選を走るグループに組み込まれてしまう。そして3人はグループ内の8位、9位、10位で予選を終え、スターティンググリッドは15番手、17番手、そして琢磨は19番手に決まった。つまり、琢磨はインディカー・シリーズにデビューして初めて、予選第2ラウンドに進出できなかったのである。

 ただし、日曜日朝のウォームアップでは、かすかに期待のもてる材料も見つかった。「僕らはセッションごとに大規模な変更を繰り返していたので、セッティングをまとめてチューンアップするという作業ができませんでした。そこで土曜日の晩は細部を見つめ直すことにして、予選からの変更は小さなものに留めたのです。これがいい結果をもたらしました。まだまだ不充分でしたが、それまでよりよくなったのは間違いありませんでした」

 ところが、スタートでさえ順位を上げるチャンスは巡ってこなかった。「最後のヘアピンのところでラインは1本だけとなるので、ローリングスタートでもサイド・バイ・サイドのグリッドには整列できません。それどころか、後方の集団がヘアピンに辿り着いた頃には、前に追いつくだけで精一杯でした。なにしろ、前方ではもうレースがスタートしていたのですから! ターン1でもオーバーテイクはできず、ポジションもほぼ固まってしまいました。自分のペースは悪くなく、その気になればもっと飛ばせましたが、まずはタイアと燃料をセーブすることにしました」

 この後、琢磨はレースを通してずっと、誰かに行く手を阻まれながら周回を重ねることとなる。「前を走るドライバーがピットに入ってから、僕は一気にペースを上げることができましたが、僕の後ろで早めにピット作業したドライバーはフレッシュできれいな空気を浴びながら走行できていました。僕がピットから出た時にはすでに順位を落としていたため、この作戦はどちらかといえば失敗に終わりました」

 アレックス・ロイドがピットインを終えてコースに戻ってきたとき、さらに事態は悪化する。「ピットから出てきたとき、彼は冷えたタイアを履いた状態だったので、僕はオーバーテイクしました。ところが、彼は無理やり自分のポジションを守ろうとしたうえ、タイアが冷えていたために止まりきれず、僕に追突してきました。これでスピンして大きく後れをとることになります。しかも、もうすぐ周回遅れになるという位置だったので、いよいよ難しい立場に追い込まれてしまいました」

 運の悪いことに、琢磨が周回遅れとなってすぐに、琢磨の目の前でグレアム・レイホールとマリオ・ロマンチーニが接触し、この日ただ一度のフルコースコーションとなる。もしもこの事故があと数周早く起きていたなら、琢磨は集団に追いついてレースを再開できただろう。けれども、レースリーダーの真後ろで全員に周回遅れにされては、琢磨のレースは終わったも同然だった。

 「リスタートしてからの僕のペースは速くて、前後の位置関係を保ったまま走行を続けていました(琢磨のラップタイムは、トップチームであるペンスキーのライアン・ブリスコーやエリオ・カストロネヴェスとコンマ1秒と変わらなかった)が、オフィシャルにブルーフラッグを振られてしまうので、追いついてきたドライバーに道を譲らないわけにはいきませんでした。おまけに、1台に譲るとその後ろには10台くらいが連なってくるので、彼らも全員、抜かさせないといけません。だから、完走は果たしましたが、とても残念な週末になってしまいました」

 続いて琢磨は、タイトなストリート・サーキットから開放され、新たな冒険に挑むことになる。5月1日、琢磨はカンサス・スピードウェイで初のオーバルレースに臨むのだ。「すぐに気分を切り替えて、オーバルレーシングのことに集中しなければいけません。まずはカンサスに飛んで、ルーキー・オリエーテーション・テストを受けることになります。これがエキサイティンングなものになることを心から期待しています!」

written by Marcus Simmons
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