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Rd.7 [Sun,04 November]
Suzuka Circuit

6年ぶりに挑む“鈴鹿”
 佐藤琢磨の「シーズンエンド・ツアー」はまだ終わらない。今回はフォーミュラ・ニッポンの最終戦として、F1時代に数々の偉業を成し遂げた鈴鹿でのレースに挑むことになったのだ。

 琢磨がチーム無限とともにレースを戦うのはこれが2度目となるが、残念ながら今回、チームはスイフト・ホンダのパフォーマンスを十分に引き出せたとはいえなかった。このため、シーズン唯一のダブルヘッダー・レースとして開催された本大会では、レース2での10位が琢磨のベストリザルトとなった。

 「チーム無限は鈴鹿の予選でいつも強いことがわかっていました」と琢磨。「ただし、ロングランに関してはもう少しセッティングを煮詰める必要がありました。菅生で最初のレースを戦った後、僕たちは充実した内容のテクニカル・ミーティングを行っており、レースに向けてはバランスが良好で安定したペースで走れるセッティングにトライすることになっていました」

 「僕自身は、鈴鹿に戻ってこれらることを本当に楽しみにしていました。2006年に最後に日本GPを戦って以来、エキジビションレースやデモランは何度か行なったことがありますが、やはり、本物のレースで得られる興奮は何物にも代えがたいものです」

 「土曜日の午前中に行なわれたフリープラクティスは、いかにも秋の鈴鹿という天候に恵まれました。気温は低くて青空に覆われ、速いラップタイムを刻むには絶好のコンディションです。ただし、予選前には1時間のプラクティスしかなかったので、新しい考え方のセットアップを僕が試し、チームメイトである山本尚貴選手がいつも鈴鹿で使っているセットアップからエクストラのスピードを手に入れる方針を立てました。山本選手は、2011年の開幕戦でポールポジションを獲得したほか、今年の開幕戦でもQ2でトップタイムをマークしています。つまり、彼が鈴鹿で速いのはわかっていたのですが、そんな彼も今週末は少し苦しんでいたようです」

 予選では、ふたりのドライバーはそれぞれ異なったセッティングを試した。今回、レース1のグリッドはQ1の結果で、そしてレース2のグリッドはこれにQ2やQ3の結果も加えて決定される。Q1で9番手となった琢磨はレース1に9番グリッドからスタートするが、Q2では11番手に終わり、トップ8だけが進出できるQ3には出走できなかった。

 「セットアップ作業は素晴らしいチャレンジでしたが、予選までに満足のいく状態に仕上げるには時間不足でした。また、驚くほどあっという間にコースコンディションが変化したため、Q2では良好なバランスではありませんでした。それでも、僕は予選アタックを楽しみました。燃料を少なくし、ニュータイアを履いて鈴鹿を走るなんて、本当に久しぶりのことでした! それに、フォーミュラ・ニッポンのマシーンは本当にすごいと思いました。なにしろ、今回のポールタイムは、僕がかつて乗ったスーパー・アグリからそれほど離されていないのですから!」

 琢磨は、チーム無限が決勝までに良好なバランスを見つけ出したことは「ハッピーで満足」だったと語っている。「フォーミュラ・ニッポンのセッティング方法は、通常のレーシングカーとは違っています。たとえば、ひどいアンダーステアだったとしたら、フロント・サスペンションを軟らかくするなどの対応をとるのが一般的ですが、このマシーンではそれがそのまま通用するわけではありません。エアロダイナミクスの影響がとても大きく、しかも最後の煮つめの部分では本当にデリケートな調整が必要となるのです。そうした作業はとても楽しいのですが、たくさんのテストが必要となるのも事実です」

 琢磨たちがしっかりとした仕事をしたことは、レース1で琢磨がトップ6のファステストラップを記録したことで証明された。残念ながら、琢磨はスタートでエンジンをストールさせてしまう。なにしろ3ペダルのマシーンでスタンディングスタートを試みるのは2001年以来のことだったのだ(前回の菅生は雨のためローリングスタートとされた)。「僕が操ったF1はどれもハンドクラッチと2ペダルの組み合わせだったので、足でクラッチペダルを操作して停止状態からスタートするのはF3時代以来のことでした。これをエクスキューズにするつもりはありませんが、冷えたタイアを履いてピットレーンでスタートの練習をしたときにはひどいホイールスピンを起こしてしまいました。このことがあったので、僕はスタートであまりスロットルペダルを踏み込まなかったのですが、おかげでエンジンがストールしてしまいました。2001年6月にブランズハッチで開かれたF3レース以来のことでしたね!(苦笑)」

 「僕はコースマーシャルに押されてスタートを切りました。20ラップのレースでは、どんなふうにタイアデグラデーションとラップタイムの低下が起き、バランスがシフトしていくかが確認でき、とても興味深かく思いました。タイアの状態がいい最初の10ラップはペースもよくてコンペティティブでしたが、後半はひどいオーバーステアとなり、とても苦しみました」

 2レース目で見事にスタートを決めた琢磨は、10位完走を果たした。「途中でピットストップを行なうこのレースでは、最後までバランスのいいセッティングとすることを目標に置きました。古いタイアで臨んだ最初のスティントではラップタイムは安定していましたが、大きくタイムをロスしてしまいました。けれども、ピットストップ以降はコンペティティブなペースを刻めるようになりました。他のドライバーたちと比べて安定したペースで走り続けることができ、最終的には前方の集団に追いつきました。スピードがよりコンスタントになったことは、チーム無限にとって歓迎すべきことでした。今後は、全体的なスピードを上げる作業に取り組めばいいからです」

 「鈴鹿のレースを心から楽しみました。また、この週末の目標としていたことも、いくつか達成できました。それと、たくさんのファンと会えたことが嬉しかったですね。サーキットのパドックなどでもたくさんのイベントが開かれ、みなさんとても楽しんでくれた様子だったので、素晴らしい週末になりました」

 2週間後には、琢磨の2012年シーズンの最後を飾るレース・イベントが開催される。チーム無限のフォーミュラ・ニッポン・マシーンを駆り、ノンチャンピオンシップの富士スプリントカップに参戦するのだ。

 「これも大人気のイベントです」と琢磨。「日本で行なわれているふたつのトップカテゴリーであるフォーミュラ・ニッポンとスーパーGTを一度に楽しめるイベントは、この富士スプリントカップしかありません。ここでは、短時間のプラクティス、1周だけの予選、そして100kmのレースが行なわれるので、あまりたくさん走ることはできません。けれども、たくさんの観客が訪れるこのイベントに参加できることを、本当に楽しみにしているところです!」

written by Marcus Simmon
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