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IZODインディカー・シリーズ第9戦ミルウォーキーにおいて、佐藤琢磨は追い上げの途中でリタイアに追い込まれ、またもや悔しい思いを味わうこととなった。
後方グリッドからスタートした琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダは、徐々に順位を上げてチャンピオンシップリーダーのウィル・パワーとバトルを繰り広げていたが、レースが折り返し地点を迎える前に、周回遅れのジェイムス・ジェイクスと接触し、リタイアを喫したのだ。 テキサス・モーター・スピードウェイで苦しいレースを強いられたのに続き、琢磨は、エンジン交換を行ったために10グリッド・ダウンのペナルティを科せられた。琢磨は予選では14番手だったので、25台中24番目のグリッドからスタートを切ることとなった。 「ショートオーバルのレースは今季初めてでした」と琢磨。「僕たちには、ここのテストだけでなく、アイオワ・スピードウェイのテストにも参加できなかったので、初日はとても苦しみました。ショートオーバルのパッケージはいつもと異なり、メカニカル・セットアップはオーバル用でもエアロ・パッケージはダウンフォースの大きなロードコース用ならびに市街地コース用となります。ミルウォーキーはとても素晴らしくチャレンジングなコースで、僕らは本当にハードにドライビングしなければいけません」 最初のプラクティス・セッションで、琢磨は次のように語っている。「自分たちの満足の行く状態にクルマを仕上げるには時間が足りませんでした。それでも進歩を果たして、予選では14番手。ドライビングは楽しかったけれど、マシーンは本当にギリギリの状態でした。滑り出しは良好で、たくさんのデータを収集できたけれども、レースは後方グリッドからスタートを切らなければいけませんでした」 今回、琢磨にエンジン交換に伴うペナルティが科せられたのは、パワーと燃費を大幅に改善したホンダの新エンジンがインディ500の予選と決勝の間で投入されたためである。インディカー・シリーズでは、1基のエンジンで1850マイル(約2960km)を走破することが義務づけられているものの、インディ500だけは例外で、新品のエンジンを使ってもいいことになっている。そこで、テキサスでエンジン交換を行うことになったとき、琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングはインディの予選で使ったエンジンを別に確保し、グリッドが後方になってもレースを力強く戦えるエンジンで決勝に挑むこととしたのだ。 「ミルウォーキーはチャレンジングなコースで、決してオーバーテイクが簡単な場所ではありません」と琢磨。「ただし、不可能なわけでもありません。決勝が始まると、僕はひとつひとつ順位を上げていきました。だから、最初のスティントはとても順調だったと思います」 琢磨は25周目までにマルコ・アンドレッティとジェイムス・ジェイクスをパスして15番手に浮上したが、パワーを先頭とするトップグループは14台が数珠つなぎになっていて、琢磨を半周ほどリードしていた。50周目まで、琢磨はその時点での最速ラップを記録しながら追い上げをはかり、先頭集団の最後尾に追いつく。順位は依然として15番手だが、トップとの差は8.4秒しかなかった。 ここでイエローフラッグが提示される。「僕らはトップに追いついて行きました。とはいえ、バックマーカーを追い越すのは大変な作業でした。前を走るクルマがいない単独走行では速いペースで周回できるので、これにはとても勇気づけられました。すべては順調に進行していましたが、最初のピットストップを終えた直後にイエローが提示されることとなりました。リスタートは凄まじい状況でした。なぜなら、スタート直前のスピードが遅いうえに、このサーキットでは2列縦隊でスタートする形式が復活したからです。ターン1への進入では4ワイド、ときには5ワイドという状況で、とても混みいっていましたが、難を逃れて無事にクリアーできていました。 そしてスプリントレースが始まり、再びイエローが提示されます。ここではほぼ全員がピットに向かい、僕らはここでいくつかのポジションを落としてしまうことになります。またしても大混雑のリスタートを抜けて、良いペースのリズムに乗りはじめていました。 僕はウィル・パワーとの順位争いで激しいバトルを繰り広げていました。今年からオーバルでもディフェンスラインを取ることが許されるようになりました。(相手の動きに反応するブロックは禁止。相手が仕掛ける前にあらかじめ、守りの自分のラインを決める必要があります)その為、ウィルがディフェンスラインを取った影響で、僕はブレーキを使わざるを得なく、僕らのスピードは一時的に遅くなりました。その状況下を利用して、周回遅れになっていたジェイムス・ジェイクスはターン4のアウト側を速いペースで走り抜け、メインストレートでは僕とサイド・バイ・サイドになりました。とはいえ、僕が本当に順位を争っているのはジェイクスではなく、ウィルでした」 「ターン1にはサイド・バイ・サイドで進入しました。僕は自分のラインと順位を守りながらイン側のレーンを走行していましたが、そこは路面がひどく滑りやすくなっていました。マシーンはふらついてグリップを失い、ジェイムスと接触してしまいました。大きなアクシデントでした。まさか周回遅れと絡んでリタイアしてしまうとは、まったく考えてもいなかった事態で、とても落胆しました」 今年のこの時期はインディカー・シリーズが毎週開催されることになっており、次の土曜日の晩にはアイオワ・スピーオウェイの決勝レースが行われる。ここでは、各ドライバーがレースを戦ってスターティンググリッドを決める“予選レース方式”が採用される。「スピードの点で僕たちは悪くないかもしれませんが、スタビリティを大幅に向上させることが必要です。僕たちはアイオワでテストをしていないので、予選レースの実施は僕たちにとって都合がいいかもしれません。というのも、レースでのパフォーマンスを向上させる機会が1回増えるようなものだからです。これはとても興味深いですし、僕たちにとって手助けになることは間違いないと思います」 written by Marcus Simmons |