RACEQUALIFYINGPRACTICE
COLUMN
COLUMN
Rd.3 [Sun,11 April]
Barber Motorsports Park

本来は5位でフィニッシュしていたレース……
 なんと残念なことだろう。バーバー・モータースポーツ・パークで開催されたインディカー・レースに臨んだ佐藤琢磨は、予選で上位陣に食い込み、決勝でもその勢いを保ったが、彼には責任のないスロットル・トラブルで22周後れとなり、リザルトシートのいちばん下に名を連ねることとなったのだ。

 琢磨はシーズン前にKVレーシンング・テクノロジーのテストで走行していたので、この風光明媚なアラバマのレーストラックは、今季のインディカー・シリーズで唯一の“知っている”サーキットでもあった。「最初の2戦よりはずっとリラックスして戦えると思っていました」と琢磨。「もっとも、テストのときは記録的な寒さでしたが。今回はそれとは対照的にすごく暑くなりそうだったので、徐々にインディカーのことがわかってきたとはいえ、とてもチャレンジングな戦いになると予想していました」

 金曜日のプラクティスは順調に進んだ。「最初のセッションではあまりバランスに満足できなかったので、セッティングを変更しないわけにはいきませんでした。ただし、第2セッションの最後にはまずまず満足できる仕上がりとなり、予選に向けていいベースラインができました」

 予選の開始は土曜日の午前9時20分、したがってコンディションは当然変化すると予想された。「気温が下がったので、またコンディションは変わってしまいました。それに、新しいレッド(ソフト)・タイアを使うのもちょっとチャレンジでした」
「今回、僕たちは一般的なアプローチで予選に臨みました。予選ではレッド・タイアを2セットしか使えませんが、僕たちは確実に第2セッションに進むため、これまでは最初からレッド・タイアを使っていたのです。今回は、最高の結果が得られるように考え方を変え、最初の走行ではプライムタイアを履いて昨晩からのバランスの変化を確認し、2回目のアタックからレッド・タイアを使いました」 この作戦は図に当たり、25台を2グループに分けて行なわれた最初の予選で、琢磨は総合2番手のタイムをマーク。彼を上回ったのは、かつてダイアモンド・レーシングのF3ドライバーで、琢磨とは顔なじみのウィル・パワーだけだった。

 続く2回目のセッションで琢磨は5番手のタイムを記録し、インディカー・シリーズに参戦して初めてファイアストーン・ファスト6に駒を進めることになる。「Q2の最初、走り始めはとても難しく感じられました。タイア・ウォーマーが禁止されているので、フロントとリアを自分でバランスよくウォームアップしなければいけないのです。おまけにトラフィックも関係してきますが、幸いにもQ3に進出できることになりました。最高の気分で、本当に嬉しかったですね」

 「このときは、Q2で使った2セット目のレッド・タイアをもう一度使うことにしましたが、残念ながらいいグリップを得られませんでした。いまになれば『新しいプライムタイアのほうが良かったかもかもしれない』と思えますが、そのときは気がつきませんでした。これは少し残念でしたが、それでも6番グリッドからレースに挑めるのは嬉しかったですね」

 ただし、そこで琢磨はまたも新しい経験に直面することになった。「ローリングスタートはこれがまだ3回目だったので、今回もとても慎重なアプローチで臨むことにしましたが、周囲のドライバーは腕の利き揃いなので、本当はそうする必要がありませんでした。スタート・ダッシュはうまく決まりましたが、直後にスコット・ディクソンとマルコ・アンドレッティに接近したので、リスクを冒さないためにも少し早めに減速を始めました。ダリオ・フランキッティにはあっという間に先に行かれてしまいましたが、右側にはトニー・カナーンが近づいてきました。そこで、僕はこう叫んだのです。『さあ、レースをするぞ!』」

 「本当に楽しかったです。ターン2から始まって、ターン3、ターン4までトニーとはサイド・バイ・サイドで、ターン5のブレーキングでは再び僕のアウトサイドに回り込んできました。あれは相手がトニーだったからできたことです。僕は彼のことを尊敬しているし、本当に素晴らしいドライバーですよ」

 琢磨は7番手となってフランキッティを追い、直後にはカナーンが迫っていたが、10周を過ぎるとスロットルに問題が発生した。「バックストレートで突然、エンジンパワーを失いました。スロットルにトラブルが起きたことはすぐにわかりました。僕はギアをニュートラルにして、そのままの惰性でピットまで辿り着こうとしましたが、サーキットはアップ・ダウンが激しく、ピットまで戻るには勢いが不足していました。そこでマシーンを止め、レスキューがやってくるのを待たなければならなくなったのです」

 ピットに戻ると琢磨はコクピットから降り、チームが修理を終えるのを待った。続いてコースへと復帰し、終始集団のなかでバトルを行いながら、決勝中で6番目に速いファステストラップを記録したのである。琢磨は、パワー(4位)とアンドレッティ(5位)に挟まれる形でチェッカードフラッグを受けたが、言い換えれば、トラブルで22周をロスしなかったら、このポジションでフィニッシュしたかもしれなかったのだ!

 「決勝中にヘルメットを一旦脱ぐのは精神的に辛いものがありますが、レースを再開できたのはよかったですね。それに、今回初めてとなったピットストップや、チェッカードフラッグなど、経験しなければいけないことが色々とありましたから。多くのドライバーと戦って、たくさんバトルしたり、オーバーテイクも何度か経験できました。レースを続けている場合を想定してピットストップの予定を立てたり、長くピットに留まる必要がなかった場合に何が起きたかなどをシミュレーションしましたが、他のドライバーを邪魔しないようにも注意しました。あとは燃費走行も勉強しました」

 今週末には、カリフォルニア州ロングビーチの市街地サーキットで次戦が行なわれる。ここは、琢磨がデビューするはるか以前の1976〜1983年にF1が開催されていたコースでもある。「レースのことを色々と経験したり、様々なことを理解したうえでこの一戦に挑むことになってよかったと思います。また知らない場所でレースをすることになりますが、以前に比べれば気持ちに余裕がありますし、ロングビーチは素晴らしい歴史のあるコースです。これからも懸命に努力して、バーバーの予選で起きたようなことを再現するとともに、今度こそいいレースをしたいですね」

written by Marcus Simmons
▲TOPへ

TOPページへ戻る
takumasato.com
(C)T.S.Enterprise Japan LTD.
All rights reserved.


Powered by:
Evolable Asia Corp.