RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.13 [Sun,26 August]
infineon Raceway

記憶から消し去りたい1戦
 いまから30年か40年が過ぎて、佐藤琢磨が自分の孫からレースのキャリアを訊ねられたとき、おそらくいちばん思い返したくない1戦が2012年のIZODインデーカー・シリーズのソノマ戦であろう。
 実際、ボルチモアのレースが終わってチームがパッキングを行なっている来週の日曜日の晩には、おそらく琢磨の記憶から消え去っていても不思議ではないくらい、取るに足らないレースだったといえる。

 北カリフォルニアに建つこのサーキットではエンジンが早々とトラブルを起こしたため、琢磨はレースで汗をかく暇さえなかった。
 予選は24位。
 しかし、ペナルティにより26番グリッドからスタートした琢磨は、順位を上げる機会が与えられるより前にリタイアに追い込まれたのである。

 またもや苦戦を強いられたロードコースでの1戦……。
 琢磨のレーシングキャリアの原点でもあるロードコースで、しかも、この丘の近くにあるツイスティーなコースでは事前にテストも行なったというのに、No.15をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダは期待されたようなパフォーマンスを発揮することができなかったのだ。

「前戦のミドオハイオが終わったところで規定の走行距離に達したため、僕たちはエンジンを交換しました。
 テストを行なったのは、その後のことです」と琢磨。
「ところが、テスト・デイの段階で、このエンジンにはもう問題が起き始めていました。
 ホンダはその解決に取り組んでくれましたが、完治することはなく、レースウィークはずっと小さな問題に悩まされ続けました。
 もっとも、僕たちにはどこに原因があるのかもわかりませんでした」

「テストでは、スピードを改善するため、いくつかの試みを行ないました。
 残念なことに、今年はロードコース用のタイアを装着すると苦戦するという状況が続いていました。
 これとは対照的に、ストリートコース用タイアのコンストラクションとは相性がよかったのですが、ロードコースではいつも競争力が不足しているように思われていたのです。
 僕たちは、良好なバランスとメカニカル・グリップを追い求め、様々なテスト・アイテムを試しました。
 実際、これで改善を図れた部分もありましたが、それはライバルたちにとっても同じこと!
 おかげで、僕たちがいくぶんギャップを縮めたとしても、“躍進”といえるほど大きく順位を上げることはできませんでした。
 僕はタイムシートのほぼ最後尾をさまよっていましたが、これほど辛いことはありません」

 週末に行なわれたフリープラクティスで、チームはいくつもの大幅な変更をマシーンに加えた。
「セットアップのフィロソフィーを何度も変えました。
 大きな変更を繰り返し行なったので、細かなチューニングを実施する時間は残されていません。
 しかも、僕たちはシーズン6基目のエンジンを投入したため、10グリッド・ダウンのペナルティも科せられることになっていたので、予選は、レッド・タイアを履いたときにどれだけ速くなるかを確認するだけとなりました。
 そこで、僕はあまりプッシュすることなく、ただ計測ラップを3周こなし、レースのためにレッド・タイアをセーブすることにしました」

 琢磨は自分の予選グループで12番手となったが、セグメント2に進出できるトップ6との間にはいささかギャップがあった。
 この結果、琢磨は予選24位となり、ペナルティのため27台中26番目のグリッドからスタートすることが決まった。
「レースデイの朝のウォーミングアップでは、これまでに試したことのない新しいセットアップを施し、これはポジティブな効果をもたらしました。
 僕たちのラップタイムは最後尾に近いものでしたが、このとき、多くのドライバーがレッド・タイアを履いていました。
 マシーンはより安定し、グリップが向上するなど、改善が図られたので、これについては嬉しく思いました」

「レースはアグレッシブな戦略で戦うつもりでしたが、エンジン・トラブルはスタートの段階でもう始まっており、最終的に2周目のターン7で息絶えてしまいました」

 それにも増して悪いことに、これでエンジン交換を行なえば、ボルチモアでも再び10グリッド・ダウンのペナルティが科せられることになってしまう。
「決勝前日の晩、メカニックたちは本当に懸命に働いてくれました。
 それを思うと残念でなりません。何度もマシーンを変更しなければいけなかったのに、彼らは完璧な作業をこなしてくれた。
 それが報われなかったので、悔しくて仕方ありません。
 ソノマを走るのは大好きなんですが、どうやらソノマのほうは僕をあまり好きではないようです!」

「これまで、僕たちは市街地サーキットで好成績を収めてきたので、ボルチモアではコンペティティブになれると期待しています。
 ここは素晴らしいコースで、昨年も大いに楽しみましたが、オーバーテイクの面でもいいサーキットだといえます。
 コースは多少、変更を受けましたが、おそらく問題はないはずです。
 まずは予選で最高の結果を残せるように努力します。
 そうすれば、ペナルティの影響を最小化できるでしょう。
 シーズン最後となる市街地サーキットでは、是非ともいい成績を残したいですね」

written by Marcus Simmon
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