RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.12 [Sun,05 August]
Mid-Ohio Sports Car Course

意外な展開
 極めてコンペティティブなIZOD インディカー・シリーズでは、ある1戦では惜しいところで勝利を逃す大活躍を示したとしても、次の1戦でも同じように優勝争いができるとは限らない。

 佐藤琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは、自分たちのダラーラ・ホンダが思うように走らず、数多くのバトルをしながらも13位という結果に満足しなければならなかったミドオハイオの週末に、この事実を思い知らされたことだろう。

 ある場面では、2週間前にエドモントンで琢磨の優勝を阻んだエリオ・カストロネヴェスとバトルをしたが、今回の場合、ふたりの争いは18番手を賭けたものだった。物事の移り変わりの、なんと速いことか……。

 「ミドオハイオはいつ走っても楽しいコースです」と琢磨。「過去2年間はいずれも上位争いをしていたので、今回はエドモントンの後ということもあり、大きな期待を抱いてこのレースに挑みました。チームはいい勢いを保っていたし、ミドオハイオで開かれた今年のホンダ・インディ200ではボビー・レイホールがグランド・マーシャルを務める特別な1戦となっていました。しかも、今回はアメリカン・ルマン・シリーズにエントリーする彼のチームもレースを戦っていたので、僕たちにとってはとても大切な週末となり、いい結果が残せることを期待していました」

 「レースが開催される前の週、このサーキットでテストを行いましたが、マシーンのバランスやスピードには必ずしも満足できませんでした。僕たちはたくさんのことを試したものの、半日ほど雨が降った影響で時間不足となり、テストプログラムをすべて消化することはできませんでした」

 「このため、最初の2回のフリープラクティスでもテストプログラムの続きを行いましたが、十分なスピードが手に入らなかったうえ、マシーンのバランスに関する問題も抱えていました」

 予選グループ内における琢磨の順位は9番手。あとコンマ1秒でトップ6に入り、セグメント2に進出できるところだったが、同じような状況のドライバーは琢磨以外に3人もいた。「ミドオハイオではいつもそうですが、信じられないほどコンペティティブなセッションでした。できることはすべてやったにもかかわらず、ほんの少しというところでセグメント1を突破できませんでした。セッションが進むにつれて、僕たちはトップとの差を縮めていきましたが、満足できたことは一度もありません。なにしろ、2週間前にはあれほどコンペティティブだったのですから」

 カストロネヴェスがペナルティを受けたため、琢磨は予選結果からひとつ繰り上がって17番グリッドよりスタートすることになった。レース当日のウォームアップが雨となった影響でマシーンのさらなる熟成は諮れなかったものの、ここで琢磨は5番手タイムをたたき出す。「雨が降ったため、ウォームアップの開始が遅れました。プライムタイアを履いたときのスピードとスタビリティの改善を目指し、僕たちは前日からセッティングを変更していました。けれども、ドライセッションでその感触を確認するチャンスを逃すことになりました。そこでレースもウェットになることを期待したのですが、残念ながらコースはドライに転じてしまいました!」

 スタートは極めつけの接戦となった。琢磨はかつてのチームメイトであるトニー・カナーンを抜いて15番手に浮上したものの、これは最初のピットストップを行うまでのごく短い時間に過ぎなかった。「雨が降ったためにコース上には泥がたくさん残っていました。この影響でグリップレベルは恐ろしいほど低く、マシーンがいたるところでスライドしたため、接近戦が繰り広げられることになったのです」

 「2ストップ作戦でレースを走りきるのは非常に難しい状況でした。そうするには、かなりの燃料をセーブしなければならず、僕たちのスタートポジションを考えると有効な作戦とは思えませんでした。実際、少なくない数のドライバーが3ストップ作戦を選んでいたので、僕たちもそうしました。最初は様子を見るため、僕たちはプライムタイアでスタートしましたが、それから数周で早めのピットストップを行ってオルタネートタイアに履き替えたので、ペースを思いきり上げられるようになりました」

 今回のミドオハイオも、エドモントンに続いて1度もコーションが出ないレースとなったため、戦略が大きな違いを生み出すことはなかった。そして琢磨は、グレアム・レーホールやジョルジョ・パンターノらとのバトルを楽しみつつも、レース中のほとんどの時間を13〜19番手争いのために費やした。

 「ピットストップを行ってから数周の間はバランスがあまりよくなく、ペースを上げるのは困難な状況でした。ピットアウトしてタイアがまだ冷えた状態のドライバーはオーバーテイクできましたが、僕が冷えたタイアを履いているときは逆に追い越されることとなりました。オーバーテイクの数は多く、とてもエキサイティングでしたが、僕たちのスピードは十分とはいえず、ふたつか3つほどポジションを上げるのが精一杯でした」

 あるときなどはパンターノ、それにメカニカルトラブルを抱えて周回遅れとなったライアン・ハンター-レイと3人並んでターン4に進入するシーンも見られた。「不運にも、僕たちは3人同時にアペックスにつこうとしていました。ジョルジョがイン側にいて、僕はライアンを避けようとしましたが、結果的に僕はふたりに挟まれる格好となり、行き場を失ってしまいました。このときライアンと接触しましたが、マシーンにダメージはありませんでした」

 最後の数周はジョセフ・ニューガーデンの直後につけて走行したが、オーバーテイクはできなかった。「走り始めたばかりのとき、オルタネートタイアは良好なグリップ力を発揮してくれました。けれども、誰もが予想していたとおりデグラレーションがあり、最終的にオルタネートタイアとプライムタイアの差はほとんどなくなっていました」

 ミドオハイオのレースを終えたインディカー・サーカスは西に向かい、3週間後にソノマで開かれる1戦に臨む。「来週、僕たちはソノマでテストを行います」と琢磨。「バーバー・モータースポーツ・パークでもミドオハイオでもコンペティティブではなかったので、僕たちはロードコース用パッケージで少し苦しんでいるように思います。今年はタイアの構造が変更されましたが、これを装着してロードコースを走行する際のスピードをもう少し高めたいと考えています。ソノマは素晴らしいコースで、ここでのドライビングをいつも楽しんできました。だから、今回のテストで何かいいものが見つかればいいと期待しているところです」

written by Marcus Simmons
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