RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.10 [Sun,08 July]
Streets of Toronto

復活の兆し
 レース中のペースは期待したほど速くなかったが、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダを駆って9位入賞を果たした佐藤琢磨は、IZODインディカー・シリーズの舞台がオーバルからロードコースと市街地サーキットに変わったことを歓迎しているだろう。

 琢磨自身は今回のレースを「かなりタフだった」と説明するが、昨年、一昨年の内容とはまったく別物の素晴らしい戦い振りだったことは間違いない。

 「過去2年間、トロントではあまりいい思いをしたことがありませんでした」と琢磨。「別に、コースが嫌いとか、そういうことではまったくありません。最大の理由は、マシーンをコンペティティブに仕上げられなかったことにあります。残念な成績しか残せなかったことを悔しく思っています」

 「今年は新しいチーム、新しいパッケージ、そして大きな期待とともにこのサーキットに戻ってきました。カナダのレースを、僕はいつも楽しんできました。それは、F1だろうとインディカーだろうと関係ありません。カナダのファンは本当に熱狂的で、スーパーアグリでモントリオールのレースに挑んだ2007年のことをいまもとてもよく覚えていてくれています。あのときの写真を持った人たちがたくさんトロントまで応援にきてくれました! 本当に素晴らしい雰囲気です」

 トロントでの週末、琢磨とチームの滑り出しはまずまずだった。「初日はいろいろなことがスムーズに運び、最初のセッションではトップ10に入りました。レイホールのチームが最後にトロントを訪れたのはずいぶん前のことだったので、僕たちはすべてのシミュレーションを行わなければならなかったほか、まずは基本的なセットアップに注力する必要がありました。けれども、これらは順調に進み、マシーンのバランスは悪くなく、2回目のプラクティスを通じて満足のいく進歩を果たすことができました」

 ウェットコンディションで始まった土曜日朝のプラクティス・セッションで、琢磨は引き続きマシーンの状態を確認していたが、それでもトップグループと並ぶラップタイムを記録していた。「予選で役に立ちそうなものを試さなければいけませんでした」と琢磨。「なぜなら、オルタネーティブタイアを装着するとマシーンのバランスがシフトしてしまうからです」

 全ドライバーを二分して行なう予選の第1ラウンドにおいて、琢磨は自分のグループ内で5番手となり、今季はまだこれが2度目でしかない第2ラウンド進出を果たした。その第2ラウンドで琢磨は8番手となったが、意図せずウィル・パワーのアタックを妨害する形になったためにふたつのファステストラップを削除され、結果的に11位となった。「難しい状況下でのペナルティでした。ターン2のエスケープロードに入ったとき、僕はマーシャルが合図を出してくれるまでそこで待機していました。僕は決められた手順に従っていましたが、コースに戻った後、タイアにホコリがついていたせいで素早くペースを上げられず、結果的にブロックする形になってしまいました」

 その後、アレックス・タグリアーニとジェイムズ・ヒンチクリフにペナルティが科せられたため、琢磨は9番グリッドからレースに臨むこととなった。レース序盤にいくつか順位を落とした琢磨は、ライアン・ブリスコーと結果的にこのレースで2位になるチャーリー・キンボールの間にあたる12番手にひとまず落ち着き、周回を重ねていく。

 「スタートではプライムタイアを選びました。ペース的には決して速くなく、オルタネーティブタイアを装着したライバルたちがチャージを仕掛けてきました。彼らは力強く走行していたので、チームは予定よりも少し早めに僕を呼び寄せることにしました。このため、オルタネーティブタイアを履いた第2スティントはやや長めの走行とならざるをえませんでした」

 24周目にはグレアム・レイホールのクラッシュによりイエローとなり、まだ最初のピットストップを行っていなかった上位陣の一部がここでピットに飛び込んだ結果、琢磨は6番手に浮上。そのリスタートではヒンチクリフがピットに向かったほか、琢磨はターン1でジャスティン・ウィルソンのインを奪い、4番手となる。もっとも、ほどなく琢磨とウィルソンはトニー・カナーンの攻略を許してしまったが……。

 その後、琢磨はしばらく5番手のポジションを守り通したものの、やがてウィルソンにパスされ、続いてキンボールに抜かれると、周回を重ねるにつれて見る見る勢いを失っていった。「ブレーキで苦しむようになりました」と琢磨。「それでもロングスティントをこなそうとして懸命に努力しましたが、このスティントの20ラップ目を過ぎたあたりからグリップが急激に失われてしまいました。そしてシャシーバランスにも深刻な問題を抱え、ハードブレーキングができなくなったのです」

 琢磨が次々と順位を落としていったため、2回目のピットストップも予定を前倒しして実施することになった。「当初は、第2スティントを引き延ばすとともに、新しいオルタネーティブタイアを装着して追い上げを図る作戦でしたが、ラップタイムと順位の落ち込みが激しかったので、予定よりも1ラップか2ラップ、早めにピットインすることにしました。この結果、計画よりも余計に周回数をこなすことになり、レース終盤に向けて燃料をセーブしなければなりませんでした。もっとも、この頃になるとシャシーバランスは改善に向かっていましたが、ブレーキの問題を抱え始めていました」

 何度もタイトルを獲得したダリオ・フランキッティのペースが伸び悩んだため、彼が先頭を走り、琢磨もここに属していた中位グループは次第に上位陣から引き離されていった。そしてフィニッシュ間際、琢磨はジェイムス・ジェイクスに抜かれて15番手となったが、その直後にジョセフ・ニューガーデンが関連するアクシデントが発生してイエローが提示される。ここで上位陣の何名かがピットインした結果、琢磨は11番手となってリスタートを迎えた。グリーンフラッグが提示されると、ターン1でセバスチャン・ブールデがクラッシュ。これに続いてターン3ではブリスコー、フランキッティ、サイモン・パジェノーが姿を消す。これで琢磨は9番手となり、イエローのまま迎えたフィニッシュまでそのままの順位で走りきったのである。

 「最後のリスタートはドライバーが密集した状態で迎えました。ターン1でひとつ順位を上げると、大渋滞の交差点であるターン3へと向かっていきます。ここで何かが起きるのではないかと予想するのはさほど難しいことではありませんでした。道幅は狭く、そこへ3ワイドで進入していったのだから、行き場がなくなるのは当然のことでした! ダリオとブリスコーが絡んだのは僕の直前で、僕自身もマルコ・アンドレッティに追突されましたが、どうにか無事に通過できました」

 「たしかに、9位はベストな成績とはいえず、正直、落胆していますが、困難な状況で迎えたタフなレースであったことを思えば、悪くない結果だったと思います」

 続いてインディカー・シリーズは7月22日開催されるレースに備え、西に向かう。チームは、琢磨がこれまで一度も満足できる成績を収めたことのないトロントから、必ずといっていいくらい琢磨が快進撃を示してきたエドモントンに移動することになるのだ。「エドモントンとミッドオハイオは素晴らしいサーキットで、訪れるのを楽しみにしています。そこに向けていい流れを作るためにも、トロントではいい成績を残したいと思っていました。もっとも、トロントではいい経験を積むことができ、セットアップとマシーン開発が進んだので、次戦以降も力強く戦えることを期待しています」

written by Marcus Simmons
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