RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.1 [Sun,25 March]
Streets of St.Petersburg

レースをリードするスピード
 素晴らしい結果を取り逃がしたとき、人は「まったくひどい状況だった」と思うことがある。そのいっぽうで、同じように素晴らしい結果を取り逃したとき、人は「もう少しで優勝できるところだった」という喜びに包まれることもある。つまり、ポジティブな思いがネガティブな思いに勝ることもあるのだ。

 レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングとIZODインディカー・シリーズに参戦し、力強い走りを見せた佐藤琢磨は、今回、後者の思いを味わったようだ。14番グリッドからスタートした琢磨は、2度にわたり首位に躍り出た。ところが、100周のレースが残り25周となったところでリタイアを喫し、トップグループでフィニッシュするチャンスをフイにした。いずれにしろ、新しいチームが用意してくれたホンダ・エンジン搭載のダラーラDW12が、今後も好成績をもたらしてくれるであろうことを琢磨は確信している。

 「とてもエキサイティングなレースだっただけに、とても残念でした」 ギアが2速にスタックする症状に見舞われた後、琢磨はそう語った。「新車特有のトラブルだったといえないこともありませんが……」

 インディカー・シリーズで3シーズン目を迎えた今年、元インディカー・チャンピオンであるボビー・レイホールのチームに加入できたことを琢磨は心から喜んでいた。ここ数シーズンはオープンホイールレースへのフル参戦から遠ざかっていたレイホールだが、今季は復帰を果たしたのである。

 「レイホール・レターマン・ラニガンの復帰プロジェクトに関われたことをとても嬉しく思っています」と琢磨。「ボビーと僕は合意に達しました。彼が作り上げたチームの実力に強い自信を抱いています。いまは、とてもハッピーな気持ちです」

 「これまで何度かテストを行ない、僕たちは一歩ずつ確実に前進してきました。ボビーのチームはこれまでにたくさんの栄冠を勝ち取ってきましたが、当時のことを知る人は、ボビーを含め、ごくわずかです。インディカー・プログラムに関わる90%のスタッフは新たに採用された人たちです。もっとも、GTチームはとても強力で、先週参戦したセブリング12時間でも優勝を果たしています」

 「チームには何の不安もありません。ウィンターテストの内容が完璧だったとはいいませんが、スタッフとともに働き、マイレッジを消化するには、そうしたプロセスも必要だったと思います。唯一、マイナスな点があるとすれば、僕たちが1カー・エントリーとなっていることでしょう。これは、大きなチームに比べると不利な点だと考えています」

 セントピーターズバーグのプラクティスと予選で琢磨は中位グループから抜け出すことができなかった。予選グループ内の順位は8位。しかし、トップ6との差はコンマ2秒で、そうすれば予選の第2ラウンドに進出できるはずだった。この結果、予選での総合結果は15位となったが、サイモン・ペジノにペナルティが下されたため、琢磨は14位に繰り上げとなった。

 「セントピーターズバーグは典型的な市街地コースなので、これとよく似たセブリングのテストで試したセットアップを用いることにしました。セブリングでも僕たちは好調だったからです。正直にいえば、僕たちは苦しんでいましたし、予選での結果にはがっかりしています。走り出しのペースが伸び悩んだだけでなく、そのスピードを期待するようなレベルまで向上できなかったからです。たしかに進化は果たしましたが、Q2に進出するには不十分でした」

 「やがて、マシーンのセットアップに満足がいかなかった理由が判明し、予選後に僕たちはそれを完全にリセットしました。おかげで、一晩の間に大きな進歩を遂げることができ、ウォームアップでは強い自信を抱くことができました」

 実際、琢磨は日曜日の朝のセッションを2番手で終えただけでなく、あともう少しというところでトップに躍り出るところだった。「セッションが始まったときはウェットで、その後、次第に乾いていきましたが、僕たちはスリック・タイアを履いていました。僕たちはとてもコンペティティブで、自然に、そして自信をもってマシーンを操ることができました。もっとも、レースはまた違ったシナリオになると予想していましたが、結果的にこの予想は的中することになります」

 予想どおり、琢磨はスタートで11番手にジャンプアップ。追い越したドライバーのなかには、同じ7列目グリッドで、F1時代のライバルでもあるルーベンス・バリケロが含まれていた。最初のコーションでチームがピットに呼び戻すまで、琢磨はこのポジションを守り続ける。次のコーションはほとんど間を置かずにやってきたが、その前に、琢磨は2011年シーズンにタイトル争いを演じたダリオ・フランキッティとウィル・パワーをコース上で立て続けにオーバーテイクした。続いてレースがグリーンとなったとき、琢磨は7番手だったが、上位陣でピットストップを済ませたドライバーとしてはトップだった。やがて、まだピットストップを行なっていなかったドライバーがグリーン中にピットへ駆け込むと、琢磨は首位に浮上。その後、およそ10周にわたり、このポジションを守り続けた。しばらくすると3回目のコーションとなり、琢磨はここでピットストップを行なった。

 「この日は14番グリッドからスタートしたこともあり、確実に完走することを目標に置いていました。いっぽうで、たくさんのドラマが起きるとも予想していたので、ニューシーズンの始まりにとても興奮しながらも、落ち着いて周回を重ねていました」

 「できるだけ慎重に走っていましたが、チャンスがきたらそれをとりにいくつもりでもいました。とてもエキサイティングなレースで、レース序盤で順位を上げましたが、そこからさらにポジションアップするチャンスをうかがっていました。すべてがとても順調で、ペースがよく、次第にレースの流れを掴んでいきました」

 「ところが、2回目のピットストップではフューエル・リグがうまく機能しませんでした」

 この影響でフランキッティとライアン・ブリスコーに先行されたものの、琢磨はスティントが進むにつれてペースを上げていくと再び首位に浮上し、そのまま最後のピットストップまで走り続けたのである。

 この時点では、ピットストップすることなくフィニッシュまで走りきれるドライバーが他にいたので、琢磨が簡単に優勝できる状況ではなかったものの、一旦は先行したドライバーを再び攻略できないとも限らない。したがって、どう少なく見積もっても5位か6位でフィニッシュするのは確実な情勢だった。

 「ターン1でダリオをパスしたときは最高の気分だったし、それ以外にもエキサイティングなシーンがたくさんありました」と琢磨。「すべて順調で、たとえピットで一旦は順位を落としてもそれを取り戻すことができました。とても力強いレース展開だったと思います」

 「やがてメカニカル・トラブルが発生してしまいます。最後のピットストップを終えたとき、ギアチェンジができなくなったのです。2速に入ったままとなり、ピットの出口から加速することもできませんでした。非常に残念でしたが、トップに立てるようなマシーンとともにチームがインディカー・シリーズに復帰できたことが嬉しくて仕方ありませんでした。今日のレースで上位フィニッシュできるポテンシャルを確認できたことにも勇気づけられましたし、スタッフの働き振りもよく、レース戦略にも問題はありませんでした。であればこそ、チームのことを思うと残念でなりません。復帰第1戦で、いい成績を是非ともプレゼントしたかったからです。僕たちはセントピーターズバーグのレースから素晴らしいことを学び取ったと思います。」

 レース中に記録したファステストラップを見ると、琢磨は決して高いポジションにはいないが、その理由は、レッドタイアがまだフレッシュなときに限ってトラフィックに引っかかってしまったことが挙げられる。けれども、スティントが後半にさしかかったとき、ナンバー15をつけたレイホール・レターマン・ラニガンのマシーンに追いつける者は誰もいなかった。これも、第2戦が開かれるアラバマのバーバー・モータースポーツ・パークに期待を抱く根拠のひとつといえるだろう。

 「そうなることを願っていますが、以前、バーバーでテストしたとき、僕たちはあまりコンペティティブとはいえませんでした。バーバーはセントピーターズバーグとはまったくタイプが異なるサーキットなので、僕たちにはしなければいけない仕事がたくさん残されています。でも、僕もチームもモチベーションは非常に高い。とてもタフでコンペティティブなレースになることを期待しています。

written by Marcus Simmon
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