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Rd.1 [Sun,27 March]
St.Petersburg

幸先のいい滑り出し
 IZODインディーカー・シリーズで2シーズン目を迎えた佐藤琢磨にとって、開幕戦で5位入賞を果たしたことは幸先のいい滑り出しといえた。それは、琢磨が活動の地をアメリカに移して以来、フロリダ州セントピーターズバーグの市街地コースで挙げた今回の成績が最高のものだったということだけでなく、先ごろ大惨事に見舞われた故国、日本を勇気づける素晴らしいメッセージにもなったからだ。

 日本が巨大地震と津波に襲われたことで、シーズン前のテストでは自然と琢磨に関心が集まると同時に、好成績を挙げればそれが日本に贈るエールにもなると思われていた。2児の父でもある琢磨は、被災地に暮らす子供たちを支援することにも力を注ごうとしていた。

 「日本は困難に直面しています」と琢磨。「被災された方々は想像を絶する大変な事態のなかで先の見えない過酷な日々に苦しんでいます。“With you Japan”キャンペーンを立ち上げたのは、被災地で苦しんでいる方々に少しでも協力したいと考えたからですが、これはまだスタートに過ぎません。セントピーターズバーグでは全ドライバーにグローブを寄付してもらい、これが、手と手をとりあって日本を援助するひとつの象徴となることを願っています。僕としては、辛い思いをしている子供たちを特にサポートしたいと考えています」

 「寄付していただいたグローブはオークションにかける予定ですが、それだけでは十分ではないので、今後も一歩ずつ継続的に活動を行なっていくつもりです。4月に開催されるロングビーチは大きなイベントですし、5月にはインディ500もありますから、できるだけのことをしていくつもりです。僕の思いは日本とともにありますが、それと同時に、セントピーターズバーグでの開幕戦はすぐ間近に迫っていました」

 KVレーシング・テクノロジー・ロータスとともに2シーズン目を迎える琢磨にとって、昨年同様、シーズン前に実施できるテストの機会は限られていた。バーバー・モータースポーツ・パークで2日間のテストをこなした琢磨は、2010年のチームメイトでもあったEJ.ヴィソとともにセントピーターズバーグにやってきたが、シーズン開幕間際になってKVロータス入りが決まったトニー・カナーンがふたりの仲間として加わった。

 2004年インディカー・チャンピオンの加入は、大きなパワーをチームにもたらした。「本当に素晴らしいニュースでした」と琢磨。「トニーはアメリカのレースを14年間戦ってきたキャリアを通じ、スピード、タイトル、幾多の勝利など、すべてのものを手に入れてきました。僕たちにとって、彼の経験は何物にも代え難い貴重なものです」

 プラクティスと予選を通じ、琢磨はトップ10入りできるかどうかのポジションにつけていた。2グループに分かれて行なう最初の予選を、琢磨は5番手で通過し、12台が参加する2回目の予選に臨んだ。ここで琢磨は、カナーンより3つポジションが下の11番手となる。

 「チームは進化を遂げました」と琢磨。「しかし、他のチームも同じように進化しています。インディカーはとてもコンペティティブなシリーズであり、したがって問題は、誰がいちばん伸び代が大きかったかという点にありました。しかも、モディファイされたタイアも未知数のひとつで、プラクティスの時間だけですべてに対応するのはとても難しかったです。プラクティス1が始まった段階では、クルマのバランスにまずまず満足していましたが、路面コンディションが改善されるにつれて、僕たちは少し方向性を見失ってしまいました」

 「ひとつの予選セグメントで1セットのタイアしか使えないとされた新しいルールも、問題をより難しくしていました。昨年までは、ノーマルのブラック・タイアでバランスの確認作業を行ない、その後、レッド・タイアでタイムアタックに挑むことができましたが、今年からはいきなりレッド・タイアで1回きりのアタックに発進せねばなりません。クルマが決まっているときであれば、このルールでも問題ありませんが、僕たちはセットアップに少してこずっていたので、難しい状況でした。僕は、バランスが完全には満足できない状態でアタックを行ないましたが、結果的にはコンマ2、3秒の差が大きな違いを生み出すことになりました」

 「トニーの存在は心強いものでした。昨年の予選でフロントロウを手に入れている彼は、チームに多くのものをもたらしました。僕たち3人??僕、トニー、そしてEJ??は協力しあい、結果は徐々によくなっていきました」

 実際、彼らはすでに進歩への道を歩み始めており、レースが終わったとき、カナーンは3位、琢磨は5位につけていた。レース序盤は事故やフルコーションが続いたが、ここでも、琢磨は新たに導入されたルール??2列に整列してからリスタートを行なう??に苦しめられることになる。  11番手からレースに挑んだ琢磨は、多重クラッシュを避けて6番手まで浮上したが、レース序盤に行なわれた4回のリスタートで、琢磨はいずれも2列縦隊の外側の列??6位、8位、10位、8位??に連なったのである。「外側の列からリスタートしてポジションを上げるのは至難の業でした。実際、僕は何度も順位を落としました」と琢磨。「隣に並んでいるクルマがすでにいて、しかもインサイドに次々とクルマが入ってくるため、まるで手の打ちようがありません。とても大きなリスクが伴うので、僕にできることといえば事故を避けることしかありませんでした」

 レースが落ち着きを見せ始めたとき、ダニカ・パトリックの直後を走る琢磨は10番手につけていた。琢磨は、最初のピットストップが行なわれたとき、彼女との“ドラッグレース”を制して順位をひとつ上げるいっぽう、ジェイムズ・ジェイクスとは抜きつ抜かれつを演じた。レース終盤のフルコーションが終わると、友人でもあるジャスティン・ウィルソンがトラブルに見舞われたのに乗じて7番手へと駒を進める。続いてラファエル・マトスを捉えると、ターン1でブラジル人ドライバーを刺して6位に浮上。これが最後のピットストップを行なう直前のことだった。さらに、アレックス・タリアーニと鍔迫り合いを演じた末に5位へと躍進する。その後、目の前を走る数台のグループとの距離を縮め始めたが、琢磨はこのポジションを守り通し、タリアーニを下してチームを多いに勇気づける成績を得た。

 「とてもエキサイティングなレースで、コース上で何人かをオーバーテイクしました。去年はピットストップで苦しむことが何度もありましたが、冬の間にチームはこの問題に取り組み、今回は見事な仕事をしてくれました。本当に素晴らしいチームワークでした! 5位入賞はシーズンの始まりとして幸先の良いスタートになりました」

 この結果を足がかりに、琢磨は2週間後にアラバマ州のバーバー・モータースポーツ・パークで開催される第2戦に臨むことになる。大きく回り込んだレイアウトを持つこのコースは、琢磨がレース・キャリアを積み上げたイギリスのサーキットにそっくりで、彼が得意とするコースといえそうだ。「上位ドライバーの何人かがアクシデントに遭遇し、どちらかといえば完走することが重要だった今回のレース結果に浮かれるつもりはありません。とはいえ、バーバー・モータースポーツ・パークはオールトンパークのことを思い起こさせてくれるサーキットです。去年、予選でファイアストーン・ファスト6に駒を進めたのはこのサーキットが最初でしたので、今回もコンペティティブであることを期待していますし、開幕戦で得たのと同じような成績にチャレンジするつもりです。このサーキットで行なわれたオープンテストでは、期待したほどスムーズに物事は進まず、まだやるべき仕事がたくさん残されていますが、開幕戦を戦い終えていい経験を積んだため、いまはモチベーションがとても高まっていることを実感しています」

written by Marcus Simmon
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