RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.9 [Sun,10 July]
Streets of Toronto

目まぐるしく路面が変化する市街戦
 全長は短いもののチャレンジングなことで知られるトロントのエキジビジョン・プレイス市街地サーキットは、過去25年間にわたり、インディカーチームを欺き続けてきた。そして今年は、KVレーシング・テクノロジーがその餌食となった。

 IZODインディカー・シリーズ第9戦の予選を悔しい19位で終えた琢磨は、レース序盤の接触により6周遅れとなり、No.5をつけたダラーラ・ホンダを20位でフィニッシュに導いた。

 「忘れたくなるような週末でした。もっとコンペティティブであることを期待していたんですが、現実にはそうなりませんでした」

 最初のプラクティスではトップ10に入っていたので、滑り出しは決して悪くなかったが、その後、セッションが進むにつれて、琢磨は次第に順位を落としていく。「金曜日の最初のセッションは悪くありませんでしたが、何かを判断するにはまだ早すぎました。このときはバランスにもグリップレベルにも満足できませんでした。なにしろ、ほとんどのコーナーは途中で舗装が変わってしまうんです。ひどいところでは、コーナーひとつで3回も路面が変わります。しかも、とてもバンピーなのです」

 「ほとんどすべてのコーナーで舗装が変化するため、どんなセッティングをクルマに施しても、フロントタイアがコンクリートに乗ればひどいアンダーステアとなってマシーンはスライドし、4輪がコンクリートに乗れば今度はグリップがなくなり、フロントタイアがアスファルトに戻ってグリップし始めると、今度はオーバーステアになる。ドライビングという面ではいちばん忙しいサーキットのひとつで、僕たちはとても苦しんでいました。チームは3台のマシーンで異なったプログラムを試し、そのメリットを最大限生かそうとしましたが、いい答えは見つかりませんでした」

 琢磨の言葉を借りれば、10列目グリッドという結果に終わった予選は「まるでダメ」だったそうだ。「セッションごとに、まったく違うクルマに乗っているような印象でした。予選後のウォームアップになっても僕たちはグリップ力を得ることができず、決勝では、いままでとまるで異なるクルマに乗っているような印象でした」

 「チームとして見たとき、僕たちはストリートコース・タイアの使いこなしが上手くないようです。このタイアはロードコースで使われるタイアとは構造が異なっていて、僕らのクルマはストリートのバンピーなコースでは満足できたことはありません。レースでも苦しむことになるだろうと予想していました」

 19番グリッドからのスタートだというのに、琢磨はスタートが切られる前にマルコ・アンドレッティにポジションを奪われることとなる。

 「ピットレーンから出るとき、マルコが僕を追い越しました。するとジミーは無線で『琢磨が19番でマルコが20番、これがグリッドオーダーなんだから、マルコの前に行け!』と指示してきました。そこでパレードラップ中に彼を追い越したのですが、驚いたことに、彼はもう1度、僕を追い越したのです。それが何と4回も繰り返されました。僕はワケがわからなくなって、ジミーにもう1度確認しましたが、彼はマルコの前に行けという。ただただ、目の前で起きていることが信じられませんでしたし、なぜマルコがあんな行動に出たのか理解できませんでした。いずれにしても、僕たちは同じ列だったので、スタートのときは隣り合ってなければいけません。とはいえ、コースレイアウトの関係で、2列縦隊となるのはとても難しい状況でした。グリッドの後方では特にその傾向が強く、実質的には1列で並んでいたので、結果的にはスタート前にポジションをひとつ落としていたことになります」

 前方でライアン・ブリスコーとチームメイトのトニー・カナーンがアクシデントを起こしたため、琢磨は自動的に19番手へと浮上、ここでフルコーションとなった。その後のリスタートでダニカ・パトリックに抜かれ、続く悪名高きターン3で琢磨はダニカと絡んでしまう。

 「ターン3のブレーキングポイントの手前にあるキンクのところで、僕はダニカの直後につけていて、まさに追い越しの動作を始めるところでした。ところが、最悪のタイミングで彼女と僕は同じ方向に動いたため、ブレーキをかけたけれど間に合わずに接触してしまったのです」

 これでサスペンションのトーリンクが破損。そのほかにもノーズやフロントウィングがダメージを受けたため、琢磨はピットに戻って作業を行なう羽目になり、ここで数分間を失う。琢磨はコースに復帰したが、誰かがリタイアしない限り、順位が上がる見込みはなかった。「それでもデータを収集する必要があったので、ブラックタイアを装着したり、レッドタイアに履き替えたりしながら、僕は周回を重ねていきました。クルマはアライメントが少し狂っている様子でしたが、テストとして走行する分には影響がなく、燃費の測定などを行ないました。その後も何度かリスタートがありましたけれど、慌ただしく、タフなレースだと思いました。グリップレベルが低すぎるため、事故が多発していたのです」

 インディカー・シリーズの一団が次に目指すのは、カナダ・アルバータ州のエドモントンである。2010年には、琢磨はここで力強いパフォーマンスを示していたが、その後、サーキットは大幅に改装されてしまった。「コースの大部分が変更され、長いストレートとタイトコーナーをつないだコースレイアウトになりました。ただし、少なくとも舗装は以前と変わらないでしょう。トロント同様、ここもひどくバンピーですが、路面の状態はトロントよりもずっと安定しています。タイアの構造も自分たちにとってマイナスにはならないでしょうし、できれば、僕らがコンペティティブで、もう少しいいレースができるといいですね。きっと面白いことになると思いますよ」

 「その前に、月曜日にこちらを発って日本に向かい、ホンダ・インディジャパンの記者会見に出席したり、7月18日にはもてぎで“With You Japan”のイベントを行なったりします。このときは被災地の子供たちを招待して、カートやアートクラフトで楽しみます。いまからとても待ち遠しく思っています」

written by Marcus Simmons
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