RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.11 [Sun,08 August]
NASHVILLE

突然のエンディング 第11戦 ナッシュヴィル
NTTインディカー・シリーズで毎戦トップ10まで追い上げるという佐藤琢磨の記録は、第11戦ナッシュヴィルで途切れてしまった。テネシー州の音楽の街として知られる市街地コースで初開催されたレースは、数々のアクシデントやコーションで波乱の展開となった。そして、そのひとつとして20周目に起きたアクシデントにより、No.30をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダは袋小路に追い込まれ、そこから逃げ出せないままライナス・ヴィーケイのマシーンに追突してしまう。そして、このときのダメージにより、琢磨はリタイアを余儀なくされたのである。

 インディカーの一行がナッシュヴィルを訪れたとき、街は興奮の渦に呑み込まれた。「とてもユニークな様子でした」と琢磨。「新しい場所にやってきた僕たちは、みんな胸をドキドキさせていました。しかも、コースレイアウトはとても興味深いものです。事前に手には入る情報は限られていましたが、僕たちはHPDのシミュレーターを試すことができたので、チームにとっては大きな助けになりましたし、ドライバーの準備という面でも役立ちました。橋のうえを抜けるストレートは強烈で、およそ190mph(約304km/h)で通過します。しかも、2本あるストレートは途中で少し右に曲がり、その直後に90度の左コーナーに向けてブレーキングすることになります。シミュレーターでは路面が恐ろしくバンピーで、実際はそうでないことを願っていましたが、本当に信じられないくらいバンピーでした! そこで車高を大幅に上げましたが、このとき、すでにどんなコースよりも高い車高に設定してありました」

「コースの裏側にあたるセクションは、僕がレーシングカーで走ったどんなサーキットよりも道幅が狭かったと思います。モナコよりも狭いし、F3のコリアン・スーパープリのコースより狭いし、どんなピットレーンよりもタイトでした! ナッシュヴィルがチャレンジングなコースであることは間違いありませんが、雰囲気は信じられないほど素晴らしかったです。レースと同じ週末に音楽祭が開かれていたので、たくさんのお客さんが詰めかけていました」

 このようなコースレイアウトだから、フリープラクティスでアクシデントに起因する赤旗が何度も提示されることは十分に予想できた。金曜日に行なわれた最初のプラクティスを琢磨は17番手で終えたが、土曜日の朝の2回目のプラクティスでは25番手まで後退した。「最初のプラクティスは、通常よりも少し長めでした。けれども、たくさん赤旗が提示されたので、誰もリズムに乗ってドライブできませんでした。最後のニュータイアで臨んだアタックでは、最終的に記録に残ったタイムをコンマ8秒以上短縮していましたが、誰かがターン9の出口でクラッシュしてコースを塞いでいたため、タイムは記録されませんでした。初日は8番手くらいになれたでしょうが、マシーンを改善するためにすべきことは山のように残っていました」

「2日目は本当に苦しみました。ブレーキングでまったくスタビリティが得られず、コーナー入り口のスピードがひどく遅い状態でした。今回も赤旗がたくさん提示され、予選シミュレーションとしてレッド・タイヤで走ることもできなかったので、さらに悪い状況だったといえます。でも、予選では素晴らしいチャンスがあると考えていました。僕は全力を振り絞りましたが、準備が十分ではなく、第2セグメントには進出できませんでした。それでも、プラクティスに比べて3秒も速くなっていたのです! つまり、大きく進歩していたのですが、残念ながら時間切れとなりました」 琢磨は予選グループで12番手のタイムを残し、24番グリッドからスタートすることになった。

 日曜日のウォームアップではマシーンにさらなる微調整を実施。「少なくとも初日の状況までは戻っていました。マシーンの感触は大幅によくなっていて、ブレーキング中のスタビリティも回復していました。ポジティブなことがたくさんあり、レースに向けてさらにセットアップを変更しました。長くて楽しいレースになることが期待されていて、僕もそこに向けた準備を進めていたのです」

 琢磨はオープニングラップで一気に3つもポジションアップを果たし、やがてスコット・マクラフリンに抜き返されてひとつ順位を落としたが、その後、ダルトン・ケレッツがマシーンをストールさせたため、この日最初のイエローが提示される。そのリスタートで、琢磨はジョセフ・ニューガーデンとコナー・デイリーを攻略。そして、このレースを制することになるマーカス・エリクソンがセバスチャン・ブールデを背後から飛び越していったため、琢磨はさらにふたつポジションを上げることになる。そしてイエローコーションとなったが、このとき琢磨は18番手まで駒を進めていた。

 琢磨はスタートについて「誰もが注意深くなっていました」と語った。「僕は大きく順位を上げて、何度かイエローが出た後には18番手まで浮上していました」 次にリスタートが切られると11周にわたって競技が繰り広げられたが、ここで琢磨は再びマクラフリンをパスし、さらにエリオ・カストロネヴェスを攻略。やがてマクラフリンが遅れ、またもイエローが提示された。ここで数名のドライバーがピットストップを行なったため、琢磨は13番手となった。

「僕はサイモンとエリオを続けてブレーキングで仕留めるなど、レースの流れは順調で、13番手までポジションを上げていました。とても勇気づけられる展開で、うまくいっていました。徐々に、でも確実に順位を上げていき、レースを楽しめるようになっていました。すでにたくさんのアクシデントが起き、何度もイエローが提示されていましたが、この先のレースはさらに混乱したものになると予想されていました」

 やがてその混乱が、間違った方向に傾き始める。次のリスタートで、ウィル・パワーはチームメイトであるパジェノーのインサイドに飛び込んだ。しかし、そこに十分なスペースが残されていなかったため、パワーはイン側を無事にすり抜けたものの、パジェノーはバリアに突き刺さってしまう。これでアウト側のラインは行き止まりとなり、後続のヴィーキーもノーズをバリアに突っ込んで停止。ヴィーキーに続くアウト側のラインを走行していた琢磨も行き場を失い、彼らに追突する格好となった。ここから連鎖的に、何台かはここで身動きが取れなくなり、何台かは接触を余儀なくされることとなる。

「残念でした。インディカーでは、グリーンが提示されれば、たとえスタートラインの手前でも競技を再開できますが、このコースは最終コーナーからスタート・フィニッシュラインまでの距離がとても短いため、先頭のドライバーがラインを越えると後続はターン10やターン11にも強引に飛び込んでいくことになります。今回、リスタート前にイン側に飛び込んだドライバーは無事でしたが、多くのドライバーが接触することになりました。ウィルとサイモンは一緒にコーナーに進入し、僕はヴィーキーの直後につけていたので、何が起きているかはまるで見えませんでした。サンティーノ・フェルッチがイン側にいたので、僕はアウト側に進みましたが、そこで突如として行く手が塞がれました。僕の目には、ヴィーキーのスピードが80mph(約128km/h)から瞬時にして0mphに低下したように見えたのです。残念ながら、避けるのはまったく不可能でした。ただちに赤旗が提示され、No.30のメカニックたちは懸命に修復を試みてくれましたが、サスペンションに致命的なダメージを負っていました。本当に残念です」

「誰にとってもタフなレースでしたが、イベントとしては大成功を収めたと思います。ナッシュビルの関係者は素晴らしい仕事をしました。あとは、来年に向けていくつかの部分を修正するだけでいいと思います!」

 シーズン半ばのブレイクを終えたインディカー・シリーズは、ナッシュヴィルを皮切りに3週連続でレースが開催される。次戦はインディ・ロードコースで、その次はセントルイスのオーバルコースが戦いの舞台となる。シーズンは残り5戦。琢磨は依然としてポイントテーブルの10番手につけている。

written by Marcus Simmons
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