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Rd.10 [Sun,04 July]
MID-OHIO

繰り返された“怒濤の追い上げ” 第10戦 ミドオハイオ
NTTインディカー・シリーズで佐藤琢磨が経験している「後方グリッドからスタートして手堅い成績を収める」という展開はミドオハイオ戦でも繰り返され、このレースを10位で終えた彼はポイントスタンディングでも10番手につけている。ただし、琢磨のスターティンググリッドはなんと19番手で、しかもイエローコーションの影響はほとんど受けていない。おそらくミドオハイオは、シリーズ中もっともオーバーテイクが難しいサーキットなので、このリザルトはなおさら印象的といえるだろう。

「予選でいいスピードを発揮できない状況は続いていて、いまもまだ解決できていません」と琢磨。「レースでは悪くありませんが、この流れが当たり前になりつつあります。ただし、予選での究極的なスピードを引き上げなければいけません。なにしろ、予選で柔らかめのソフト・タイヤを装着しても、あまり速くならないのですから……」

 レイホール・ファミリーのホームレースにあたるミドオハイオは、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングにとって重要な一戦だ。ところが、チームのダラーラ・ホンダを走らせる琢磨は、最初のプラクティスを25番手で終えるという困難な滑り出しに直面した。「セッションが始まる前に、通り雨が降りました。路面自体はすでに乾いていましたが、まだグリーンが少し湿っているとき、最終コーナーで僕は軽くコースオフしてしまいました。一旦濡れたグリーンに乗るとコースに復帰できる可能性は限りなくゼロに近く、僕はガードレールに軽く接触しました。それでもサスペンションに異常はありませんでしたが、ステアリングコラムとギアボックスが少し右にずれてしまったため、大事をとって走行を終了することにしたのです」

 続く土曜日のセッションを琢磨は22番手で終えた。「2回目のプラクティスのほうが順調でしたが、いろいろなものを改良しなければいけないことは明らかでした。正直、期待していたほどスムーズな展開とはいえませんでした」

 予選ではほんの少しだけ改善が見られた。琢磨は予選グループで10番手となり、19番グリッドからスタートすることが決まったのだ。「まだ純粋なスピードが不足していました。目立った問題はありませんでしたが、苦しい戦いでした」

 そして、これもいつもと同じように、ウォームアップでは事態が好転して14番手となった。「(チームメイトのグレアム・レイホール、そしてスポット参戦のサンティーノ・フェルッチを含めて)3台が出走しているので、それぞれ異なったセットアップを施し、別々の方向性を試しました。これがポジティブな結果をもたらし、いい感触を掴みました。僕たちは正しい方向に向かっていました」

 決勝レースの最初の4ラップで琢磨がポジションを5つ上げ、14番手となったのは、純粋な速さのおかげだったとは言い切れない。それは、琢磨の前方で起きたアクシデントが主な原因だった。オープニングラップではジェイムズ・ヒンチクリフ、ライアン・ハンター-レイ、フェリックス・ローゼンクヴィストが絡んでイエローが提示され、その後リスタートが切られると、今度はエド・ジョーンズとウィル・パワーがクラッシュして再びイエローが提示された。そして競技が本格的に再開されたとき、琢磨は14番手だったが、12ラップ目にはフェルッチにパスされる。その後、琢磨は長めのスティントを走行し、6番手まで順位を上げたところで最初のピットストップを行なった。

「純粋なオーバーテイクではなく、アクシデントを避けただけですが、これもレースの重要な側面といわなければいけません! ギリギリのところで避けたので、サイドポッドがウィルのマシーンと軽く接触しました。その後、ミドオハイオでオーバーテイクするのは至難の技でした。柔軟なレース戦略で戦うことができたため、できるだけ燃費を抑える方向で走り続けました。僕たちはプライマリー・タイヤでスタートし、さらに2セットのレッド・タイヤが使用可能だったので、最初のスティントを長くすれば、レッド・タイヤのデグラデーションを最小限に留めることができました。ただし、ピットインやピットアウトのタイミングに困難はつきもので、最初のピットストップでは渋滞に巻き込まれ、期待したほど順位を上げることはできませんでした」

 実際、琢磨は15番手となって第2スティントを開始した。そして、レースが残り25周となったところで、琢磨はこの日2回目で最後となるピットストップを実施。その直前、琢磨は8番手まで順位を上げていたが、コースに復帰したときも12番手に踏み留まっていた。「なかなかいいピットストップでした」と琢磨。「おかげで(実質的に)順位を上げることができました」

 最後のスティントではトップ10を賭けたバトルを繰り広げることとなる。そして、長年の宿敵であるセバスチャン・ブルデーを追いかけているとき、琢磨はルーキーのスコット・マクラフリンにプッシュされてしまう。残り1周となったとき、コルトン・ハータがピットインしてスプラッシュ&ゴーを行なったために琢磨は11番手に浮上。そして琢磨はターン4の進入でついにブルデーを仕留め、トップ10入りを果たしたのである。

「もう少し前のポジションでフィニッシュしたいところでしたが、とても楽しいレースでした! セバスチャンと僕の間には、ちょっとした“因縁”があります。AJフォイトに所属して苦しんでいた当時、ミドオハイオで3番手を走行していると、彼が僕を押し出し、3位表彰台のチャンスを失ったことがあります。今回は、様々な戦略を駆使しながら、オーバーテイクするまでに10周もかかりました。彼のマシーンはダウンフォースをかなり減らしていたため、ストレートで速く、インフィールドではそれほどでもありませんでした。しかも、ストレートでプッシュ・トゥ・パスを使って逃げていたので、なかなか攻略できませんでした。それでも、彼との差をなんとか埋め合わせする方法はあります。このとき、僕はプッシュ・トゥ・パスをたしか15秒ほど使えたので、彼がプッシュ・トゥ・パスを使い切るのを待つことにしました。最後の2ラップで、セバスチャンがプッシュ・トゥ・パスを使い果たしたとき、僕にはまだ8秒分残っていました。最初のチャレンジは失敗に終わり、4秒分だけ残した状態でファイナルラップを迎えました。そして彼と並んだとき、プッシュ・トゥ・パスがゼロになったのです! 僕はギリギリまでブレーキングを遅らせました。イン側のタイヤが軽くロックしましたが、それでも最終的には彼をオーバーテイクできました」

 琢磨が「力強い結果」を得たというミドオハイオのレースが終わると、トロント戦がキャンセルされたこともあって、インディカー・シリーズは短いインターバルを迎える。次戦は、初開催となるナッシュヴィルの市街地コースが舞台。このインターバル中、琢磨はヨーロッパを訪れ、続いて9月に最終戦のひとつ前として開催されるラクナセカに向けたテストに参加する予定だ。

 ナッシュヴィルでのレースを、琢磨は心待ちにしている。「これまでナッシュヴィルには、セントピーターズバーグやバーバー・モータースポーツ・パークに向かう途中に立ち寄ったことしかありませんが、カントリー・ミュージックで有名で、とても活気のある街です。幸運なことに、サーキットのシミュレーションマップが間に合ったので、HPDのシミュレーターでサーキットを体験する予定です。きっと、とても厳しい戦いになるでしょう。車速が170mph(約272km/h)に迫るとても速いストレートがあって、直後にはコーナリング中にブレーキングする区間がありますが、ここの路面は思い切りバンピーです。きっと、かつてなかったくらい車高を上げることになるでしょう! おそらく、シーズン最高のハイライトのひとつになると思いますよ」

written by Marcus Simmons
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