RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.2 [Sun,28 March]
Streets of St. Petersburg

9番手を走行中に起きた悲劇
 インディカー・シリーズ特有のエキサイティングな戦いをレース距離の1/4ほど味わったところで、フロリダ州セントピーターズバーグの市街地コースで開催されたシリーズ第2戦は、琢磨にとって残念な結果に終わった。

 F1で活躍した日本人ドライバーは、スタートして25周目くらいまでの大半をトップ10で走行しながら、タイアウォールに接触し、そこで彼の戦いも幕を閉じたのである。

 インディカー・ドライバーになってたった2戦目を迎えたばかりにも関わらず、KVレーシング・テクノロジーのマシーンを駆る琢磨は大きな進歩を遂げた。金曜日に行なわれた2回目のフリープラクティスで琢磨は7番手につけたが、そのタイムは2番手のドライバーと0.1秒も離れていなかった。「とてもいい状況で、物事はスムーズに運んでいました」と琢磨。「セントピーターズバーグは僕にとって初めてのサーキットですが、低速コーナーと高速コーナーが上手くミックスされていて、開幕戦が行なわれたブラジルほどバンピーでもありません! 少しトリッキーに感じられるコーナー、それに高速セクションなどはとてもチャレンジングです」

 「ブラジルと違ってチームはこのサーキットのことを知っているので、僕たちはしっかりしたベースラインから作業を始めることができました。だから走り始めからとても楽しかったし、マシーンのバランスにもまずまず満足していました」

 ところが、土曜日の朝になるとハンドリングのバランスが崩れ始めてしまう。「市街地サーキットのコンディションは、ラバーが載り始めると驚くほど変化します。大抵ペースは上がるものですが、ときにはバランスを崩すこともあります」 その後、琢磨はシケインで縁石に乗り上げてしまう。「マシーンが宙に浮いてしまったのです」 おかげで琢磨はピットに戻り、ダメージを受けたダンパーカバーを交換することになる。「一旦、出遅れてしまうと、それを取り戻すのは容易なことではないので、セッティングを変更しながらマシーンの変化を確認するバック・トゥ・バック・テストも、時間がなくなってできませんでした」

 それでも、琢磨は12台ずつ2つのグループに分かれて行う最初の予選で5番手に食い込み、予選2回目に駒を進めた。ところが、ここで彼はさらに時間をロスすることになる。「プラクティスからなんとか立ち直って予選2回目に進出できたのはよかったです。けれども、Q2最初のラップで後輪にメカニカル・トラブルが起きて、ホイールが外れてしまいました。この事故が、どちらかといえば低速セクションのターン5で起きたのはラッキーでした。それに外れたホイールをマーシャルが装着し直してくれたおかげで、僕はマシーンをドライブしてピットに戻ることができました。ピットで作業を終えてからコースに復帰しましたが、こういうトラブルがあった後なので、リズムを取り戻すのは容易なことではなく、予選時間を最大限に活用することはできませんでした。さらに、フルコースコーションを起こしたペナルティーとして、ベストラップふたつが抹消されてしまいました」 それでも琢磨は数々の難関を乗り越えて11番グリッドを手に入れることとなる。

 開幕戦サンパウロは悔しい1周目でのリタイアとなったので、“レッド・タイア”と呼ばれるソフトコンパウンドを琢磨が使うのは、今回が初めてとなるはずだった。けれども、レースのスタートが切られるまで、琢磨はさらに19時間も待たなければいけなかった。豪雨のため、レースが月曜日の朝に延期されたのである。

 「ところどころが未だ湿った路面でしたが、スリックタイアでのスタートとなりました。ふだんなら、こういうコンディションは大好きですが、僕にとってインディカーはまだ新しく未知の部分が多いので、多少の不安もありました。ローリングスタートは注意深くこなし、順調にターン1に進入してポジションをいくつか上げました(チームメイトのEJヴィソとマイク・コンウェイの前に出る)」

 琢磨はアレックス・タリアーニの後方、ヴィソの前に位置する9番手を確保した。「とても面白かったし、サイド・バイ・サイドやオーバーテイクなど、レースをしている感覚は本当にエキサイティングでした。もう2年間も遠ざかっていた感触ですよ! でも、路面は雨の影響でラバーが載っておらず、タイアにはとても厳しいコンディションでした。おかげで、僕を含めた何人かのドライバーがハンドリングのバランスに苦しみ始めます。僕は無線でプライマリー・タイアに交換して欲しいとチームに頼みましたが、給油するタイミングを考えて、もう少し走り続けるよう指示されました。この頃には、ひどいバランスに本当に苦しめられるようになっていました」

 後方から迫るヴィットール・メイラを抑えていたとき、琢磨はバリアに接触してしまう。「後ろのマシーンはずっとペースが速かったのですが、このことから僕は少し教わったような気がします。僕がこれまで戦ってきたのは、すべてスプリントレースでした。そこでは、常に全力を出し続けることが求められますが、レース中に何度もフルコーションになるインディカーレースでは、自分のポジションを守ることに執着しすぎないことが大切なときもあるようです。つまり、状況によっては順位を落とすことも受け入れなければいけないのです。だから、まだまだ学ぶべきことは多いし、僕はそれらを吸収している最中といえるかもしれません」

 次回第3戦はアラバマ州のバーバー・モータースポーツ・パークで開催される。美しいロードコースとして知られるこのサーキットは、琢磨がインディカー・シリーズへの挑戦を開始した土地でもある。「まだまだパフォーマンスは上がって行きますよ。それに、今度は初めて自分が知っているサーキットを走ることになります」

 “美しい”といえば、今回より琢磨のマシーンにはロータスのカラーリングが施されることになった。これは、伝説的スポーツカーメーカーであるロータスとチームがタイアアップした結果である。「誰にとっても素晴らしいニュースです」と琢磨。「これほど有名で歴史的なレーシングブランドと手を組んでインディカー・シリーズに参戦できるのだから嬉しいのは当然ですし、ブリティッシュ・レーシング・カラーのマシーンで走るのは自分にとって誇りでもあります」

written by Marcus Simmons
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