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Rd.13 [Sat,03 October]
INDYCAR GP RACE 2

速さを見せられなかった“インディ” 第12、13戦 インディアナポリス・ロードコース
 インディアナポリスのロードコースで行なわれた今季最後のダブルヘッダーレースで、佐藤琢磨は成功を収めることができなかった。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのNo.30を付けたダラーラ・ホンダに乗るドライバーは、ハーヴェスト・グランプリとして開催されたイベントでポテンシャルをフルに引き出すことができないまま、金曜日のレースを18位で、そして土曜日のレースを14位で終えたのである。

 それは、同じインディアナポリスで1ヵ月半ほど前に開催されたレースとは甚だしい隔たりのある結果だった。あのとき、琢磨はインディ500で2度目の勝利をRLLRに捧げたのである。そして新型コロナウィルス感染症の影響で様々なことが例年どおりに進まないなかでも、優勝を祝福するイベントは部分的に行なわれることとなった。「先週は僕たちのビクトリー・ツアーとしてシカゴを訪れました」と琢磨。「ともにシカゴをベースにしているボビー・レイホールとマイク・ラニガンが市内でお祝いをしたいと言い出したので、僕らはウィニングマシーンとボルグ・ワーナー・トロフィーを持ち込むことにしました。ダウンタウンを散策していた人たちにとっては、ちょっとした驚きだったようです! 皆さんの笑顔を見たり、ファンの方々とお話しするのは本当に楽しいですね」 このツアーではラニガンが経営するMi-Jackの本社にも訪れたほか、ラニガン家が所有する船でミシシッピ川をクルーズし、リラックスしたひとときを過ごしたのである。

 今回は限定数とはいえ観客がインディアナポリスに入場することを認められたが、琢磨にとってはさほど楽しいイベントにはならなかった。スケジュールは過密気味で、最初のプラクティスを20番手で終えた琢磨は、続いて行なわれた第1レースのための予選でコースアウトを喫し、25人中24位に終わる。

「7月に行なわれたインディGPのときはサスペンションの一部が破損していましたが、それでも10位となり、チームメイトのグレアム・レイホールは表彰台に上っていたので、今回もいい状態で戻ってこられると期待していました。ところが、そのとおりにはなりませんでした。イベントフォーマットは最近のダブルヘッダーレースと変わりありませんが、1度だけのプラクティスではできることも限られています。僕たちは、7月にグレアムが成功を収めたセットアップをベースとし、これを煮詰めることにしました。当初、マシーンの調子はそれほど悪くありませんでしたが、ライバルたちがどんどん速くなっていきました。気温が40?(およそ22℃)も下がっていたので、誰もが速くなったのです」

「僕自身は、予選ではペースを上げられると期待していましたが、そのチャンスは手に入りませんでした。柔らかめのソフト・タイヤでコースインしたところ、インラップでスピンしてしまったからです。これは最悪でした。その前にプライム・タイヤで走行したときは5番手だったので、ベストというわけではありませんでしたが、プラクティスのときよりはよくなっていました。レッド・タイヤではさらにポジションを上げられると思っていましたが、タイヤが冷えていたのにスロットルペダルを踏み込みすぎた自分のミスです。プライマリー・タイヤではまったく問題がなかったので、レッド・タイヤでスピンを喫してサンドトラップにはまったときには驚きました」

 7月に開催された85ラップのレースでは2ストップ作戦が大成功を収めたので、80ラップで行なわれる今回もRLLRと琢磨は2ストップ作戦でレースに臨んだ。けれども、3ヵ月前のレイホールがそうだったように、この戦略はフルコース・コーションの出方によって成否が左右される。「7周はフルコーションとなることが必要でした。ただし、僕たちのグリッド順のことを考えれば、なにかに挑戦しないわけにはいかなかったので、イエローが出ることを期待していました」 しかし、その期待は裏切られてしまう。さらに悪いことに、パフォーマンスが高いうえに安定性の面でも悪くなかったレッド・タイヤを、No.30のマシーンはレース中に1セットしか使えなかったのである。

「ラップタイムと給油を先延ばしにしなければいけない周回数について確認したところ、このスティントをこなすのは不可能で、しかもイエローは出そうにありませんでした。そこで僕は2ストップから3ストップに変更しなければならなくなりましたが、このときは燃費走行をかなり行なっていたため、すでに順位をおとしていました。しかも、僕は予選中にスピンした影響で、そのとき履いていたレッドタイヤにはフラットスポットができていました。ファイアストンは問題ないといってくれましたが、チームは安全を見越してこのタイヤを使うべきではないと判断しました。このため、僕は3ストップ作戦のレースを3セットのブラック・タイヤと1セットのレッド・タイヤで戦うことになりましたが、ライバルたちはブラックとレッドを2セットずつ持っていました。レッド・タイヤはブラック・タイヤに比べてラップタイムが1秒速く、デグラデーションは同等でしたので、僕たちは2重に足かせを課せられることになり、上位進出の夢は遠のいていきました」

 琢磨がレッド・タイヤを装着したのは第2スティントでのこと。彼は24番手から走り始めたが、12ラップのうちにライバルをオーバーテイクして20番手へと駒を進めていた。さらに、他のドライバーが早めにピットストップしたことから、琢磨がピットを訪れたときには12番手まで浮上。体勢を立て直したNo.30は17番手で最終スティントの走行を開始し、途中、サンティノ・フェルッチとアレックス・パロウにパスされたものの、マルコ・アンドレッティがリタイアしたために18位でフィニッシュした。「第2スティントのほうがずっとよく、ポジティブな気分に包まれましたが、その後はなにもできず、軽いフラストレーションを感じていました」 琢磨はレースの様子をそう振り返った。

 第2レースの予選も落胆すべき結果で、琢磨は予選グループで9番手となり、17番グリッドからのスタートとなった。今回は周回数が75ラップのため、誰もが2ストップ作戦を選択。おかげで、戦略で工夫できる余地はほとんどなかった。このレースで琢磨は、ジェイムズ・ヒンチクリフ、マーカス・エリクソン、コナー・デイリーらとホイールとホイールが接触しそうになるバトルを何度も演じる。最後のスティントではデイリーとエリクソンをオーバーテイクし、14位でフィニッシュした。

「いいスタートを切ったと思いましたが、コンスタントに順位をあげることはできず、したがってまたもフラストレーションを味わうレースとなりました」と琢磨。「ハードにレースを戦っていたマーカスには押し出されてしまいました。彼は僕だけでなく、ほかのドライバーにも同じようにしました。僕はレース半ばで彼とバトルしていました。彼は何度もブレーキで行きすぎていたので、僕はクロスラインを使ってポジションを取り戻しましたが、ついには僕を押し出してグリーンへと追いやったのです。おかげでコナーにポジションを奪われました」

「でも、たとえ彼に押し出されなかったとしても、順位はそう大きく変わらなかったと思います。なぜなら、今回もイエローはなく、基本的にはハイスピードのパレードに終わったからです。全般的にいって、僕たちはスピード不足で順位を上げられませんでした」

 それでも、琢磨にはインディ500で優勝したあとの“お楽しみ”が待っていた。ハーヴェスト・グランプリを戦い終えるとノースカロライナのトライオンに足を伸ばし、有名な彫刻家であるウィリアム・ベーンレンズのアトリエを訪れたのだ。ボルグ・ワーナー・トロフィーに埋め込まれる彫像の制作を受け持つベーンレンズのもとを琢磨が訪れるのは、これが2回目。そして琢磨は2020年シーズンの最終戦について思いを巡らせることとなった。ちなみに、その開催地は開幕戦が予定されていたセントピーターズバーグである。

「セントピーターズバーグはエネルギーに溢れていて、シーズンの幕開けとしては理想的な街です。したがって、いい気持ちでシーズンを締め括るにも最適の街といえます。インディで観客を迎え入れたのは素晴らしいことでした。セントピーターズバーグでもなんらかの制限があるでしょうが、それでもファンのみなさんにレースを見てもらえるのは嬉しいことです。今年はここが唯一の市街地レースとなるので、できれば力強くレースを戦い、上位でフィニッシュしたいですね」


written by Marcus Simmons
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