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Rd.5 [Sat,11 May]
Indianapolis

ジェットコースターのような週末
 NTTインディカー・シリーズとして催される初の“マンス・オブ・メイ”はインディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースで幕を開けたが、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングにとっては不本意な結果に終わった。佐藤琢磨の成績は週末を通じて大きく乱高下。そのハイライトはQ1でトップタイムをマークしたことだが、反対に残念だったのはレースを14位で終えた点だろう。この結果、ポイントスタンディングでは4番手でシリーズ最大の一戦“インディ500”に挑戦することになる。

 インディ・グランプリはインディカーのカレンダーでもっとも開催期間の短いイベントのひとつだ。なにしろ、2回のプラクティスと公式予選までを金曜日に行ない、土曜日の夕方には決勝レースが終わるのだ。琢磨の滑り出しは悪くなく、No.30のダラーラ・ホンダは2回のプラクティスをそれぞれ6番手と2番手で締め括った。

 「何週間か前にこのコースでホンダ勢によるマニュファクチュアラー・テストが行なわれました」と琢磨。「ただし、僕たち2台(琢磨とチームメイトのグレアム・レイホール)のパフォーマンスはさほどよくなく、今週末に向けてはセットアップのフィロソフィーを少し見直しました。こちらのほうが多少いいようです」

 「予選の前に行なわれるのは45分のセッションが2回だけなので、クルマを素早く仕上げる必要があります。この日は気温が低かったためにダウンフォースが大きくなり、そこで多くのドライバーがダウンフォース・レベルを削っていきました。予選を前にして、僕たちの気持ちは揺れ動いていました。僕たちのマシーンが調子を上げていることには少し自信を抱いていましたが、予選に向けてセットアップを修正していたので、どのくらい速いかまでは予想できませんでした」

 琢磨は自分の予選グループで首位に立つと、トップ12のドライバーが競い合うQ2にファイアストン・ファスト6へのチケットを賭けて出走。ところがQ2は予想外の11番手に終わり、琢磨は11番グリッドからレースに臨むことが決まった。もしもQ1と同じタイムをQ2で記録していたら、琢磨は3番手になっていただろう。

 「予選前にダウンフォースを少し削ったところ、僕はトップタイムをマークしました。しかも、僕の予選グループには強豪が顔を揃えていたのです。だから、自分たちのパフォーマンスに心から満足していました。自分たちがQ3に進出できるのは間違いないと思われたので、Q2に向けてはマシーンに一切手をつけないことにしました。ところが、僕たちはここで苦戦を強いられます。ドライバー間のタイム差はごくわずかで、気温が低かったのでダウンフォースをさらに削りました。このためタイアのウォームアップで苦しみました。インディのロードコースは全長が短く、しかも計測2周目がタイムアタックの周となります。ところが、最初のラップではトラフィックに引っかかり、2周目に入る前にはほかのドライバーに追いついてしまいました。このためペースが遅く、タイヤの温度をワーキングレンジまで上げることができませんでした」

 「最初のふたつのコーナーではマーカス・エリクソンを追走したことで0.2秒ほどロスしました。タイヤはグリップせず、チャタリングを起こしていました。。このラップの残る部分ではベストと同じペースで走りましたが、ここで失ったコンマ2秒がQ3に進出できるか、Q2の最後尾に終わるかの境目となりました。もしもダウンフォースをもう少し多めにしていたら、結果は違っていたかもしれません。本当に残念です」

 ウォームアップセッションではマシーンの感触が「少しよくなっている」と琢磨は感じたものの、ここで3番手をマークしたことについては「タイムは実力を正しく反映していない」と言明する。コンディションは依然として寒く、多くのチームは柔らかめのソフト・タイアでレースに臨み、中間のスティントで使用が義務づけられているブラック・タイアに履き替えると読んでいた。しかも雨が降るとの予報もあり、このためチームはダウンフォースを増やしたが、それでも琢磨は「僕たち(のダウンフォース・レベル)は真ん中くらい」と語った。

 決勝レースのスタートはタフなものだった。インディのピット前を走るワイドなストレートから1コーナーに向けて急に幅が狭くなる悪名高き部分で、琢磨は周囲をライバルにかこまれてしまう。マシーンへのダメージは免れたものの軽い接触もあり、1ラップ目が終わったときには16番手までポジションを落としていた。しかし、ここから反撃に転じてライアン・ハンター・レイとエリオ・カストロネヴェスを攻略。エリクソンのクラッシュでイエローが提示された直後のリスタートで、琢磨は12番手まで順位を上げていた。「スタートでは大きくポジションを下げました」と琢磨。「けれども、そこから順位を取り戻そうと努力しました。グレアムと僕のペースは速く、前を行くライバルたちを追い上げていました」

 リスタートではターン1でコルトン・ハータがスピンしたために琢磨は11番手に繰り上がり、後に若手のハータはハンター・レイと接触して再びイエローが提示されるが、この前に琢磨はサンティーノ・フェルッティをパスして10番手に浮上。次のリスタートではウィル・パワーとセバスチャン・ブールデをオーバーテイクして8番手になったが、その後、このレースのウィナーとなるサイモン・パジェノーやブールデと7番手を賭けた壮絶なバトルを展開。この過程で琢磨は1コーナーでコースオフを喫してしまう。その後、1回目のピットストップを引き伸ばした琢磨は一時4番手まで駒を進めたものの、ピットストップが一巡したときには14番手へと後退した。

 第2スティントではまたもやブールデとバトル。今回もピットストップを引き伸ばした琢磨は2番手へと急浮上したが、ペースが傑出して速かったわけではない。「クルマの動きがちょっと鈍いように感じていました。このスティントの終わりにかけてマシーンのペースは悪くなかったので、次のスティントに向けてはフロントのダウンフォースを少し増やしてブラック・タイアを装着することにしました。この時点では、雨はまだ降り始めていません。走り始めの段階ではタイアを温めるのに手こずりましたが、やがて雨が降り始めるとレッド・タイアを装着したマシーンのほうが優勢となります。それでも、ブラック・タイアもひとたび発熱し始めればグリップは良好で、ライバルたちを次々と攻略できました。ウィルとサイド・バイ・サイドのバトルを演じたのはとても楽しかったし、エリオとのバトルもエンジョイしました! あれは本当にいい戦いだったと思います。軽い雨のなかをドライ・タイアで走るなかでは僕たちが最速でした」

 琢磨はこのタイヤを履いたまま多くの周回数をこなしたが、カストロネヴェスのコースアウトで再び黄旗が提示。ここでNo.30を含む数台が新しいスリック・タイアに履き替えたが、やがてコーション中に雨脚が強まると、琢磨を含む多くのドライバーがピットに駆け込み、レインタイアに履き替えてコースイン。残り18周でイエローが解除されたとき、琢磨は15番手と遅れをとっていた。「タイアがまったくグリップしないので、アウトラップで僕はスピンしてしまいました。順位は失わなかったものの、特定のミクスチャー・セッティングで走行した為、エンジン・トルクが急激に立ち上がり、とても扱いにくいクルマになりました。僕たちにもチャンスがあると思いましたが、あまりにひどい状態です。タイヤの内圧があっていなかったのか、フロントウィングのセッティングが原因だったのかはわかりませんが、まるでマシーンがウェットを嫌っているような挙動です。グレアムと僕にできることはなにひとつなく、僕たちは次第に後退していきました」 琢磨は一時16番手まで転落したが、パト・オワルドをパスしたのに続き、ファイナルラップではジェイムズ・ヒンチクリフをオーバーテイクして14位となった。

 次戦はインディ500。そのプラクティスは火曜日に始まるが、数週間前にスーパースピードウェイで行なわれたテストでトップタイムをマークした琢磨は「とてもポジティブ」と主張する。「去年とは大きく異なるセットアップのマシーンを持ち込みました。レースが行なわれるまでこの作業が続くことを期待しています。待ちきれない気分ですね」

 インディ500ではいつものブルーと白のカラーリングを黄色と赤に変える。これは、RLLRのコ・オーナーであるマイク・ラニガンがオーナーを務める建設会社のMi-Jackにちなんだカラーリングである。「No.30のスポンサーであるMi-Jackを設立したのはマイクのお父さんです。悲しいことに、先日、マイクのお父さんが亡くなったので、そのことを悼み、Mi-Jackの代表的なコーポレートカラーである黄色と赤のストライプに塗り替えることにしました。この黄色いマシーンが速いことを祈っています!」

written by Marcus Simmons
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