RACEQUALIFYINGPRACTICE
COLUMN
COLUMN
Rd.1 [Mon,08 March]
Sao Pulo. Brazil

賽は投げられた
 23ヵ月の空白期間を経てレース復帰を果たした佐藤琢磨は、攻め甲斐のあるブラジル・サンパウロの市街地サーキットでエキサイティングかつチャレンジングなインディカーデビューを果たした。

 この週末のハイライトは、KVレーシング・テクノロジー・ダラーラ・ホンダをテストできたのは実質的にたった1回だったにも関わらず、ひどくバンピーなこの2.536マイル(4.058km)のコースで初開催されたイベントにおいて、琢磨が10位で予選を通過したことに他ならない。

 「レースに復帰できて、再びコクピットに戻ってこれたことが何よりも嬉しいですね」と琢磨。「公式なテストには先月バーバー・モータースポーツパークで開かれた1回だけしか参加できなかったので、準備は最低限でしかありませんでしたが、それでもシーズン最初のレースを迎えることができて、胸の高鳴りを抑えきれない気分でした。また、インディカー・シリーズというものを学ぶには、一歩一歩着実に進歩していかなければならないこともよくわかっていました」

 このコースからそう遠くないインテルラゴスが舞台となるF1ブラジルGPに何度も出場したことのある琢磨にとって、サンパウロはよく見知った街といえる。しかし、新設された市街地サーキットについては、わからないことがあまりに多すぎた。「とても興味深いコースでした。シリーズ中、もっとも長いストレートのひとつを持つコースですが、路面が信じられないくらいバンピーなことには本当に驚きました。テクニカル・セクションは上手く仕上げられていましたが、スタート・フィニッシュライン付近のコンクリート舗装は大いに疑問でした。そして予感は的中、最初のプラクティスではショッキングな事態に直面したのです。なにしろ、氷の上を走っているみたいなんですから! マシーンは4速ハーフスロットルでさえ横滑りしてしまううえに、スピンしかねないためスロットルを戻すことさえできなかったのです。だから、もし目の前で何かが起きたとしても、避けることさえできないという状況でした」

 琢磨がいうところの“これまで経験したなかでいちばんバンピーなコース”を舞台に、プラクティスでは様々な作業が進められていったが、2回目のセッションでは琢磨のマシーンにメカニカル・トラブルが発生し、貴重な走行時間を失うこととなった。その後、舗装状態の問題から予選は日曜日の朝に延期され、土曜日最後のセッションは急遽、公式練習として実施される。つまり、琢磨たちはセットアップをさらに煮詰めるチャンスを手に入れることができたのだ。

 「前の晩のうちに路面の改修作業を行なったおかげで、コースの印象はまったく別物になっていました。なにしろ、舗装の表面を厚さ1センチ分くらい削り取ってしまったんです」と琢磨。「予定になかったセッションが追加されて、新しいセットアップを煮詰める時間を手に入れられたのはものすごくラッキーなことだったし、これはとても上手くいきました。おかげで、より自信をもって、楽しみながらドライビングできるようになりました」

 市街地サーキットおよびロードコース(パーマネントサーキット)におけるインディカー・シリーズの予選方式は、次のようなスタイルを採る。まず、全車をふたつのグループに分けて最初の予選セッションを実施。続いて各グループのトップ6をピックアップし、上位12名によるバトルを繰り広げる。さらに、ここでトップ6に食い込んだドライバーにより、ポールポジション争いが行なわれるのだ。琢磨は自分の属するグループでトップ6に入り、トップ12が挑んだ次の予選で10番手に食い込んだ。満足すべき結果であろう。「ソフトタイアを履いたのは、このときが最初でした。なにしろ、使用できるタイアのセット数が限られているので、予選までは使えなかったのです」と琢磨。「これも新しい経験でしたが、とてもエキサイテキングでしたよ。予選結果は満足できるものでした」

 残念なことに、決勝レースに臨んだ琢磨はスタート直後に1コーナーでアクシデントに巻き込まれ、それ以上、走り続けることはできなかった。「ものすごく残念でした。ローリングスタートは初めての経験でしたが、これは上手くいきました。続いてカストロネヴェスとサイド・バイ・サイドになり、彼とともに先頭集団に追いついていきます。ところがターン1に向けてブレーキングしたところでアクシデントに遭い、そこで僕のレースは終わってしまいました。ターン1ではマシーンが密集していて、おまけにホコリっぽいコンクリート部分の直後だったため、コンクリートの細かい粒子が舞い上がって視界は最悪でした。しかもタイアやブレーキは全車冷え切った状態ですから、あのとき起きたことは残念で仕方ありませんでした」

 琢磨はいま、2週間後にフロリダ・セントピータースバーグで開催される第2戦を楽しみにしている。「ひどく困難だった土曜日の状態からしっかり立ち直るなど、ポジティブな要素はたくさんありました。サンパウロと異なり、セントピータースバーグについては誰もがよく知っていて、チームもコースのことやベースとなるセットアップのことは把握しているはずだから、とても楽しみです。きっと、いい状態でスタートできると期待しています」

written by Marcus Simmons
▲TOPへ

TOPページへ戻る
takumasato.com
(C)T.S.Enterprise Japan LTD.
All rights reserved.


Powered by:
Evolable Asia Corp.