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Rd.2 [Sun,24 March]
Austin

打ち砕かれ 期待
 テキサス州オースティン近郊のサーキット・オブ・ジ・アメリカ(COTA)で開催されたNTTインディカー・シリーズ第2戦において、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは本来の実力を発揮しきれなかった。けれども、レースが3/4ほど進行したところで提示されたイエローコーションと適切な戦略のおかげもあって、No.30 ダラーラ・ホンダを駆る佐藤琢磨は7位フィニッシュを果たすことができた。

 2012年以来、F1アメリカGPの舞台となってきたCOTAでインディカー・シリーズが実施されるのは今回が初めて。ただし、このコースではシーズン開幕直前にオープンテストが行なわれているので、どのチームにとっても今回が初走行だったわけではない。

 「1ヵ月ほど前に行なわれたオープンテストは僕たちにとって困難なものでした」と琢磨。「自分たちのいいところや速い部分も見つかりましたが、それも決して満足すべき内容ではありません。けれども、レースウィーク前にとてもいいデータ解析ができたので、いくぶんの希望も抱いていました。週末の滑り出しは決して悪くありませんでした。スピードもバランスも納得できるものでしたが、最初のセッションは赤旗や黄旗で何度も中断されました。オースティンはコーナーが20もある長いコースで、タイアのデグラデーションはとても大きいように思われました。このため自分たちのペースを見極めるのが難しく、実際のスピードがどの程度なのかを判断するのに苦しみました」

 「コーナーによってバランスのシフトが大きかったことも状況をわかりにくくしていました。ターン2では唐突的にバランスを崩す傾向がありますが、ターン3からターン8にかけてはアンダーステアがはっきりと表れます。ところが同じハイスピードのターン18では信じられないくらいのオーバーステアを示します。これは誰にとっても同じような傾向でしたが、僕たちの状況はどちらかといえば深刻でした」

 最初のセッションで19番手だった琢磨は、次のセッションで8番手へと前進。そして金曜日午後のプラクティスはまたもや赤旗で中断されたため、連続周回できたのは最大でも5周と不十分な状況だった。土曜日の午前中、琢磨の順位は13番手だったが、それでも十分とはいえない。ただし琢磨は「トップ10か、うまくいけばトップ8に入れそう」と期待していた。

 予選では琢磨が期待するような結果が得られるはずだったが、些細なミスにペナルティが科せられたセントピーターズバーグのときと同じように、またもや琢磨は予選を散々な成績で終えることになった。今回は赤旗の影響で散々な結果に終わったのだ。「ブラック・タイアを履いて臨んだ最初の走行で僕は3番手でした。続いてレッド・タイアに履き替えて走行を開始したところ、アタックラップを走り終える前に赤旗が提示されたのです。僕がアタックラップを終える2秒前に赤旗が提示されたので、コントロールラインを通過するときはすでにスロットルを戻していました。このラップを走りきっていれば、僕は5番手になっていたでしょう。つまり、セントピーターズバーグに続いて今回も第2セグメントに進出できなかったわけで、これにはとても不満を感じています」

 この結果、琢磨は自らの予選グループで7番手とされ、トップ6だけが走行できる第2セグメントには進めず、14番グリッドからレースに挑むこととなった。

 極めてコース幅の広いCOTAのターン1は様々なラインが選択可能で、このためインディーカー初のレースはスタートで大混乱に陥ると予想されていた。しかし、結果的にはほとんどのドライバーがここを無事に通過した。唯一、ザッハ・ヴィーチだけは接触を喫して続く複合コーナーのセクションでスピン。おかげで琢磨は13番手でオープニングラップを終える。そして7周目に最初のピットストップを行なうまで、琢磨はこのポジションを守り抜いた。

 「データが不十分だったので、デグラデーションがどのくらい深刻かは予想できませんでした。そこで、どのような展開になるか見極めたいと思っていました。スタートの出足は悪くなく、グリッドの順位を守りましたが、最初のスティント中、ブラック・タイアを履くドライバーのなかで僕たちがいちばん速かったと思います。だからといって、レッド・タイアを履くドライバーたちが順位を落としたわけではなく、むしろブラック・タイヤのデグラデーションはかなり大きいような印象でした。レース戦略については、あらかじめいくつかのシナリオを想定していました。多くのコースでは燃費走行を試すと2〜3ラップほどピットストップを引き延ばせますが、このコースは全長が長いので、かりに燃費走行をしても1ラップ余計に走るのがせいぜいといったところです。このため、全ドライバーが3ストップを選択しました。ピットストップのタイミングは多少であれば前後にシフトできますが、ほとんど決まったも同然の状態です。5周目を過ぎるとレースの動きはほぼ止まったので、僕たちはタイアを換えます。手元には2セットのレッド・タイアがありました」

 7周目にピットストップを実施した琢磨たちは、フィニッシュまでにあと2回、ピットストップを行なうことになる。それでもマーカス・エリクソンはイチかバチか琢磨よりも1周早くピットストップを行ない、ポジションを上げた。琢磨と同じ周にピットストップしたスペンサー・ピゴットも同様に先行。いっぽう、琢磨はマテウス・レイストを攻略して14番手となっていた。このスティントでは、琢磨を始めとする早めにピットストップしたドライバーが新しいタイアで追い上げた結果、ピットストップを引き延ばした先頭集団に追いつき、全ドライバーの半分ほどが数珠つなぎとなって走行する興味深い展開も見られた。ここで琢磨は2018年チャンピオンのスコット・ディクソンとスリリングなバトルを繰り広げたが、ふたりはペースの上がらないジャック・ハーヴェイと絡んで残念な結末を迎える。

 「エキサイティングなバトルでしたね」と琢磨。「僕はディクソンと並び、いくつかのコーナーを2ワイドで走り抜けていきましたが、その終わり方はとても残念なものでした。ジャックがトラブルを抱えていたかどうかはわかりませんが、とにかく信じられないくらい遅かったうえに、ライン上を走っていました。そしてディキシーと僕がターン14〜15を走っているとき、僕は2台に挟まれる格好となります。僕はジャックとディクソン両方と接触して大きく遅れました。これは非常に残念でした。なぜなら、これさえなければ僕は次のピットストップでグレアム(レイホール)の前に出られたはずだったのです」 まさに、そのとおり。しかも、琢磨のチームメイトであるレイホールは、琢磨とほぼ同じ戦略で戦って4位でフィニッシュしたのである……。

 次のピットストップで琢磨はサイモン・パジェノーに先行されたものの、サンティノ・フェルッチを追い越して14番手を守る。ところが、この後でパジェノーがピットストップを行ない、琢磨はピゴットをオーバーテイクしたので、60周のレースの40周目に最後のピットストップを終えたとき、琢磨は12番手となっていた。この直後、フェリックス・ローゼンクヴィストがピットロード入り口でクラッシュして赤旗が提示されたことで、早めにピットストップを行なうというレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのレース戦略が見事に花を咲かせることになる。ピット中のトラブルにより琢磨は21番手に後退したものの、残りのドライバーがイエロー中にピットストップを行なったため、レースが残り11周で再開されたときには9番手に浮上していたのだ。

 「最後のピットストップではエアジャッキが壊れてしまいました。このためメカニックたちの力でマシーンを持ち上げたのですが、ここでかなりタイムをロスしました。おそらく順位を3つは落としたと思います。もしもこの問題がなければ、僕たちは5位でフィニッシュできたはずです。いずれもしても、イエローに救われたことは間違いありません」

 この後も琢磨は激しいレースを演じた。リスタート後にエド・ジョーンズを攻略すると、続いてマルコ・アンドレッティに猛チャージ。そしてふたりはパト・オーワードに追いつく。メキシコ人ドライバーをオーバーテイクして6番手に浮上したアンドレッティに続き、琢磨も最終ラップのターン1進入でオーワードをパス。一旦は抜き返されたものの、ターン12で再び挽回し、琢磨は7位でチェッカードフラッグを受けたのである。「あのバトルでレースはエキサイティングなものになりました」と琢磨。「僕はマルコに2度アタックしましたが、彼のほうがタイアの状態がよかったようです。その後、マルコには引き離されました」

 次戦は4月7日にアラバマ州のバーバー・モータースポーツ・パークで開催される。「少なくとも、僕たちにとってはやりやすいでしょうし、エンジニアも自信を抱いています。昨年のレース以来、バーバーには足を運んでいませんが、冬のプログラムで開発を行なったので、マシーンは好調なはずです。僕たちがコンペティティブであることを心から期待しています」

written by Marcus Simmons
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