RACEQUALIFYINGPRACTICE
COLUMN
COLUMN
Rd.13 [Sun,29 July]
Mid-Ohio

不用意なアクシデント
 ベライゾン・インディカー・シリーズのミドオハイオ戦における佐藤琢磨のチャレンジは、レースが始まってまだ1周という段階でスピンに追い込まれたために不本意な結果に終わった。このとき琢磨は6番手を走行中だった。その後は、マシーンのペースが伸び悩んだこともあって次第に順位を落とし、No.30をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダは17位でフィニッシュすることになった。

 今回は上位フィニッシュが期待できるような状況ではなかったものの、マックス・チルトンの誤った行為は琢磨を憤慨させた。この接触により琢磨の希望は打ち砕かれ、チルトンにはドライブ・スルー・ペナルティが科せられたのである。「結果的に僕たちのマシーンが強力だったとは思いませんが、トップ6に入ってもおかしくありませんでした。少なくとも17位ではなかったと思います」 琢磨はそう結んだ。

 フリープラクティスの始めから琢磨は順調で、No.30は金曜日午前中のセッションで4番手につけていた。「アイオワ・スピードウェイのときと同じように、ミドオハイオで行なわれたテストには多くのチームが参加しましたが、僕たちはそうしなかったので、少し厳しい戦いになると予想していました。ところが、僕たちのペースは走り始めから好調で、マシーンはとてもいい状態でした。ミドオハイオはトリッキーなコースです。これは路面に関係していることですが、最初のプラクティスでは3秒も4秒も遅いのに、その後、路面コンディションはまるで市街地コースのように急速に改善されていきます。1周走るごとに、その変化が感じ取れるほどです」

 2回目のセッションで、琢磨とチームメイトのグレアム・レイホールは異なる方向性のセットアップを試す。このとき琢磨は16番手に終わったが、それでも「実り多い1日だった」と振り返った。このセッションには何度も“邪魔”が入った。「これほどたくさんイエローが提示されたセッションは記憶にありません。しかも、赤旗まで毎セッション提示されたのです! また、今年はダウンフォースが大幅に削減された結果、ストレートは10mph(約16km/h)以上も速くなり、このためブレーキングポイントは手前になりました。ただし、コーナリングスピード自体は、最終的
に以前と変わりないレベルに到達しました」

 土曜日午前中のフリープラクティスで琢磨は9番手となる。「さらに満足のいく内容でした。もう少し速く走れることもわかっていましたが、僕たちはどのセットアップがベストかを引き続き試していました。いっぽう、グレアムは自信を抱いている様子だったので、僕たちは彼に近いセットアップで走ることで合意します。これで大丈夫だろうと、僕たちは自信を持っていました」

 彼らの自信は予選で証明される。琢磨は自身の予選グループで3番手となり、第2セグメントからファイアストン・ファスト6に進出するかと思われた。ところが、琢磨にとっては不都合なタイミングで赤旗が提示され、結果的にレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングと並ぶ8番グリッドからレースに臨むこととなった。「最初のセグメントはミドオハイオでは典型的な状況でした。タイムが非常に接近していたのです。第2セグメントは、僕たちにとって散々な結果となりました。この状況には、多くのドライバーが不満を抱いていました。僕たちは硬めのブラックタイアでウォームアップを行ない、続いてレッドタイアに交換するタイミングをうかがっていました。ジェイムズ・ヒンチクリフがウォールにヒットして赤旗が提示されたのは、あと2、3コーナーで1ラップを走り終えるときのことでした。僕たちはイエローを見越してアタックすべきだったのかもしれません。ライアン・ハンター-レイはブラックタイアで4周してからレッドタイアでアタックし、速いタイムをマークしていたので、赤旗の影響を受けずに済みました。僕たちは長く待ちすぎ、おかげで黄旗につかまてしまいました。この状況には強いフラストレーションを感じました」

 決勝のスタートはドラマチックなものだった。いつもと同じように、ターン3のキンクを挟んだターン2からターン4に至るまでのストレート上でグリーンフラッグが振り下ろされ、直後のコーナーが続くセクションで琢磨はチルトンとレイホールのインを鋭く突いて8番手から6番手へと浮上したのだ。「いいスタートを切れました。チームメイトのグレアムにはちょっと近づきすぎてしまいましたが、ギリギリで問題のないレベルで、ターン5とターン6で数台をオーバーテイクしました。僕の前には5台がいるだけで、好結果が期待できる展開と思われました」

 2周目、ターン4で猛然と迫ってきたチルトンが琢磨をスピンに追い込んでしまう。「あれは本当に残念でした。チルトンがプッシュ・トゥ・パスを使いながら迫ってくることはわかっていました。僕はプッシュ・トゥ・パスを使いませんでしたが、それはレース後半までとっていこうと思ったからです。彼が迫ってくる勢いから、僕を攻略しようとしていることがわかりました。ただし、僕には自分のポジションを守り通す自信があったので、いつものように1台分のスペースを空けておきました。この後も、僕は同じことをたくさんのドライバーにしています。ところが、マックスはブレーキで僕に迫ると、コーナーの出口で僕に接触していったのです。これで僕はスピン、彼はペナルティを受けたのですから、どちらのレースも台無しになったといえます」

 起きてしまったことは仕方ない。きっと、イエローを活用したレース戦略で挽回を図ることもできるだろう。ところが、そうは問屋が卸さなかったのである。「プラクティスと予選ではあんなにたくさん黄旗や赤旗が提示されたのに、レースでは1回も出ませんでした! もしもイエローが出ていれば、僕たちはもう少し上の順位でフィニッシュできていたでしょうが、そのチャンスも手に入りませんでした」

 ウィナーとなるアレクサンダー・ロッシ以外が選んだ3ストップ作戦であれば、ピットウィンドウに大きな余裕があるのがミドオハイオの特徴といえる。琢磨たちは10周目に早めのピットストップを行ない、その後の黄旗で順位を取り戻す戦略を選択した。しかし、かりにイエローが提示されたにしても、第2スティントでブラックタイアを履いた琢磨は苦戦を強いられていた。「ブラックタイアを履いて、前にライバルがいない状態になれば、順位を取り戻すいいチャンスになったかもしれません。ところが、残念なことにブラックタイアを履いた僕のマシーンはあまり好調ではなかったのです。これには驚かされました。プラクティスでブラックタイアを履いたときは好調でしたが、レースに向けて僕たちはセットアップを変更していました。正直いって、本当にドライブしにくいマシーンで、グリップ・レベルはとても低く、コーナーではアンダーステアで、コーナーの出口ではスナップ・オーバー気味でした」

 チームメイトのレイホールも同じように苦しんでいた。彼には琢磨のような不運が降りかからなかったものの、チームのホームレースを9位で終えることになった。「残念です。チームにとってはホームコースで、たくさんの家族が応援にきていました。しかも、ここはホンダのホームレースでもあります。だから、マシーンがコンペティティブであることを期待していましたが、パフォーマンスを示すことができず、残念に思っています」

 第3スティントで琢磨は予選で履いたレッドタイアを装着。フィニッシュまで残りわずかとなった最後のスティントには新品のレッドタイアで臨んだ。おかげで、琢磨の近くで走行し、このレースで2位に入ったロバート・ウィッケンズと互角か、それよりも速いペースで周回したにもかかわらず、最終的にラップダウンとされてしまった。琢磨はマティウス・レイストをコース上でオーバーテイクし、最後のピットストップ中にトニー・カナーンの攻略に成功したが、それでも不本意な結果だったことには変わりない。

 ポコノ・スーパースピードウェイが舞台となる次戦は8月後半の開催なので、それまでにはしばらく間がある。「6月上旬のデトロイト以来、僕たちのペースは速く、いい結果を残してきました。このレースでその流れが途絶えたのは残念です。ただし、ポコノのレースは期待しています。ポコノでいい結果を残したことはありませんが、これまでいつもレースは楽しんできました。素晴らしいコースで、素晴らしい戦いが繰り広げられます。ポコノでは昨年もいい感触を掴んだので、僕たちがコンペティティブであることを期待しています。できれば、これまでの勢いを取り戻し、力強いレースを戦いたいですね」

written by Marcus Simmons
▲TOPへ

TOPページへ戻る
takumasato.com
(C)T.S.Enterprise Japan LTD.
All rights reserved.


Powered by:
Evolable Asia Corp.