RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.10 [Sun,24 June]
Wisconsin

ロードコースでの復権
 クラシック・ロードコースのロードアメリカで鮮やかな走りを見せた佐藤琢磨は、ベライゾン・インディカー・シリーズで今季ベストとなる4位フィニッシュを果たした。もっとも、レース半ばでコースから押し出されることさえなければ、おそらく3位表彰台を獲得していただろう。いずれにしても、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングとNo.30をつけたダラーラ・ホンダにとっては大いに勇気づけられる週末となった。

 ロードアメリカは誰からも愛されるサーキットだが、2016年にインディーカーのカレンダーに復帰して以降、琢磨にとっていい思い出はあまりない。「この週末を心から楽しみにしていました」と琢磨。「でも、このサーキットは必ずしも僕にとって験がいいとはいえません。ロードアメリカが嫌いなドライバーを見つけるのは難しいと思います。ここは、世界でもっとも速いコースのひとつで、狭いけれど、素晴らしくて、流れるようで、非常に高速で、思いっきり攻めなければいけないコーナーが続きます。しかも、それらが美しいウィスコンシンの景色になかにあるのです! ただし、このコースがカレンダーに復帰して以降、僕が幸運に恵まれたことはありません。そうしたなか、2016年は僕にとって最高の年でした。レースではかなり好調で、トップ6まで浮上しましたが、ピットでスピードリミッターのトラブルが発生したうえに、3回もペナルティを受けることになりました」

 レースの前週に行なわれたテストではいく分の進歩を果たしたものの、ファイアストンは2017年と同じコンパウンドをサーキットに持ち込んだ。「タイアによってフィーリングは大きく異なりました。けれども、僕たちは基本となるジオメトリーやダウンフォース・レベルを煮詰めたほか、ダンパー・セッティングも大いに役に立ちました。このコースはインディアナポリスのロードコースによく似ています。ストレートスピードを稼ぐためにダウンフォースは低めにするか、ダウンフォースを増やしてコーナーでラップタイムを稼ぐかのどちらかしかありません。いずれにしても、ラップタイムはとても近いものになります」

 レースウィークの初日はとても満足のいく内容となった。金曜日最初のフリープラクティスで琢磨は2番手。続くセッションでも9番手となった。「日曜日のウォームアップが省かれたため、シリーズは金曜日のプラクティスを15分延長することにしたのです。このため、金曜日は1回目が45分で2回目が60分とされました。僕たちはかなりたくさんのメニューを予定していましたが、実際には、走り始めた直後からバランスとスピードはかなりいい状態にありました。初日の競争力に関していえば、必ずしも満足していたわけではありませんが、やるべきことははっきりしていたので、チームの雰囲気はどちらかといえばポジティブでした。これまで、チームにとって最大の弱点はロードコースにありましたが、金曜日が終わったとき、僕たちはとてもハッピーで安心していられました」

 土曜日の午前中は11番手だったが、これはユーズドタイムでマークしたタイムだった。「もしもニュータイアを履いていたら、コンマ数秒はタイムを短縮できたはずです。どうやら、僕たちはいいバランスを見つけたようです。カルーセルは本当にとても長い右コーナーで、4速のまま5秒近くも回り込んでいく超高速コーナーです。ここではタイアのグリップが非常に重要になりますが、もしもバランスがよくなければ速く走るのは不可能です。僕たちのマシーンはユーズドタイアでもバランスが良好ですが、ニュータイアでの感触には驚かされました。バランスシフトが非常に大きくて、ハイスピードではアンダーステアに転じてしまうのです。しかもニュータイアではクリアラップがとれませんでした。いずれにしても、これらはすべていい情報といえます」

 予選の第1セグメントには信じられないほど激戦のグループから挑むことになった琢磨だったが、ここを5番手で通過すると順調に第2セグメントに進出。続くセッションでは7番手となり、わずか0,04秒差でファイアストン・ファスト6への進出を逃した! 「レッドタイアでのアタックで、僕はできることをやり尽くしました。ミスがあったとは思えません。クルマの挙動はまるでナイフエッジのようで、自分ができることはすべてしました。これほど小さな差でファイアストン・ファスト6に進出できなかったのは残念ですが、土曜日の午前中の結果から考えれば7番手は悪くないポジションですし、自分のパフォーマンスにも満足しています。それに、ものすごい激戦ですね。僕と含む6人のドライバーは、コンマ1秒差に全員が収まっているのですから!」

 レースのオープニングラップは琢磨にとって最高の展開となった。まず、ウィル・パワーはスタート直後にトラブルに見舞われる。次に琢磨はターン1でアウト側からセバスチャン・ブールデを攻略。続いてロバート・ウィッケンズがアレクサンダー・ロッシに押し出されて一時的にコースアウトを喫した。これで琢磨は4番手に浮上した。「楽しかったですよ」と琢磨。「ウィルは可哀想でした。彼が苦しんでいるのを見るのは耐えられません。ただし、それで僕が順位を上げるのは構いませんが! ターン1で僕はインサイドを見ていました。しかも、コースはとんでもなく狭くなっています。おそらく、マシーンを並べて停めるなら4台分のスペースがあるかもしれませんが、レーシング・スピードでは3ワイドでも非常にタイトです。しかも路面がバンピーなので、思い切ってドライビングしなければいけません。ここで僕はアウトサイドにわずかなすき間を見つけます。しかもブールデに比べるとかなり勢いがありました。さらに、ダウンフォースをできるだけ減らしていたのでストレートスピードの伸びがいいこともわかっていました。そこで僕は思いきってアウトサイドから彼を抜くことにしたのです」

 「ターン6ではウィッケンズとロッシがサイド・バイ・サイドになっているのが見えました。ロッシはロバートを押し出し、可哀想なロバートは縁石で大きく跳ね上がっていました。おかげで僕は労することなくポジションを上げました。このとき、ロッシはきっとペナルティを受けるだろうと思いました」

 トップ5は最初のスティントを同じペースで周回したが、このとき琢磨は、トップのジョセフ・ニューガーデンが燃費をセーブしているのか、バランスに満足がいかないのだろうと思っていた。「ペースは速かったのですが、僕が思っていたほどでもありません。僕たち5人は実質的に同じラップタイムで周回を重ねていました」

 琢磨がピットストップを行なったのは比較的早いタイミングだった。燃費は問題なかったものの、ダウンフォースが小さいせいでタイヤのデグラデーションが早く進行していたのだ。ただし、最後のスティントで新品のレッドタイアが使えることは間違えない。レース半ばに行なわれた2回目のピットストップまで琢磨は4番手を守りきったが、ここでドラマが起こる。スコット・ディクソンはピットストップを終えたドライバーたちをまとめて追い越していたのだが、ピットストップを先に終えていた琢磨はすでにそれなりのスピードに達していた。「僕にはディクソンが飛び出してくるのが見えました。アレックスとウィッケンズも一緒です。しかもかなりの混雑でした」 琢磨はウィッケンズをあっさり仕留めると、続いてアレックスに襲いかかった。

 「ターン5のアウトサイドから彼を抜かしにかかりました。2台は接近したままだったので、僕は少し彼にスペースを与えたうえで、ターン6でサイド・バイ・サイドになりました。ところが信じられないことに、彼はただ僕のほうに突進してきてマシーンをぶつけたのです。僕には逃げ場がありませんでした。グリーン上に飛び出た僕はウィッケンズに抜かされました。オープニングラップで彼にやったのと同じことを繰り返したのです。『こんなのバカげている!』と僕は無線に向けて叫びました。ところがインディカー・シリーズは何の行動も示しませんでした。このことに僕は本当に腹を立てています。激しい競争は構いません。でも、クルマをぶつけて順位を上げるのは許せません。それはバカげています。特にアレックスのような、優秀で定評あるドライバーがそんなことをするなんて……。彼にはそんなことをする必要はないんです。この周に僕はウィッケンズを抜き返さなければいけませんでした。それから何度もアタックを繰り返し、ロッシがトラブルに見舞われる直前にオーバーテイクしました。けれども、最大の問題はディクソンの先行を許してしまったことにあります。こんなアクシデントがなければ、彼のタイアが冷えているうちにオーバーテイクする自信がありました。なぜなら、僕のダウンフォース・レベルはとても低かったうえに、タイアは十分に温まっていてフルにグリップしている状態だったからです。僕のタイアが新しければ追い越せたはずですし、僕はストレートがメチャクチャ速かったので、決して追い越されることはなかったでしょう」

 さらにもう1度ピットストップを終えると、琢磨は4番手のままレースを終えた。「少なくとも表彰台を獲得するチャンスがあったことは間違いありません。あのアクシデントでレースを台無しにさせられたことがとても残念です。ピットストップはとてもうまくいき、レース中に起きたバトルはどれも素晴らしいものでした。イエローは一度も提示されず、したがって純粋にスピードの戦いとなりました。最高の週末でした」

 この成績は、今後のロードコースで琢磨とチームに前向きなスピリットをもたらすだろう。ただし、2週間後に開催される次戦はアイオワ・スピードウェイが舞台。「後半戦では自分たちが大きく進歩していると期待しています。アイオワは、僕がインディカーで最初にポールポジションを獲得したコースです。僕はアイオワが好きですし、ショートオーバルが好きです。ここのところはアイオワであまりいいレースを経験していませんが、できればコンペティティブになりたいと思います。とても楽しみです」

written by Marcus Simmons
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