RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.16 [Sun,19 September]
Twin Ring Motegi

甦った琢磨
 3年振りの母国レースとなったIZODインディカー・シリーズのもてぎ戦で、佐藤琢磨は12位完走を果たした。

 これまでのオーバルレースで最高のパフォーマンスだったとはいえないが、それでもオーバルでの結果としては今季最高位で、その意味から大きな満足感をもたらすことになった。

 もっとも、レースウィークエンドの始まりは悲惨なものだった。なにしろ、土曜日に行なわれた最初のフリープラクティスが始まって間もなく、ロータスのサポートを受けるKVレーシング・テクノロジーのダラーラ・ホンダはウォールと接触してしまったのだから。「とてもショッキングな出来事でした」と琢磨。「僕たちにとってもてぎ戦は非常に大切だったので、エンジンを始めとする多くの部品を新品にしていたのです。僕はインストレーションラップを終えて、徐々にペースを上げていきました。ところが3ラップ目のターン1でオイルラインのクランプが壊れ、ホースが完全に外れてしまったのです。僕にできることは、何もありませんでした」

 ここから漏れだしたオイルはファイアストン・タイアを濡らしていき、琢磨は330km/hでコントロールを失いウォールに激突、150Gもの衝撃を受けた。ところが、驚くべきことに琢磨が無事だっただけでなく、後でこのマシーンも修復されたのだ!

 「衝撃は非常に大きなものでしたが、ひどいダメージを受けた場所が一ヵ所に集中していて、他の部分はあまり壊れていませんでした。チームは、エンジン、ギアボックス、サスペンションなどのリアセクションをそっくり交換しましたが、この作業には、3台のマシーンを走らせるチームのメカニック全員が関わってくれました。彼らは一致団結してすばらしい仕事をこなし、マシーンを修復してくれたのです。おかげで、2回目のセッションに20分間だけ出走できました。これは非常に大切なことでした」

 したがって、レーシングスピードでもてぎを走ったのはわずか30周程度という状態で、琢磨は予選に挑まなければならなかった。「日本のファンの皆さんに、少しでもいいところを見せたいと思っていました。もてぎは非常にユニークなコースで、シリーズ中もっともチャレンジングなオーバルだといわれます。ターン1とターン2はフラットアウトでいけますが、バンク角が浅いので、ギリギリのドライビングとなります。ターン3ではスロットルを戻し、場合によっては2速にシフトダウンします。しかも、2回のセッションの大半を走行できなかったのですから、僕にとってはなおさら困難な状況でした」

 「予選トリムを施したマシーンでターン3の感触を掴む唯一のチャンスはウォームアップラップでした。少し不安定な感じでしたが、なんとか踏ん張ります。ターン3からターン4にかけてマシーンが少しスライドしましたが、これは気合いでねじ伏せました。チームのみんなで成し遂げた成果であり、僕は心から楽しみました。そして、ホッとしました!」

 琢磨が10番グリッドを得たことに、大観衆は深く満足している様子だった。決勝でも日本人ドライバーが活躍してくれる、と思えたからだろう。「本当にものすごかったですよ!」と琢磨。「とにかく、ものすごい声援でした。インディカー・シリーズの良さのひとつは、ファンとの距離が非常に近い点です。これは素晴らしいことですが、今回は皆さんの安全のことも考え、セキュリティを追加でお願いしました。それに、そうでもしなければ、パドックを歩けない状況でしたね(笑)」

 「スタートはとても慎重に、そして辛抱強いアプローチで臨みました。それが落ち着いてからはいいレースになっていきます。このコースでオーバテイクするのはとても難しいのですが、僕は何度も挑みました。ピットストップでは順位を落としましたが、コース上ではそれを必ず取り返しました」

 決勝中、琢磨はずっとバトルを演じ、オーバテイクを繰り返した。なかには、ひとりのドライバーを2度オーバテイクしたこともあった。そうして琢磨は、グレアム・レイホール、ラファエル・マトス、マリオ・モラレス、EJヴィソ、アレックス・タリアーニといったドライバーと戦い続けた。グリーンフラッグが提示されているときは必ず何かが起きたが、なかでももっとも大きな満足をもたらしたのは、最後のリスタートで、ヴィトール・メイラ、ヴィソ、タリアーニの3人をまとめて仕留めたことである。「レースはものすごくエキサイティングでした。今回のオーバーテイクのほとんどはターン3でのブレーキング競争になりましたが、オーバルコースではちょっと奇妙な感じでしたね。まるでロードコースのような感覚でした」

 KVレーシング・テクノロジーのなかでの最高位、そして日本人としての最高位を手にし、心地いい気分で戦い終えた琢磨は、10月2日にマイアミのホームステッド・スピードウェイで開催される最終戦に挑む。「今季はこれまで苦戦を強いられてきましたが、それには、すべてはっきりとした理由がありました」と琢磨。「もてぎでも初日に悪夢のような出来事が起きましたが、僕らはそこから立ち直りました」

 「このレースには、最終結果以上に大きな意味がありました。最高の成績が得られたとはいえませんが、僕はとても満足しているし、チームも喜んでくれている。それにファンの皆さんもとても楽しんでくれたようです。だからこのレースウィークエンドは成功だったと思います。そしてアメリカに戻り、いい形でシーズンを締めくくりたいと期待しています」

written by Marcus Simmon
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