RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.15 [Sat,04 September]
Kentucky Speedway

ホームレース直前の試練
 ホームレースのもてぎを間近に控えた佐藤琢磨にとって、もっとも避けたい事態はケンタッキー・スピードウェイを不本意な結果で終えることだった。であれば、KVレーシング・テクノロジーのダラーラ・ホンダとともに挑んだレースをたったの1周で終えことについて、琢磨が「本当に、ものすごく残念です」と語ったのは至極当然のことといえる。

 一週間前にシカゴランドで力強いパフォーマンスを発揮した琢磨は、同じ1.5マイル・オーバルのケンタッキーでもロータスのサポートを受けるマシーンがコンペティティブであることを期待していた。「よくケンタッキーはカンザスに似ているといわれます」と琢磨。「たしかに、形の上ではよく似ていますが、ケンタッキーはコースが少しバンピーなうえ、バンク角もやや浅いために難しく、路面も滑りやすいという違いがあります。実は、シーズン序盤に一度ケンタッキーを訪れていましたが、そのときは路面から水が沸き出していて走行できませんでした」

 事態をさらに困難にしたのは、予選前に行なわれる1回だけのセッションが1時間半に短縮されたことにあった。「ずいぶん涼しくて、少し湿度もありました。僕たちは通常のテストを行なっていましたが、セッションの半ば頃に雨が降り始めて中断となりました。したがって、予選トリムを試さないまま予選に挑むことになり、状況を予想するのが非常に困難となってしまったのです」

 しかも、その後、気温はさらに上昇したのだからたまらない。「日差しが出てきて路面温度が高くなりました。これでマシーンのバランスが変わってしまい、残念ながら苦戦を強いられることになりました。おそらくあのときが、オーバルの予選で経験したもっともアンダーステアの強いマシーンだったと思います。でも、そこで踏ん張ったおかげで、それほどグリッドポジションを落とすことなく予選を終えることができました」

 琢磨は予選を14位で通過すると、続くプラクティスセッションに出走した。「このセッションは1時間に延長されましたが、マシーンの調子は良好でした。ここで少しバランスを調整した結果、より自信をもってマシーンを操れるようになり、トラフィックのなかを走行しているときのフィーリングも改善され、バンプもよりスムーズに乗り越えるようになりました」

 とはいえ、決勝のコンディションはまたも変化することになる。「プラクティスはまだ日差しが少し残っていましたが、今回の決勝は完全なナイトレースとなります。辺りは真っ暗で、しかも路面温度が大幅に落ち込んだため、状況は一変してしまいました」

 本物のナイトレースに挑むのはこれが初めてだったうえに、長丁場のレースであることを意識していた琢磨は、非常にコンサバティブなスタンスでスタートに臨んだ。「ターン1とターン2ではグリップも良好で、僕はダリオ・フランキッティを追っていました。バックストレートを走っていると、目の前は2ワイドになっていましたが、僕自身は彼らとサイド・バイ・サイドになれるほど勢いがなかったので、一旦スロットルを戻しました。僕はダリオと充分な間隔を保っていましたが、ターン3の進入で突然リアが回り始め、一瞬にしてコントロールを失ってしまいました。僕はフラットアウトにもしていない状態だったので、これはショックでした」

 「フロントのロールバーはいちばん固い状態で、リアはいちばんソフトにしていました。ちょっとアンダーステア寄りになりますが、これがいちばんスタビリティの高い設定なのです。まったく攻めていない状況で、慎重かつ、順調なスタートが切れてたと思っていたのですが……」

 「オーバルレーシングでは稀に起きる、非常に不運な状態だったのだと思います。前を走っていた多数のマシーンの影響により、ターン3の進入でダウンフォースが大幅に減少したのでしょう。まるで巨大なエアポケットのようなもので、自分がそのなかに吸い込まれたと気づいたときには、もう手遅れなのです。走行データを見返して見ると、ターンイン中に一度大きく失ったダウンフォースが回復しだしているのですが、乱気流の影響で空力バランスがひどくフロント寄りとなってしまっていました。本来は全開で飛び込めるところで僕は70%しかスロットルを開けていなかったのにも関わらず、完全にグリップを失ってしまったのです」

 次戦は、琢磨の故郷である日本のもてぎで開催される。「自分の意識を集中させると同時に、これまで戦ってきたオーバルレースのことをもう一度、思い返しているので、もてぎではどんな最悪の事態になっても対処できると思います」と琢磨。「明日には日本に向けて旅立ち、いくつかのプロモーション活動を行なうことになります。是非、いいレースにしたいですね」

written by Marcus Simmon
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