RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.15 [Sat,26 August]
St.Louis

早すぎる結末
セントルイス近郊のゲートウェイで久しぶりに開催されたインディカー・シリーズの一戦で、佐藤琢磨は目覚ましい活躍を示すと期待されていた。ところが、実際には多重クラッシュに巻き込まれ、グリーンフラッグが提示された最初の周にしてリタイアに追い込まれたのである。No.26 アンドレッティ・オートスポーツ・ダラーラ・ホンダに乗る琢磨は予選を6位で通過。これで琢磨は3戦連続でホンダ勢トップのスターティンググリッドを得たことになるが、各ドライバーが隊列を組んで走行しているとき、まだタイアが温まっていなかったことからウィル・パワーがスピン、この影響でコントロールを失ったエド・カーペンターが琢磨に接触し、3台は揃ってウォールと衝突してレースを終えたのである。

プラクティスと予選の結果からレースでの好成績が約束されたも同然だった琢磨にとって、このあっけない幕切れは実に残念なものだった。そしてこの展開は、琢磨が週末を迎える前に予想していた事態とは大きく異なるものでもあった。通常、琢磨は誰よりも物事を楽観的に捉えるタイプだが、今回に限ってはコンペティティブに戦えるとは思っていなかったのだ。

ゲートウェイで最後にインディカー・シリーズが開催されたのは2003年のこと。興味深いことに、このときはエリオ・カストロネヴェスがトニー・カナーンを凌いで優勝を飾っている。ふたりのブラジル人はいまもベテラン・ドライバーとして参戦しているだけでなく、いずれも強豪に数え上げられているのだから驚くしかない。事前に実施されたテストでは、コースの路面に問題が起きて終了とされたため、琢磨は10周ほどしか走行できなかった。「新しい開催地を訪れるのはいつもエキサイティングなことなので、今回のレースも楽しみにしていました」と琢磨。「でも、最初に走った印象は『このコース、あまり好きじゃないかもしれない』というものでした。チャレンジングなコースでしたが、もはや古いコースで、路面が荒れているために何が起きるかわからないように思えたのです」

「オーバル・レースを戦うには、経験を積んで自信を培わなければいけません。また、僕たちのパッケージはショー8月には追加でテストが行なわれましたが、1チームあたり1台しか参加を許されませんでした。このとき、僕は総理大臣顕彰を受賞するために帰国していたので、アンドレッティからはライアン・ハンター-レイが参加しました。僕たちのパッケージは最適化されているとは言いがたい状態でしたが、エンジニアたちはコンペティティブに戦えるだろうと自信を見せていました」

レースウィークにゲートウェイを訪れた琢磨は、実質的にコースが別物に生まれ変わっていたことに気づく。「コース全体が再舗装されていたのですが、その仕事ぶりは本当に印象的なものでした。とてもスムーズで、まるでまっさらな紙のようでした」

フリープラクティスで琢磨は8番手のタイムをマークし、好調ぶりを印象づけた。「新しいコースなのに、1時間のセッションが1回だけしかありませんでした。僕たちはいろいろなテストアイテムを試しましたが、結果はとても良好でした。最初の40分間はスプリング・セットの選定や車高の調整といった全般的なことにあて、続いて予選シミュレーションを2回行ないました。ダウンフォース・レベルは予選で本当に使うものとは異なりますが、かなり近いものでした。走っていてとても楽しいコースでした。路面がスムーズになったおかげでマシーンの感触がダイレクトに掴めたほか、コースの規模もとても気に入りました。ターン1、2がハイバンクのタイトコーナーで、ターン3、4はRが大きくてバンク角は浅いので、『まるでミニ・もてぎだ!』とみんなは言っていました。ターン1の進入ではスロットルを戻さないといけませんでしたが、こういうチャレンジングなドライビングが僕は大好きです」

琢磨は好調を保ったまま予選を迎え、出走順が早めだったにもかかわらず6番グリッドを手に入れる。「最初から6番目の出走でしたが、文句はいえませんでした。なにしろ、ポコノではセッション終盤という素晴らしい出走順で予選に挑めたのですから。ただし、このコースでは出走順が予選結果を大きく左右しそうな気配でした。最初の8台か10台はまだ明るいうちにアタックをしましたが、残りのドライバーは日が沈んでから予選に臨むことになるからです。おかげで路面温度が大幅に低下し、グリップの向上が見込まれました。セッションの最初と最後で6度も温度は下がったので、速度にして1mph(約1.6km/h)くらいの差があったとしてもおかしくなりません。いずれにせよ、僕はやるべきことをやるのみです」

「ベストと思われる量よりもほんの少しだけダウンフォースを多めにしました。今回、ファイアストンは路面のことを考慮して硬めのコンパウンドを持ち込みましたが、おかげでタイアのウォームアップは難しくなりました。しかも、コースが全長1.2マイル(約1.92km)しかないので、計測1周目までにタイアを完璧に温めるのは不可能も同然でした。そこでダウンフォースを多めにしてタイアを温めやすくしたのです。自分のアタックにはとても満足しています。走行を終えたとき、僕は2番手だったので、あとから走るたくさんの速いドライバーに抜かされると予想していたのですが、最後までいいポジションを守りきりました。ミドオハイオ、ポコノ、ゲートウェイと3戦連続でホンダ最速のドライバーとなれたことも嬉しかったです。本当に最高の予選でした。僕のマシーンを担当したメカニック、それにエンジニアのギャレット・マザースヘッドも素晴らしい働きをしてくれました」

最終プラクティスを迎えても琢磨の好調ぶりは変わらなかった。とりわけ嬉しい驚きだったのが、このセッションにおけるコンディションが決勝レース中とほとんど変わらないと予想されたことにある。なにしろ、最終プラクティスは金曜日の午後9時に始まったのだが、決勝レースは土曜日の午後8時にスタートが切られることになっていたのだ。そして琢磨はこのセッションを7番手で終えることになる。

「これは本当に嬉しいことでした。予選までは好調でも、最終プラクティスまで自信を感じたことは、オーバルではこれまでありません。僕の好みどおりに仕上がったことはなく、トラフィックのなかで予想不可能な動きをするため、レース前にセットアップを変更することがほとんどでした」

「今回はとてもうまくマシーンを仕上げることができ、素晴らしい走りを見せてくれました。10日間のプラクティスが行なわれるインディ500を除けば、これほどいい状態まで煮詰められたことはありません。精神的にも肉体的にも、そしておそらく感情的にも、ベストな状態にあったと思います。トラフィックのなかでもマシーンの動きは信じられないほど良好で、ほかのマシーンに着いていったりオーバーテイクすることさえ可能でした。いままでプラクティスでこんなことはありません。レースが本当に楽しみで仕方ありませんでした」

「決勝では自分から希望して、少し軽めのダウンフォースに変更してもらいました。周りを見回したところ、スコット・ディクソンも似たようなセッティングだったので、彼をベンチマークにし、ほとんど同じダウンフォース・レベルにしました。ただし、スターティンググリッドは僕のほうが前です。ペンスキーはグリッドのトップ4を独占していたので、たとえ彼ら全員が完走しても、5番手には入れそうな状況でした。とにかく、すべてがいい方向に進んでいるように思えました」

最初のドラマはウォームアップ・ラップで起きた。トニー・カナーンがスピンしてウォールと衝突したため、イエローの状態でスタートが切られたのだ。そして5ラップ目にグリーンフラッグが振り下ろされると、琢磨はただちにカーペンターをパスして5番手に浮上。ところが、集団がターン1からターン2を通過しようとしていたところ、ポールポジションスタートのパワーがスピンし、この影響でカーペンターが琢磨と接触。No.26のマシーンはウォールにあたり、カーペンターはパワーのマシーンに乗り上げるという大事故を招いた。

「路面温度が非常に低かったせいで、ドライバーはみんなタイアのウォームアップに苦しんでいました。パレードラップの60〜90mph(約96〜144km/h)では、タイアに大きな負荷をかけられなかったのです。誰もが苦しんでいるなか、いきなりレーシングスピードでターン1に進入したので、みんなマシーンがスライドしていました。不運にも、ウィルがコントロールを失ったのは僕たちの直前でした。もちろん僕はこれに反応してスロットルを戻し、下側のラインに入りました。ところがエドは勢い余って避けきれず、軽く追突される格好となって僕はスピンに追い込まれたのです。僕にできることはなにもありませんでした」

接触の衝撃自体はそれほど大きくなかった。「僕はレースに復帰するつもりでしたが、マシーンの1ヶ所だけがウォールと接触したため、応力が集中し、ギアボックスに深刻なダメージを負っていました。メカニックは懸命に修復しようとしれくれましたが、かないませんでした。走っていれば好成績を収められたはずのレースだったので、その後を見ているのはとても辛かったです。本当に残念です」

今シーズンの残る2戦はいずれもロードコースのワトキンスグレンとソノマで開催される。高速コーナーのあるワトキンスグレンでのレースを多くのドライバーが楽しみにしているようだ。「きっとみんな同じだと思いますが、僕も大好きなコースです! ところで、ヨーロッパのレースを戦っていた当時、僕の強みのひとつは高速コーナーにありました。F1でチームメイトとなったジェンソン・バトン、ジャンカルロ・フィジケラ、アンソニー・デイヴィドソンは、みんな口を揃えてそう言っていました。いっぽう、アメリカにやってくる前から、僕はインディカー・ドライバーたちが高速コーナーを得意としていることは知っていましたが、『彼らにできるなら自分にだってできるはず』と思っていました。しかし、彼らは200mph(約320km/h)以上のスピードでコーナーを走りながらマシーンをコントロールできるのです。これには本当に度胆を抜きましたね(笑)誰もがこの高速コースのワトキンスグレンのレースを楽しみにしています。ここでは2週間前にテストを行ない、強い手応えを得ることができました。昨年、このコースではペンスキーが圧倒的な強さを見せましたが、僕たちは2番目に強力なチームになれるはずです。これまでのロードコースのレースよりもいい結果が期待できるでしょう」

「ここ数戦でたくさんのポイントを取り損ねたので、そろそろ挽回したいところです。ワトキンスグレンとソノマが本当に楽しみです」

written by Marcus Simmons
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