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Rd.14 [Sun,20 August]
Pocono

ポールポジションからの失望
佐藤琢磨がベライゾン・インディカー・シリーズ第14戦ポコノの予選でポールポジションを獲得したことで、インディに続く“500マイル・レース2連勝”への期待が広がった。琢磨は首尾よく連勝を果たしたのか? レースが始まって間もなく、マシーンのスピードが伸びない症状に見舞われていることが判明。このためチームの夢は無残にも打ち砕かれ、不本意な13位でフィニッシュすることになった。

アンドレッティ・オートスポーツはポコノのテストに参加しなかったため、予選前の走行は土曜日の午前中に行われた75分間のフリープラクティスのみとなった。しかし、チームはいつものように4台のマシーンで作業内容を分担。No.26ダラーラ・ホンダに乗る琢磨はここで6番手につけた。「プラクティスでは予定していたメニューをほとんどこなすことができました」と琢磨。「予選シミュレーションまで行う時間はありませんでしたが、僕たちがまずまずコンペティティブなことには満足していたので、予選でも力強く戦えるものと期待していました」

それでも、予選前には不安を拭いきれなかった。というのも、ポコノでは非常に低いダウンフォースで走行しなければいけないからだ。「おかげでターン1とターン3は少し怖いし、不安になります」 とはいえ、出走順が最後というのが少なくともアドバンテージになる。「こんなこと、初めてでした」 なにしろ琢磨ひとりが最後なだけでなく、アンドレッティの3人が揃って最後方の出走順となったのだ。アレクサンダー・ロッシだけは早めの出走となったものの、マルコ・アンドレッティ、ライアン・ハンター-レイ、そして琢磨はいずれもセッションの最終盤にアタックするというのだ。「予選はとてもチャレンジングなものになると見られました。しかも、トップドライバーでも苦しんだり、問題を抱えるなど、マシーンはナイフエッジで扱いにくそうでした。アレックスの予選はうまくいきませんでした。アタックの2ラップ目は1ラップ目よりもだいぶ速かったのですが、1ラップ目では自信を持ってターン1に進入することができず、スロットルを戻したようです。続いてマルコも苦戦しました。ハンドリングはほとんどニュートラルだったそうです。続くライアンはリアのグリップを失い、大クラッシュを起こしました。このため、僕たちはとても緊張しました。しかし、エンジニアは少なくとも何があったかを知ることができました。僕はショックを受けました。ピットレーンの出口で彼のマシーンがクレーンにつり上げられて戻ってききましたが、それが僕の目の前だったのですからね。しかも、僕たちはセットアップのフィロソフィーがとてもよく似ていて、共通の部品を多く使っていたのです」

「クルマがどんな反応を示すかを自分で確認しなければいけないと思いました。そこで僕はアウトラップとウォームアップ・ラップを全力で走ることにしました。ほとんどのドライバーはタイアのデグラデーションを考慮して最初はあまりプッシュしませんが、そうするとマシーンの感触を掴むことができません。にもかかわらず、続くアタックラップではターン1に思い切って進入しなければいけないのです」

「ところで、ポコノは僕が好きなコースのひとつです。ターン1ではバンクを駆け下り、インサイドを狙って225mph(約360km/h)で走り抜けます。ターン3ではバンクは実質的に無いに等しく、ハンドリングはニュートラルからオーバーステアになります。このためたくさんのことをアジャストしなければいけません。ウェイトジャッカー、アンチロールバー、さらにはドライビング・スタイルまで変化させなければいけないのです」

「そこでウォームアップ・ラップでは全力でプッシュしてどこまでいけるかを確認することにしました。このおかげで1ラップ目はかなり速いペースで走れました。タイアのデグラデーションは早くも始まっていて、2ラップのターン1ではほとんどウォールと接触しそうになりました。わずかにスロットルを戻し、修正しました。それでなんとか走りきり、いい勢いを保って2ラップをとても速いペースで走りきりました。僕の記録はちょっと驚きで、誰もが喜んでくれました」

インディ500で優勝してから3ヶ月。これで“500マイル・レース2連勝”への期待が大きく膨らんだが、盛り上がるのはまだ早過ぎたともいえる。「みんなが期待していることはわかりましたし、喜んでくれていることもわかりましたが、ポコノの500レースはいつもいい意味で予測不可能です。僕は、500マイル・レースで2連勝することを考えすぎないようにしました。それよりも、決勝レースに向けてマシーンをよりいい状態に仕上げることが大切だと考えていました。最後のプラクティスは30分しかなく、僕はまだマシーンに完全には満足していませんでした。十分に速くはなかったので、ダウンフォースが多すぎると推測されました。基本的な考え方は、最終コーナーで前のクルマに接近できる程度までダウンフォースをつけるというものです。スリップストリームが使えるくらい前のクルマに接近する必要がありますし、前を走るクルマがあっても全開でいけることが大切でしたが、それはできませんでした。もしもダウンフォースを減らせばコーナーで前のマシーンに接近できませんが、ストレートスピードは伸びます。そこで僕たちは、レースに向けてまずまずのダウンフォースにするとともに、最後のプラクティスのときよりも少しダウンフォースを減らしました。これでバランスもよくなることを期待していました」

琢磨は決勝で好スタートを決めたものの、ターン2の出口ではこのレースが厳しい戦いになることに早くも気づいた。「TK(トニー・カナーン)が後方から急接近しているのが見えましたが、早々とスロットルを戻して僕との間隔を調整していました。そしてターン2からターン3の間で易々と僕を抜き去っていったのです。このとき、僕たちのダウンフォースが多すぎることに気づきました。その後はタイアにデグラデーションが起こり、バランスがシフトするなどの問題に見舞われました。1周でひとつポジションを落とすくらいのペースで、僕は後退していきました。とても苦しい状況でした」

今回は決勝中に3回しかイエローが提示されなかったが、そのうちの最初のコーションとなった23周目までに琢磨は17番手へと順位を落としていた。そこで最初のピットストップでダウンフォースを減らし、フロントのフラップを少し起こしたが、それでも「どこかに問題があったようで、あまり速くはなりませんでした。いつまで経っても安心してドライブできるようにはならず、苦しみ続けました」と琢磨は語る。

最初のストップを終えると琢磨は13番手に浮上したが、レース周回数の大半は「中位グループの後方」で周回を重ねていた。その後、セバスチャン・サーヴェドラのクラッシュ、この直後に起きたジェイムズ・ヒンチクリフとJRヒルデブランドの接触でいずれもコーションとなり、ここでポジションを上げた琢磨は9番手となった。ヒンチクリフとヒルデブランドの事故に伴うイエローが解消された後の134周目には7番手まで挽回したが、間もなく順位を落としてしまう。レースが残り29周となったときに行った最後のピットストップを終えたとき、琢磨のポジションは13番手で、結果的にはそのままエド・カーペンターに続いてチェッカードフラッグを受けることになった。

「あるときには、リスタートで5台か6台をオーバーテイクしたこともあります。残り70周となった頃にはいいポジションにつけていたと思います。『OK、マシーンの状態はさっきよりよくなっているから、これでリセットされたはず』とも期待しましたが、他のドライバーもダウンフォースを減らして速くなっていったので、僕は逆に順位を落とすことになりました」

「とても不満が募る、そして長い500マイル・レースでした。13位フィニッシュは理想とはかけ離れた結果ですし、予選でいい成績を残していただけにとても残念です。レース後、マシーンにいくつか問題があり、100%の状態でないことが明らかになりました。これが決勝中に起きていたのです」

それでも琢磨は、シーズンが残り3レースとなった段階でもチャンピオン争いの7番手につけいる。“シーズン終盤3連戦”の最初を飾るのは、インディカー・シリーズが訪れるのは17年振りとなるセントルイスのゲートウェイ・モータースポーツ・パークだ。ただし、このコースで当初予定されていたテストはキャンセルされ、その後、1チームあたり1名のドライバーのみ参加できる条件でテストが実施された。このとき、琢磨は日本に帰国していたため、代わってハンター・レイがテストに参加した。「シーズン最後の3連戦がうまくいくことを期待しています。たくさんポイントを獲得して順位を挽回したいと心の底から願っています。セントルイスは僕にとって新しいコース、新しいレースですが、強力なパッケージで挑めることを期待しています」

ところで、先の帰国は琢磨にとって忘れがたいものとなった。安倍首相から内閣総理大臣顕彰を授与されたからだ。半世紀におよぶ歴史のなかで、同顕彰を受賞したのはわずかに33名でしかない。「首相官邸を訪れるなんて、信じられないような気分でした。しかも、僕はホンダNSXを運転していきました。スポーツカーに乗って首相官邸を訪れた人はこれまでいなかったようですね。 これまでに33人が受賞されましたが、普通であれば運転手付きのクルマで訪れるはずなので、そもそも自分でクルマを運転していった人もいなかったことでしょう。でも、僕は自分で運転していきたかったのです! 首相と会って顕彰を受賞するのは大変、光栄なことでした。しかも、モータースポーツ界で受賞するのは僕が最初だったそうです。レース界にとっても素晴らしいことで、これをきっかけにしてWith You Japanのチャリティ活動がさらに活発になることを期待しています。本当に光栄なことです」

written by Marcus Simmons
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