RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.13 [Sun,30 July]
Mid-Ohio

取り戻したパフォーマンス
もともとロードコースで多くの経験を積んできた佐藤琢磨だが、ここ数年のベライゾン・インディカー・シリーズに限っていえば、琢磨はロードコースで苦戦を強いられてきたといえる。その好例がミドオハイオで、インディカーで過ごした最初の2シーズン??2010年と2011年??を除けば、琢磨のペースは決して速くなかった。ところが今シーズンは大きく状況が異なり、No.26 アンドレッティ・オートスポーツ・ダラーラ・ホンダを走らせる彼は予選で3位を勝ち取ったのに続いて決勝でも5位に食い込み、チャンピオン争いの上位に留まったのである。

いっぽう、琢磨が今季加入したアンドレッティ・オートスポーツは、例年ミドオハイオで好成績を挙げてきた。そこで、このコースで事前に行われたテストをスキップし、代わりにワトキンスグレンのテストに参加することを決めた。昨年のワトキンスグレンで満足のいく成績を収められなかったことが、その理由である。「チームが実施できるテストの日数には上限が定められています。僕たちがワトキンググレン行きを決めたのは、昨年、ミドオハイオでは比較的コンペティティブな戦いができたからです。そのかわり、レースウィークエンドに先立ち、僕たちはファクトリーでしっかり準備を整えてからサーキットに向かいました」

「ミドオハイオがユニークなトラックであることは誰もが知っています。コースコンディションが改善していくスピードはとても速く、走り始めてから1、2時間もすると状況は大きく変化します。このためマシーンのセッティングを大きく変更しなければならず、テストの内容がレースウィークエンドの結果を左右することはあまりありません」

金曜日に2回行われたフリープラクティスで、琢磨がタイムシートの上位に名前を連ねることはなかったが、チームはプログラムにしたがって着々と準備を進めていた。「とても充実したセッションでした。アンドレッティの4台で分担し、たくさんの異なるプラットフォームやセッティングを試した結果、週末を通じて何をすべきかが徐々にわかってきました」

2回目のセッションではライアン・ハンター-レイがトップ。そして土曜日の午前中はアレクサンダー・ロッシが最速で琢磨が2番手となり、アンドレッティの1-2で幕を閉じた。ペースは堅調だった。「ライアンは昨年とほとんど変わらないセットアップで走りました。僕はもう少し別のことを試し、アレックスはアレックスで違うことを試しました。そうしたやり方が、とてもうまく機能したと思います。このような結果が予選での成績をそのまま示すわけではありませんが、ドライビングしていて楽しかったし、マシーンの状態もどんどんよくなっていきました」

とはいえ、琢磨たちは予選でもその速さを実証してみせた。最初のセグメントで琢磨はチャンピオンのサイモン・パジェノーとわずか0.0137秒差で2番手。次のセグメントでもグレアム・レーホールに続く2番手となった。そして最終セグメント、No.26のマシーンに乗る琢磨はペンスキーのふたり、すなわちウィル・パワーとジョセフ・ガーデンに続く3番手となり、ホンダ勢でトップのグリッドを手に入れたのである。

「コンペティティブな走りができる市街地コースではいつも楽しむことができましたが、ロードコースでは長年、苦2010〜2011年に所属していたKVレーシングの時代を再現するような結果となりました。ずいぶん時間がかかりましたが、とても満足しています! 予選の第1グループではとても強力でしたが、第2セグメントに向けてセットアップを大幅に見直しました。というのも、最初のセグメントは第1グループだったので、路面のグリップはとても低く、スプリングなどいくつかのものを変更していたからです。アンドレッティのドライバーで第1グループを走ったのは僕だけでしたから、チームメイトから学ぶことはできませんでしたが、第1グループだったおかげで第2セグメントまでにたくさんのことを分析できました。第2セグメントでの走りには満足しています。僕たちはとてもコンペティティブで、ファイアストン・ファスト6に進出できたことを嬉しく思っています。ただし、2台のペンスキーにはかないませんでした。彼らはなにか僕らでは分かり得ない特別な秘策があるような気がします。通常、ファスト6では第1セグメントか第2セグメントで履いた柔らかめのレッド・タイアを使います。ペンスキーの強さは、ユーズドタイアを履いたときの速さにあります。ときとして、彼らのペースは最初の走行とほとんど変わらないことがありますが、これは信じられないことです。さらに速くなることさえあるのですから、本当に驚きです。僕はもちろんフロントロウを手に入れたかったけれど、レースに向けては3番手もいいポジションです。それにホンダでトップだったことにも満足しています」

日曜日朝のウォームアップを4番手で終えた琢磨は「マシーンは快調」とコメント。そして決勝レースのときを迎えた。ミドオハイオのスタートはユニークで、ピットストレートではなくターン4に続くストレート上でレースは始まる。最初、琢磨は2番手のジョセフ・ニューガーデンに接近したが、やがて追い上げるレイホールから3番手を守る戦いを強いられる。これが第1スティントの間じゅう続いたが、3周目のターン4でレイホールが琢磨に接触し、大きくリアを滑らせた琢磨が見事なリカバリーを見せてポジションを守ったシーンも見られた。

「スタートはかなりよかったと思いますが、もう少しよくなる可能性もありました。というのも、スタートダッシュでオーバーブーストを起こしてしまったからです。僕たちは土曜日にエンジンを交換する事態に追い込まれたため、すべての部分が完璧に調整されているとは言い難い状況でした。とりわけ完全でなかったのがオーバーブーストに関するマッピング調整で、このためスタートでオーバーブーストを起こし、続けてECUがこれを感知してペナルティーとしてパワーダウンさせてしまいました。これさえなければ、僕はフロントロウのウィル・パワーとニューガーデンにチャレンジできたでしょう。それでも決して悪い内容ではなかったし、3番手を守ることはできました」

「グレアムとのバトルは楽しかったのですが、実際には彼のほうがずっと速かった。15ラップにわたって彼を抑え続け、おそらく4回はサイド・バイ・サイドになりました。あれは面白かったです。僕たちは互いをリスペクトしていたので、多少接触することはあっても結果的に問題はありませんでした。最後は、高速コーナーのターン1で僕が苦しんでいるところをオーバーテイクされましたが、その後はあっという間に引き離されてしまいました」

最初のピットストップは長引き、ここで琢磨はパジェノー、ハンター-レイ、ロッシ、エリオ・カストロネヴェス、スコット・ディクソンに先行されることになる。ただし、ロッシと接触したハンター-レイがスピンしたことで琢磨は8番手に浮上。いっぽう、トップを追いかけるパジェノーとロッシはリードを広げていったため、セカンドスティントでの琢磨は、バトルを演じるディクソンとかストロネヴェスの後方にほかの何人かのドライバーとともに足止めされることとなる。こうしたなか、琢磨はジェイムズ・ヒンチクリフからのプレッシャーを受けていた。「スコットはレッド・タイアに苦しんでいる様子で、僕とエリオはブラック・タイアを履いていました。ディキシーは僕たちの行く手を完全に遮っていましたが、僕も辛い状態だったので、大きくペースを上げる必要はありませんでした。苦しい戦いで、ここで大幅にタイムをロスしました。次のピットストップでディクソンがコースを離れると、僕とエリオはぐんとペースを上げることができました」

2回目のピットストップはまずまずで、琢磨は7番手に浮上。ただし、次のスティントでもペースは伸び悩んでしまう。続く最後のピットストップでは右フロント・タイアの交換に手間取ってヒンチクリフに続く8番手に後退。ただし、エド・ジョーンズがスピンしたためにこのレース唯一のイエローが提示され、集団は小さくまとめられることとなる。そして、レッド・タイアを履く琢磨は反撃を開始した。

「マシーンの状態はとてもよくなりました。僕は大きく順位を落としていましたが、運よくイエローとなりました。本当は、もっと早く出ているとよかったんですが! これで、ピットストップで失ったポジションを取り戻すチャンスが生まれました。目の前を走る3台はブラック・タイアを装着しています。つまり、ウォームアップには時間がかかると予想されたので、僕にとってはチャンスです。そこでリスタートではアグレッシブにドライブしました。最高に楽しかったですよ! ヒンチクリフをオーバーテイクしたときは、ターン5はアウトを、続くターン6はインを走行しました。その勢いを殺すことなく前車に追いつくと、ターン2のブレーキングでアレックスを仕留めます。その後のストレートではエリオもパスしました」

これで琢磨は5番手。残る18周、琢磨はパワー、レイホール、パジェノーを含む2番手グループの後方につけていた。そしてトップのニューガーデンはぐんぐんとリードを広げていった。「ニューガーデンひとりが先行し、ウィルとグレアムがバトルするいっぽうで、僕はパジェノーに追いつこうとしていました。ただし、僕たちのペースは似たようなものだったので、何かを仕掛けることはできませんでした。予選が3位で決勝は5位というシナリオは理想的とはいえませんが、タフなレースでした。これでロードコースでの勢いがつき、ワトキンスグレン、そしてポイントが2倍になるソノマを力強く戦えることを期待しています」

インディカー・シリーズの次戦はポコノ・スーパースピードウェイが舞台だが、その前に琢磨はワトキンスグレンのテストに臨むことになる。では、テストの前は? インディ500で日本人初優勝を果たした琢磨は日本に帰国して安部首相から内閣総理大臣顕彰を授与されることになった。1966年に創設されたこの顕彰は「国家、社会に貢献し顕著な功績のあったもの」に送られるもので、琢磨はその33番目の受賞者となる。「顕彰をいただけることになり、とても栄誉に思うと同時に嬉しく思っています。すべてのファン、スポンサー、チームのメンバー、そして僕を支えてくれるすべてのスタッフに心からお礼を申し上げます。今後もモータースポーツの振興に努力するとともに、さらに大きな目標を達成するために頑張ります!」

written by Marcus Simmons
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