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Rd.4 [Sat,29 April]
Phoenix

不可解なアクシデント
フェニックス・インターナショナル・レースウェイで行われたインディーカー・シリーズ第4戦は、アンドレッティ・オートスポーツ・チームから出場した4台が揃ってリタイアに追い込まれるという厳しい戦いとなった。リタイアした4人には当然、佐藤琢磨も含まれていて、彼は250周で競われた決勝の136周目にグリップを完全に失ってレースを終えたのである。

この週末を通じて琢磨とNo.26ダラーラ・ホンダは苦しみ続けた。なにしろ、最初に行われた2時間一本勝負のプラクティスでさえ、琢磨は17番手に沈み込んでいたのだから……。「フェニックスでは2月にオープンテストが行なわれました」と琢磨。「2日間のテストで僕たちは大きな進歩を遂げ、レースセットアップのパフォーマンスにはとても満足していたのですが、予選トリムはうまくいかなかったのでセットアップを変えなければいけませんでした。一部の領域では開発も必要でした」

「プラクティスが2時間もあったと聞くと、通常のオーバルコースよりも走行時間が長かったように思われるかもしれませんが、レース直前のウォームアップ走行がないので、この2時間で予選用セットアップにくわえて決勝の準備もしなければいけません。ところが残念なことに、この日はとても風が強く、しかもコースは砂漠の真ん中にあるので、たくさんの砂が舞い込んできました。こんな状態のオーバルコースを見るのは、これが初めてでした。その様子は初めて開かれたときのバーレーンGPにそっくりで、最初のプラクティス中に吹き込んできた砂が、まるで水しぶきのように走行する車から舞い上がっていたのを思い出しました。ハンドリングのセットアップも、強い風のおかげで困難なものとなりましら。190mph(約304km/h)のコーナリング中に気まぐれな風が吹き荒れるのですから、ドライビングはさらに難しくなります。もちろん、コンディションは誰にとっても同じですが、僕たちはまだ予選シミュレーションを終えていなかったので、やや先が見通せない状態でした」

琢磨にとって不運だったのは、予選での彼の出走順が6番目で、アンドレッティのなかではトップバッターとなったことにある。おかげで、チームメイトから事前の情報を手に入れることもできなくなった。さらに悪いことに、日が沈んで気温が下がり、タイヤをウォームアップしにくい状況に追い込まれてしまう。このため、あとになって考えれば「必要以上にコンサバティブなセッティング」を選択したと琢磨は振り返る。「ハンドリングはよかったし、ドライビングもしやすいと感じました」と琢磨。「ただし、そこからどのくらいダウンフォースを減らすことができるかは判断できませんでした。それに、コースコンディションは次第によくなりそうだったので、あとからアタックするドライバーよりも速いタイムをマークするのは難しいと思われました」 実際、琢磨は予選の最終結果で18位まで後退することになった。

レースが始まると、オープニングラップで多重クラッシュが発生する。しかし、琢磨の直前を走行していたグレアム・レイホールとスピンしたマックス・チルトンのマシーンがどこに向かっていくかを鋭く予想した琢磨は、この事故に巻き込まれずに済んだ。「これほどバンク角が急なオーバルコースでは、コーナーと言うよりも、バンクに入ると目の前は壁にしか見えないこともあります。そんなときは、左にステアしているようにはまるで思えず、上に上がっていきそうな感覚ですね! 白煙が上がり、火花が飛んで破片が飛び散ったのが目に入ったとき、僕たちはかなりのスピードに到達していました。間際になってマックスがスピンしながら下のほうに下がっていくのが見えましたが、その後、今度は上に上がっていきました。それと同時にグレアムが向かっているその軌跡が、マックスと交差しそうだったので、僕は寸前で左側のインサイドに進路を変え、アクシデントを避けることができました。ほんのわずかな差でしたが、幸運な判断でした!」

これで琢磨は13番手となったが、リスタート以降は、なかなか順位をあげられなかった。「少なめのダウンフォースで戦うことにしました。なぜなら、僕たちは追い上げなければいけなかったからで、しかもフェニックスはオーバーテイクが難しいコースとされています。僕たちがもっともダウンフォースの少ないマシーンの1台だったことは間違いないでしょう。これでいいレースになることを期待していました」

「最初のスティントは厳しいものとなります。このときはまだ完全に日が沈んでいなかったので、気温もまだいくぶん高いコンディションでした。ここではポジションを守り、レース後半で状況がよくなることを期待していました。ただし、ハンドリングはルース(オーバーステア)で、スライドも多めだったので、フロントのグリップを落とすことで対応しましたが、厳しい状態は変わらず、オーバーテイクはできませんでした。前のクルマの1秒差まで迫ると、タービュランスに巻き込まれてそれ以上、近づくのがとても難しくなったからです」

それでも、チームは2回目のピットストップまで状況を好転させようとして努力したが、このピットストップを終えた直後のアウトラップで琢磨はクラッシュを喫してしまう。「とても奇妙なことが起こりました。アウトラップでターン3に向かっているとき、マシーンがまったく曲がってくれなくなったのです。アペックスにはスロットルを戻して近づいていきましたが、いつもとまったく同じことしかしていません。ところが、まるでフロントがグリップせず、僕は路面の汚れた部分に進入すると、そのままターン4のウォールまで上がっていったのです。これまでたくさんオーバルを走りましたが、こんなことが起きたのは初めてです。アレクサンダー・ロッシもまったく同じ問題でウォールに接触し、ライアン・ハンター-レイにも同じことが起きましたが、彼はあと数cmというところで接触から免れました。つまり、アンドレッティのドライバーはみんなこの奇妙な状況に陥ったわけで、これで僕のレースは幕を閉じました。とても残念です」

フェニックスが終わると、チームはもっとも重要な“マンス・オブ・メイ”をインディアナポリスで迎えることになる。その皮切りはロードコースで行われるインディ・グランプリで、5月後半にはスーパースピードウェイであの伝説的なインディ500が催される。ただし、その前にセントルイスのゲートウェイ・オーバルでテストが行なわれる予定。このコースでインディカーレースが行われるのは久しぶりのことだ。

「ゲートウェイに行ったことはありませんが、僕の大切な友人でサポーターでもあるロジャー安川はここでレースに参戦した経験があって、エキサイティングなショートオーバルだと教えてもらいました。だから、いまはとても楽しみにしています。このテストに続いてはインディGPがあります。バーバー・モータースポーツ・パークでは、僕たちのマシーンは悪くありませんでしたが、さらに速くさせる必要があります。そのためにはロードコース用のセッティングをさらに進化させなければいけません。インディGPのコースはとてもユニークですが、僕たちがこのコースでもコンペティティブで、いいレースになることを期待しています」

written by Marcus Simmon
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