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アイオワ・スピードウェイは佐藤琢磨の好きなコースのひとつだが、この7/8マイル・オーバル(全長約1.4304km)で琢磨が好成績を残したことはほとんどない。2013年に琢磨がAJフォイト・レーシングに加入して以来、ベライゾン・インディカー・シリーズのなかでもっともラップタイムが短いアイオワでは、いつも満足のいくパフォーマンスが発揮できずに苦しんできた。今回もそうした状況に大きな違いはなかったが、少なくともNo.14ダラーラ・ホンダは、琢磨にとってこのコースでのベストリザルトにあたる11位完走を果たしたのである。
レースの1週間前、AJフォイト・レーシングはNo.14とチームメイトであるジャック・ホークスワースのNo.41をアイオワに持ち込んで事前のテストを実施し、セットアップの面で大きな進化を遂げた。「とても大きな成果が得られました」と琢磨。「テスト用アイテムを試すうえでいい機会となりました。2010年に初めてアイオワ・スピードウェイでレースして以来、僕はこのコースがずっと好きでしたが、いい結果が得られたことはありませんでした。また、いい状態のマシーンを手に入れられたこともなかったので、たくさんのアイテムを試すのはとても大切なことでした。最近変更になったエアロパッケージについては、特にその傾向が強かったといえます」 「僕たちはいくつかの大きく異なるセットアップも用意し、どの方向に進むかを決めることにしました。この結果、昨年までとは大幅に異なるセッティングを採用することになります。もう少し細部を煮詰める必要がありましたが、それでもとてもコンペティティブに思えました。もちろん、時間はいつでも十分ではありませんし、テストで使用できるタイアのセット数には制限があります。だから、すべてを試すことはできず、時間切れで変更できなかったものもありました」 もっとも、そうした成果をフリープラクティスの結果に結びつけることはできず、琢磨は19番手に終わる。「僕たちは前回のテストで見つかったマシーンの進化版を持ち込みましたが、ここでセットアップに関連する問題が見つかります。これは残念でした。このセットアップで大きく前進できるはずでしたが、問題があったためにあまり多くのことを学べませんでした。この影響で、はっきりと状況がわからないまま予選に臨むことになりました」 アイオワのコースでは路面のあちこちに残る補修痕が問題を引き起こす。トンネルがあるターン2部分にできたバンプは再舗装が実施されたほか、ターン3とターン4のバンプについても補修作業が行われた。「ところが、状況はさらに悪くなっていました! おかげで、とんでもなくバンピーで、ひどくトリッキーでした。いちばん下のレーンはもっともグリップが良好で、走行距離も短くなりますが、最近実施されたダウンフォース削減の影響により、予選では特にこの問題がクローズアップされるようになりました。本当はいちばん下のレーンを走ったほうがいいのですが、そうするとあまにもバンピーな路面によりグリップレベルが低下してしまうのです。プラクティスではホンダ勢の何名かがローダウンフォースを試したところ、スピンアウトを喫しました。つまり、ダウンフォースは少し多めにしたほうがよかったのです。しかも、気温が高ければ、その傾向はなおさら強くなります」 「ダウンフォースを大幅に削れば空気抵抗を抑えることもできますが、するとバンプを避ける為に2番目のレーンを走らなければいけません。ここでは高いスピードを維持できますが、走行距離は長くなります。したがって、これはストラテジーとドライバーの好みによって決めるしかありません。ただし、僕たちは安全策を採りました。なぜなら、プラクティス中にしっかりした予選シミュレーションできなかったからです。また、フェニックスでの苦い経験があったので、マシーンを失うわけにはいきませんでした」 それでも琢磨はプラクティスから大幅な進歩を遂げ、予選で13番グリッドを獲得した。「フリープラクティスで発生した問題を解消していたので、マシーンのメカニカルな部分は良好な挙動を示しました。ただし、ダウンフォースは大きすぎるうえ、空力バランスも最適とは言いがたい状態でした。ハンドリングはアンダーステアが強かったものの、スタビリティは良好で、いちばん下のレーンに留まるのに必要となるアグレッシブなドライビングができました。僕たちの出走順は5番手で、その段階では2番目に速かったから、とても順調のように思えました。ところが、予選前にストックカーのプラクティスが行われたうえ、ストックカー用タイアのゴムと僕たちが使うコンパウンドの相性は決してよくないようです。この影響で、予選で最初の8台が走行して以降は路面の状態が急速に改善されました。僕たちが走ったときはとてもスリッパリーでしたが、その後は大きく回復していったのです」 この次の走行セッションは、レースを想定して実施される金曜日最後の走行となった。1週間前に行われたテストでは、琢磨の周回のほとんどは単独走行だった。なぜなら、「まず必要となるのは的外れでないクルマを用意することで、あわせてコンディションが安定していることも比較テストをするうえでは重要」となるからだ。したがって、このウォームアップは琢磨がトラフィックのなかを走る最初のチャンスとなった。「ただし、クルマの状態が完全に満足できるものではなかったので、少し心配でした。ひとりで走っているときはコンペティティブなのですが、トラフィックのなかではバランスがとてもトリッキーに感じられたのです。このときはマシーンをまだ完全に仕上げることはできませんでしたが、どのようになるかについて、目標を定めることはできました」 この状況は決勝レースでも大きく変わらなかった。1周目に琢磨はひとつポジションを落とすが、すぐにセバスチャン・ブールデをパスしてもとの順位に戻る。さらにこのスティントの後半ではチャーリー・キンボールを仕留めて12番手に浮上。ところが、その直後には3つポジションを落としたうえ、トップを独走するジョセフ・ニューガーデンにラップされて周回遅れとなってしまう。そして誰もがグリーン中にピットストップを行うなか、琢磨は15番手を堅持したものの、ほどなく2周遅れとなったうえにキンボールの攻略を許すこととなる。 このレース最初のイエローが提示されたのは、この後のこと。ここで琢磨は1周遅れまで挽回したものの、ピットストップでは18番手に後退する。「スタビリティはあまりよくなく、最初の何スティントかはオーバーステア傾向がとても強い状態でした。そこで調整を行いましたが、レースが残り1/3になるまで、トラフィックでの挙動には満足ができませんでした。とても長いレースで、自分のポジションを守ることで精一杯でした。2メーカーの間にはパフォーマンスにはっきりとした差があり、ライバルと同じダウンフォースとグリップを得ようとするとドラッグが大きくなってしまい、トップスピードは伸び悩みました」 「ラップダウンとなっているときにイエローが提示された場合、ピットレーンがオープンになってリーダーがピットストップを行うと、その後方を走るドライバーはウィブアラウンドといって、セーフティーカーを追い越すことで1ラップを取り戻すことができます。けれども、アイオワは1周に18秒しかかからない短いコースのため、ウェイブアラウンドを受けた直後に自分がピットストップを行うとペースカーにラップされる前に作業を終えられないことがあります。そこでもう1周多く、つまりウィブアラウンドで2周を回ったうえでピットストップを行い隊列に戻ることで確実にラップバックができます。ところが、何人かのドライバーはウィブアラウンド1周目にピットストップを行い、ペースカーにラップされるまえに作業を終えました。僕たちはこれができなかったので、先にピット作業を行った彼らの後ろに隊列する為、いくつか順位を落とすことになります。しかも、それが2度もあったのでとても苦しみました。それでも1ラップを失うことはありませんでした」 この後、琢磨はチャンスを掴む。レース中に3度提示された最後のイエローが提示される直前、数人のドライバーが最後のピットストップを行った。しかし、琢磨はイエローになってからピットストップを実施したおかげで11番手に浮上。そして最終的に2周遅れにはなったものの、最後の40周はこのポジションを守ったままフィニッシュを迎えたのである。「11位は悪くないと思います。難しいレースでしたが、まずまずの成績を収めることができました。僕たちはたくさんのことを学びました。最後のスティントでは、同じラップを走る何人かのドライバーと一緒に走行する機会がありましたが、彼らに追い付いていけるほど僕は速くありませんでした。とはいえ、全般的にいえば昨年から大きな進歩を遂げることができ、これまでよりもコンペティティブな戦いができるようになったので、今後もさらに努力を続けるつもりです」 今週末、琢磨たちは国境を越えてトロントを訪れ、今シーズン最後の市街地レースに挑むことになる。「とても忙しいスケジュールになるでしょう」と琢磨。「僕はトロントが大好きですが、トロントは僕のことを嫌っているとずっと思っていました! 最近の数年を除けば、いい成績を残すことができなかったからです。トロントはとてもトリッキーなサーキットで、非常にバンピーで、路面にはいくつもの補修痕があり、様々な舗装が混在していますが、素晴らしいコースです。トロントの街も魅力的で、おしいレストランもありますし、カナダのファンはとても熱狂的です。僕たちのパッケージは強力だと思うので、シーズン最後の市街地レースでいい成績を残すことを期待しています」 written by Marcus Simmons |