RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.11 [Sun,25 July]
Edmonton City Centre Airport

トンネルの出口は見えたか?
 今季初めてIRLインディカーシリーズに挑戦している佐藤琢磨は、ようやく、本当にようやく、カナダの空港内に設けられたエドモントンで9位に入り、琢磨であれば勝ち取って当然と思われていたトップ10フィニッシュを果たしたのである。けれども、不運が続いているという意味ではこれまでと変わらなかった。なにしろ、レースが残り3周になったところでスピンに追い込まれ、もっといい成績を残すチャンスをフイにしていたのだから。

 それでも、ロータスのサポートを受けるKVレーシング・テクノロジーにとって過去最高の成績を収めた一戦について、琢磨は「いいレースだった」と語る。

 狭く窮屈なトロントの戦いを終えたインディカー・チームの一行は、カナダ西部のアルバート州にあるコース幅の広いエドモントンに辿り着いた。「ここに似たサーキットはどこにもありません」と琢磨。「いちおうストリート・コースということになっていますが、コーナリングスピードはかなり速いし、ここではロードコース用のタイアを使います。それにバンプがものすごい! インフィールドセクションは、いいリズムに乗れて走れます。でも、14のコーナーを60秒そこそこで走り抜けるから、いつも曲がっているような感じがします。それはストレートも同じで、最初は、幅が広すぎてどこを走ればいいかわからなかったくらいです。ストレートでも次のコーナーに備えて右から左へと移動するので本当に忙しいコースです」

 プラクティスは金曜日に2回と土曜日に1回の計3セッションが設けられていた。何度か軽いコースアウト──そのうちのひとつは、グリーン上に飛び出して大きな水たまりに入ったというもの──を経験したが、琢磨は好調で、2回目のプラクティスでは5番手につけていた。「まるで洗車場に行ったみたいでしたね! 僕にとってはどこも新しいサーキットなので、最初はコースを学ばなければいけないし、どうしても周回数は多めになります。だから、路面にラバーが載って、ほとんどのドライバーが好タイムを記録するセッション終盤は、いつも使い古したタイアしか残されていませんでした。けれども、2回目のプラクティスは何度もイエローフラッグが出てセッションは中断となったので、たまたま僕がニュータイアを使うタイミングが遅くなり、速いタイムを記録できました」

 残念ながら、その勢いを予選に生かすことはできなかった。ワールドカップの予選トーナメントにたとえれば、琢磨は“死のグループ”の犠牲者になったといえるだろう。「ペンスキーが3台、ガナッシのダリオ・フランキッティ、それとジャスティン・ウィルソンにポール・トレーシー……。もうひとつのグループに比べると、僕が組み込まれたグループは強敵揃いでした。しかも、僕たちのグループが先に走ることになっていたので、コースはまだグリーンな状態でした」

 琢磨のグループ内の順位は7番手。1/10秒にも満たない僅差で予選2回目に出走できるトップ6入りのチャンスを逃し、13番グリッドからのスタートが決まった。ただし、これは第2グループであれば余裕で予選2回目に進出できるタイムだった。しかも、後から走る第2グループのほうがコースコンディションは明らかに良かったのである。「自分にできることはすべてしましたが、温度が低く滑りやすい状況に、僕たちのマシーンはうまく対応できませんでした。とても残念でした」

 この影響で、琢磨はレース序盤に長い渋滞の列に呑み込まれることとなる。琢磨はトーマス・シェクターが先導するグループの一員として14番手を走行していたが、わずか10周でシェクターがピットに入ると、まずは同郷の武藤英紀を仕留め、9秒あったギャップを見る間に埋めてマルコ・アンドレッティの背後に迫り、最初のピットストップまではマルコとバトルを繰り返した。ピットストップを終えてからも、琢磨はアンドレッティ、モラレス、トレーシーらと刃を交えたが、決して楽な展開ではなかった。

 「バトルやオーバーテイクが満載のエキサイティングなレースでした。とても楽しかったですよ。第2スティントでは、タイアの空気圧設定を読み違えたこともあり、苦しみました。タイアの温度が上がってしまえば問題なかったのですが、これによってハンドリングのバランスがガラッと変わってしまうのです。スティント中盤に向けて症状は改善されましたが、リスタートのたびに辛い状況になりました」

 最後のピットストップを早めに行なった琢磨は、オルタネートのレッドタイアを手に入れると、クリアなコース上を猛烈なペースで追い上げていった。このため、ピットストップによる順位の入れ替えがひと段落した時点で、アンドレッティ・オートスポーツのライアン・ハンターレイの直後につけ、8番手までポジションを上げていた。ところが、残念なことにハンター・レイの近くには彼のチームメイトであるダニカ・パトリックとトニーカナーンが控えていたのである。

 「タイアを履き換えてからはペースも上がり、マシーンのバランスにも満足していました。その時点で僕は最速のラップタイムを記録しており、全体でも4番手のタイムをマークしながらハンター・レイと争っていました。けれども、僕たち2台がアンドレッティのマシーンをパスするとき、ダニカはライアンに道を譲ったのに、僕はブロックしてきたのです。これはアンフェアなことです。僕は無線を通じて、チームに何が起きているのか訊ねましたが、返ってきた答えは『いま働きかけている』というものでした。オフィシャルが何をしているのかもわかりませんでしたが、いずれにせよ、僕は15ラップにわたって行く手をふさがれました。とても残念なことです」
残り3周で最後のリスタートとなったとき、ドラマは起きた。「ポール・トレーシーがシケインでコースアウトして、その彼がコースに戻ってきたときに並んで走っていた僕は押し出される格好となりました! このときはなんとかこらえましたが、もう少しでコントロールを失うところでした。バックストレートでは、周回遅れのシェクターが他のドライバーに道を譲っていたんですが、ちょうど僕が交わそうとしたときにレーシングラインに戻ってきたので、僕はブレーキをかけなければいけませんでした。トニー・カナーンに追突されたのは、その後のことです。本当に残念でした」

 琢磨はスピンに追い込まれて10位に後退したが、ウィナーのエリオ・カストロネヴェスがドライブスルー・ペナルティを消化しなかったため、9位に繰り上げとなった。続くレースはロードコースのミドオハイオとシアーズポイントだから、これはとても勇気づけられる結果だったといえる。「いい流れになってきたので、これを次のレースにもつなげたいと思います。今日はポジティブなことがたくさんあり、いくつかのことを学びました。今後行なわれるロードコースでのレースがとても楽しみです」

written by Marcus Simmons
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