RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.10 [Sun,14 June]
Toronto

不満の残るトップ10フィニッシュ
 オンタリオ市で佐藤琢磨がこれまで残してきた成績に比べれば、10位フィニッシュは決して悪い結果とはいえない。けれども、琢磨とNo.14 AJフォイト・レーシング・ダラーラ・ホンダがこの日、見せたスピードを考えると、この成績は残念なものだったと言わざるを得ない。

 琢磨は一時4番手まで浮上し、その時点で誰よりも速いペースで周回していたが、ライバルチームの巧妙なレース戦略やフィニッシュ間際に起きた給油関連のトラブルにより、デトロイトでの2位に続く好成績を収めるチャンスを逃したのである。

 「本当に一生懸命頑張りました」と琢磨。「10位フィニッシュという結果には、僕たちの奮闘振りが反映されていないと思います。僕たちは本当にコンペティティブに戦っていたのです」

 最初のプラクティスは13番手に終わったものの、今回も琢磨は滑り出しから好調だった。「なかなかいい状況でした。プラクティスはちょい濡れのコンディションで始まりましたが、僕はとてもコンペティティブでした。路面が乾くにつれて誰もが速くなっていきましたが、いずれにしてもいい幕開けでした」 2回目のプラクティスは大雨となったが、翌日以降は好天に恵まれるとの予報だったため、このセッションでは誰も走行を行わなかった。

 この結果、予選前に走行できる時間は減り、土曜日のプラクティス1回を残すのみとなった。「僕たちはもう少し別のセットアップを試すことにしましたが、決していい結果は得られませんでした。トロントのコースはとてもトリッキーです。このコースがどこよりもバンピーだというだけでなく、アスファルトからコンクリートパッチへと、ひとつのコーナーで3回舗装が変わることがあるからです。コンクリートに前輪が乗るとフロントのグリップが失われてアンダーステアになり、続いてクルマ全体がスライドし、その後フロントがアスファルトに戻ってもまだリアがコンクリート上に残っているためにひどいオーバーステアとなります。したがって、どんなセットアップを選んでもアンダーステアとオーバーステアに悩まされるわけですが、でもそれらを最小限に抑え、不必要に忙しいドライビングにならなくて済むようにもできるのです」

 しかし、土曜日の午前中になってもNo.14のマシーンは好ましい状態にならなかったため、予選に備えてオリジナルをベースにしたセットアップに戻すことを琢磨は決意する。ここで琢磨は自分のグループで4番手となって易々と第2セグメント進出を決めたものの、ほんのわずかな差でファイアストン・ファスト6への進出を逃し、8番グリッドからのスタートが決まる。「第1セグメントには、いつもどおり始めは誰もが硬めのブラックタイアで臨みました。そして、まさにレッドタイアに履き替えてアタックを始めようとしたそのとき、赤旗が提示されました。そこで僕たちは第2セグメントで2セットのレッドタイアを使うことを決めます。自分たちの純粋なスピードを考えれば、ポールポジションの獲得はあまり現実的とはいえません。けれども、ファイアストン・ファスト6にはなんとか進出したいと思っていました。最初の走行ではレッドタイアの感触を掴んで、2回目の走行ではフルアタックを行い、かなりタイムを更新できました。その時点で、僕は全体の5番手だったので、ファイアストン・ファスト6に進出できそうな状況でしたが、最後のラップで3台が僕のタイムを上回り、わずか500分の1秒差でチャンスを逃しました。これがモータースポーツというものですが、それにしても悔しかったです」

 「けれども、8番手でホンダ最高位というポジションは勇気づけられる結果で、僕にとってはトロントの予選でのベストリザルトとなりました」

 ここからセットアップを改善することで、日曜日のウォームアップはさらに期待が持てる展開となったが、これ以前にもう雨は降らないと誰もが信じていたことを皆さんは覚えていらっしゃるだろうか? その雨が、実は降り始めたのである。「天気予報が変わってウェットレースになりそうな気配でしたが、僕にとっては何の問題もありません! スタートが切られたときには雨は止んでいましたが、それでもまだウェットコンディションでした」

 誰もがずるずると滑りながら走行するなか、琢磨はオープニングラップにエリオ・カストロネヴェスを攻略してひとつポジションを上げると、ファン-パブロ・モントーヤが姿勢を崩した隙に6番手へと浮上する。「あれは楽しかったです。続いて僕はルカ・フィリッピを追いかけました。このとき、路面はどんどん乾いていったので、一部のドライバーはリスクを犯してスリックタイアへの交換を行いました。僕たちはピットストップのタイミングがあまり早くなかったうえ、ピットストップもそれほど素早いものではありませんでした。その後、最初は少し苦しみましたが、タイアの温度が上がってきたところで僕は追い上げを再開します。チョイ濡れのコンディションで僕たちはファステストラップをマークし、トップを追い詰めていきました」

 すべて順調で、琢磨は次第にフィリッピに近づいていったが、ジェイムズ・ジェイクスが壁と接触したため、この日最初のイエローが提示され、上位陣のほとんどのドライバーがピットストップを行なった。このときステイアウトしたのは、すでにピットストップを行っていたジョセフ・ニューガーデンやカルロス・ムニョスなどわずか数名で、このためレースが再開されたときには彼らがトップグループを形成することとなった。ピットストップの際に琢磨を追い越したのはモントーヤひとりだけだったが、この結果、リスタートが切られると琢磨は11番手となっていた。

 その後、しばらくはフルコーションにはならなかったが、ステファノ・コレッティがウォールに激突し、その破片を回収するためにイエローが提示される。ここから琢磨が目覚ましい活躍を開始するまで、さして時間はかからなかった。まず、ターン3でモントーヤのアウト側に並ぶと、続くターン4ではイン側に回り込み、その攻略に成功したのである。「モントーヤとのバトルは楽しいものでした。トロントではよくある抜き方ですが、僕はすぐにブラックタイアのグリップとバランスに苦しむようになり、最後のピットストップでレッドタイアに履き替えることを待ち遠しく思うようになりました」

 残り30ラップとなったところで琢磨はピットストップを敢行。コースに戻ったときには、異なるピットストップのタイミングでシークエンスがずれていたグレアム・レイホールが、再び同じように琢磨の直後に迫っていた。間もなくサイモン・パジェノーがピットストップを行うと、パジェノーは琢磨とレイホールの直前でコースに復帰した。「あれは最悪のタイミングでした。僕はラインを守っていたパジェノーのアウト側にいて攻略のチャンスをうかがっていましたが、その隙にレイホールがかなり無謀なドライビングで隙間をこじ開けてきて、僕たちふたりを追い抜いていったのです。僕は次の周にパジェノーをパスしました」

 ここで琢磨は不運にも燃費走行を強いられることとなる。「メカニカルトラブルか何かの理由で、燃料が満タンになっていなかったのです。僕は燃料をセーブしなければならず、おかげで不利な状態に追い込まれました。フルパワーは使えなかったので、レイホールを追い上げることはできず、ただパジェノーの防戦に追われることとなりました」

 レース終盤にピットストップを行ったドライバーがいたため、琢磨は10番手に浮上したが、それでも悔しい結果だったことには変わりない。「いい成績が残せなかったことは残念です。ある時点では僕たちのマシーンが最速だったので、10位という結果は納得がいきません。けれども、これがレースというものです。とはいえ、これが今シーズン最後の市街地サーキットでのレースだということは残念で仕方ありません」

カリフォルニア州の2マイル・オーバルコースであるフォンタナを訪れる前には1週間のオフが入るが、ここで琢磨は日本に一時帰国することになる。「たくさん予定が入っていますが、日本に帰れるのは嬉しいものです。それに、フォンタナのレース前にいいリフレッシュができると思います。メカニックたちにとっても嬉しい日程でしょう。彼らはずっとフラットアウトで働いてきたのですから。でも、フォンタナのスーパースピードウェイをまた走れることはとても楽しみです!」

written by Marcus Simmon
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