RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.3 [Sun,19 April]
Long Beach

決勝での追い上げも空しく……
 これまでロングビーチは佐藤琢磨にとって験のいいサーキットだった。そのハイライトが優勝した2013年だったことはいうまでもないが、2015年のベライゾン・インディカー・シリーズ第3戦としてカリフォルニアで開催された市街地レースは、琢磨に多くのものを授けたとはいえなかった。

 予選では好ましくないタイミングで赤旗が提示されて最初のハードルを越えられなかったうえ、アクシデントがほとんど起きなかったレースは序盤にイエローコーションが一度しか提示されただけで、順位を上げるチャンスはほとんどなかった。それでも、15位でフィニッシュできていれば最悪というほどのことはなかったのだが、琢磨は最終ラップに燃料を使い果たしてしまい、AJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダは18位でフィニッシュラインを越えたのである。

 「みなさんご存じのとおり、ロングビーチは特別なレースです」と琢磨。「とりわけ2013年のレースは特別な思い出で、僕とチームにとっては忘れがたい一戦となっています。昨年は多重クラッシュが発生して残念な結果に終わりましたが、今年は是非いいレースを戦いたいと願っていました。けれども、結果的にはまったく納得のいかないレースになりました」

 琢磨の不振は金曜日のフリープラクティスですでに始まっていた。「バランスにもグリップにも満足がいきませんでした。まるで、先週行われたNOLAモータースポーツ・パーク戦の続きのような状況でした。NOLAで使ったロードコース用タイアと市街地コース用タイアでは大きく異なっているので、僕たちは市街地コース用のセットアップには自信を抱いていましたが、プラクティスでは苦戦を強いられたのです」

 「新しいエアロキットが導入されて以来、マシーンはメカニカルグリップよりもエアロ・パッケージに大きな影響を受けるようになっていたので、僕たちはシャシー・コントロールについてもう1度考え直さなければいけないのかもしれません。バランスが良好とはいえなかったのです。結局、金曜日は一日中満足のいく結果は得られませんでしたが、土曜日の午前中にこれまでとは異なるセットアップを試したところ、良好な感触が得られました。ようやくいいラップタイムが記録できるようになったのです。特に速いラップタイムを出そうと意識したわけではありませんが、セットアップが正しい方向に向かっていることが実感できました。ここにきてようやくポジティブな印象が得られたので、自信をもって予選に臨むことができました」

 運悪く、琢磨がソフト目のファイアストン・レッドタイヤを装着し、アタックを始めようとしたところで、ステファノ・コレッティがアクシデントを起こしたために赤旗が提示され、セッションは終了となってしまう。予選グループのなかでの琢磨の成績は10番手。このため20番グリッドからレースに臨むことになった。「まず、古いブラックタイアでウォームアップを行ってからレッドタイアに交換しました。ところが、アウトラップに入ろうとしたところでレッドフラッグとなってしまったのです。マシーンのポテンシャルを発揮させられなかったのは本当に残念でした。ライバルのなかにはレッドタイアでタイムを記録できたドライバーもいましたが、僕たちは割り当てられたピットの位置??これは前戦のグリッドポジションで決まります??の関係で、列に並ぶ格好になってしまったのです」

 「おかげで、満足のいかないグリッドポジションに終わっただけでなく、レッドタイアでマシーンがどんな挙動を示すかを確認するチャンスも失われてしまいました。けれども、日曜日の朝に行われたウォーミングアップ・セッションでマシーンは素晴らしい感触を示してくれたので、僕は明るい希望を抱いていました。ライバルたちがレッドタイアに履き替えたり、コンディションのいいタイアを装着するようになるまで、僕は3番手か5番手につけていたので、トップ10は確実でした。マシーンがロングビーチでより普通の反応を示すようになり、僕好みに仕上がってきたことに僕は満足していました」

 ロングビーチではいつものことだが、路上の破片を拾い上げるためにセーフティーカーが導入されるまでのレース序盤は、ほとんどオーバーテイクは見られなかった。琢磨はファイアストンのレッドタイアに履き替えるためにピットストップを行ったが、ここでややタイムをロスすることになる。「日曜日は何ひとつうまくいきませんでした。コーションになって僕がピットに入ろうとしたときにはひどい混雑になっていて、ポジションを上げられるチャンスはまったくありませんでした。それでも、僕はコース上でオーバーテイクしていくつかポジションを上げましたが、僕は大きな集団に呑み込まれていて、トップグループに比べるとだいぶ遅いペースで走行していました」

 これ以降、レースはずっとグリーンのまま進行。この間2度のピットストップを行ったものの、速いペースで走っていたにもかかわらず、順位を上げることはほとんどできなかった。2回目のピットストップを行う直前、他のチームとは異なるタイミングでピットストップを行っていたAJフォイト・レーシングのジャック・ホークスワースと琢磨は一時的に1-2体制を築いたほか、とりわけラップタイムが速い琢磨は、2回目と3回目のピットストップの間に中団の大集団に徐々に追いついていった。ところが、最終ラップではまたしても試練が琢磨を待ち受けていたのである。

 「僕の前にいたグループに追いついていったときは素晴らしい気分でした。今日のレースは上位陣のほとんどがシボレーで占められていましたが、僕はホンダのなかで最速のドライバーでした。ただし、追い上げを図りたいと思っているときに限って、タイア交換でちょっとした問題が起きて、逆に順位を落としていました。他のドライバーに追いつけるくらい僕は速かったのですが、オーバーテイクするのはとても難しい状況だったのです」

 それでも、最終ラップに入るまで、琢磨は15位でフィニッシュできる感触を掴んでいた。「ちょっとしたドラマが起きました。燃料には余裕があると聞いていたのですが、燃費の計算に問題があって、1ラップ分の燃料が足りないことが明らかになったのです。必要以上の燃料がまだ残っているという想定だったので、僕はファイナルラップまでエンジン・マッピングをフルリッチにして走っていました。ところが、ファイナルラップのターン1で、ものすごい量の燃料をセーブしなければいけないと告げられたのです。それでもまるまる1周をレーシングスピードで走らなければいけなかったので、軽いパニックに陥りました!」

 「チャーリー・キンボールが直後に迫っているのに、ラリー・フォイトは燃料をセーブして完走しろと僕に指示してきました。僕は順位を落とすことなくなんとか走り続けていましたが、バックストレートでエンジンが息つきを起こし始めたので、マシーンが止まるのはもはや時間の問題でした。僕はターン9、10、11を惰性で走り抜け、その後のフィニッシュラインに向かうヘアピンでは加速したいと思っていました。実際、ほんのわずかにマシーンは加速しましたが、2速に入れる前にエンジンは完全に息絶えてしまいました。このとき、チャーリーは僕を避けきれずに接触しましたが、僕は惰性だけでようやくフィニッシュラインを越えることができました。タフなレースでした。ペースはとてもよかったのに成績が伴わない、とても辛いレースでした」

 翌日、琢磨はカリフォルニアに留まってホンダ・パフォーマンス・デベロップメントを訪問した後、飛行機でインディアナポリスへと戻った。ここから陸路でアラバマ州を目指し、来週バーバー・モータースポーツ・パークで開催されるレースに挑むことになる。「バーバーで行われた開幕前のオープンテストでは手応えを掴むことができました。バーバーは素晴らしいロードコースで、インディカー・シリーズが開催されるサーキットとしてはとても路面が滑らかなので、ホンダのエアロにとってはとてもいいコースだと思います。開幕から辛いレースが3戦続いたので、今度こそトラブルフリーで週末を過ごしたいと願っています!」

written by Marcus Simmon
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