RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.9 [Sun,04 July]
Watkins Glen International

間違いなく速さはあったが……
 KVレーシング・テクノロジーとともにワトキンスグレンでの一戦に臨んだ佐藤琢磨は、ロードコースとしては過去最高のパフォーマンスを披露したにもかかわらず、残念ながら思い通りの成績を収めることはできなかった。

 ロータスがサポートするダラーラ・ホンダで予選5位に食い込んだ琢磨は、レース序盤に4番手に浮上してトップグループに挑みかかったが、様々な理由により不本意な15位でチェッカードフラッグを受けることとなった。

 かつてF1を戦った日本人ドライバーは、今回、事前のテストがなかったにもかかわらず、4月のバーバー・モータースポーツ・パークと変わらぬ活躍を見せていた。

 ニューヨーク州郊外のワトキンスグレンは、琢磨がたった3歳だった1980年までF1アメリカGPの舞台となっていたサーキットで、極めてチャレンジングなことで知られる。「事前にテストできることを期待していましたが、悪天候のためにキャンセルされてしまいました」と琢磨。「このため、すべてのプログラムをプラクティスだけで消化することになり、とても難しい状況となりました。予選までには1時間のセッションが2回しかなかったので、時間的な制約が厳しかったのです」

 「素晴らしいサーキットです! オウルトンパークやブランズハッチのグランプリコース(いずれもイギリスF3時代に優勝経験がある)にそっくりで、大きく曲がり込んだコーナーやアップ・ダウンがたくさんあります。バンプも至るところにあって、簡単ではありませんでしたが、ドライビングするには最高のサーキットです」

 土曜日のフリープラクティスは10位に終わったが、この成績から琢磨の予選結果を想像するのは難しい。しかし、全ドライバーを2組に分けて行なう最初の予選を、琢磨は順調に4位でクリアすると、2回目の予選でも6位に滑り込み、ポールポジションを決めるファイアストン・ファスト・シックスへの進出を果たした。そして、このセッションで琢磨の友人であり、元F1ドライバーでもあるジャスティン・ウィルソンを破って5位の座を手に入れたのである。

 「プラクティスの段階ではあまり好調とは思えませんでしたが、予選はとても上手くいきました。タイアは再びロードコース用のルールに戻ります。つまり、“レッド”とも呼ばれるソフト傾向のオルタネート・タイアは2セットだけ、それも予選に入って初めて使えるというルールです。インディカーはとても接戦で、誰もが最初の予選でオルタネート・タイアを装着するため、僕たちは“ブラック・タイア”でのフィーリングをベースにオルタネート・タイア用のセッティングを推測することになりました」

 決勝のスタートはスリリングなものだったが、琢磨はウィルソンとディソンのふたりにパスされて7位となってしまう。「とてもエキサイティングでした。ターン1での進入ではスリーワイドになって、ジャスティンやスコットと素晴らしいバトルをしました。最初、スコットは僕の前に出ましたが、ターン1の出口でスコットをオーバーテイク。でも、ガナッシのマシーンはとても速くて、丘に登っていく途中で抜き返されてしまいました」

 その後、ディクソンとエリオ・カストロネヴェスが接触したことで琢磨は5位に浮上。さらに、60周のレースの10ラップが終わったところで、バスストップ・シケインの進入でウィルソンを一掃するようにオーバーテイクすると、4位へと駒を進める。さらに、ダン・ウェルドンがスピンして、この日最初のフルコーションとなり、ここでほとんどのドライバーがピットストップを行なった。残念ながら、このとき琢磨はチームメイトのマリオ・モラエスとラファエル・マトスに先行されたうえ、リスタート後にはトニー・カナーンとサイド・バイ・サイドとなってターン1でアウトにはらみ、トニーとマルコ・アンドレッティにも抜かされることとなる。

 「ジャスティンとのバトルは楽しかったし、4位を走行できたのも素晴らしかったけれど、ピットストップで順位を落としたときは、僕にはどうしようもありませんでした。さらに、ピットでブラック・タイアに履き換えてからは、僕のスピードは目に見えて落ちていました。コーナリングスピードは他のドライバーとほとんど変わらなかったのに、ストレートで差をつけられるようになったのです。僕のマシーンはスピードが上がらずハンドリングのバランスも崩れ、それらは走行を重ねても回復しませんでした」

 最後のピットストップでレッド・タイアに戻したのは当然の判断だったが、そのタイミングが1ラップ早すぎたため、琢磨がピットレーンに入ってきたとき、クルーはまだ用意ができていなかった。この遅れで琢磨はさらに順位を落とす。しかも、このピットストップで最後まで走り切るのに必要な量の燃料を給油できなかったため、シモーナ・デ・シルヴェストロのクラッシュによりこの日2度目で最後のフルコーションとなったとき、琢磨はもう1度ピットストップして給油を行なわなければならなかった。

 「チームとのコミュニケーションで誤解があり、大きく順位を落としてしまいました。けれども、仮にもう1ラップ遅くピットストップしていても、最後にもう1度スプラッシュの給油が必要になったか、極端にペースを落として燃費をセーブしなければフィニッシュできなかったはずです。だから、とても危うい状況でした」

 これが順位を落とす原因となったのは明らかだが、改めてレッド・タイアを履き、フィニッシュまで必要な燃料も手に入れた結果、琢磨はこの伝説的なサーキットで思いっきりレースを戦えることとなった。最後の数周ではアレックス・タグリアーニを再びオーバーテイク。最後のラップではアダム・キャロルも抜き返し、15位でチェッカーを受けた。「僕たちのマシーンは柔らかいほうのタイアではよく走ってくれましたが、残念な結果に終わってしまいました。今日こそは、いい結果を期待していたのですが……」

 とはいえ、インディカー・シリーズへの挑戦は今後も続く。続く2戦は国境を越えたカナダ側で行なわれる。その緒戦は有名なトロントの市街地コースで、2週間後の開催だ。スピードは間違いなくある。果たして、今度こそ運も呼び込むことができるだろうか?

written by Marcus Simmons
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