RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.11 [Sun,06 July]
Pocono

あっけない幕切れ
 ベライゾン・インディカー・シリーズに参戦するドライバーにとって、500マイル・レースをわずか62.5マイルで終えるくらい不完全燃焼なこともないだろう。しかし、No.14 AJフォイト・レーシング・ダラーラ・ホンダを駆ってポコノ・インディカー500に挑んだ佐藤琢磨は、電気系トラブルのため200ラップのレースを25ラップで終える不運に見舞われたのである。

 琢磨にとってさらに不運だったのは、この週末は土曜日の午前中に行なわれた最初のプラクティスからずっと好調を保ち、上位入賞が期待されていたことにあった。

 「シーズン前からポコノのレースを本当に楽しみにしていました」と琢磨。「ポコノはとてもチャレンジングで、ものすごくドライビングが楽しいコースです。3つのコーナーはどれもタイプがまったく異なっていて、ハイバンクのターン1はとても興奮するいっぽう、ターン3にはバンク角がほとんどありません。このため、1周を走る間にも大きなバランスシフトが起こります。ただし、僕たちは去年の段階で良好な仕上がりのベースセットアップを見つけ出していたほか、その後さらにいろいろな理解を深めているので、今年もきっとコンペティティブに戦えるという自信を抱いていました」

 最初のプラクティスで琢磨は5番手、続く2回目では7番手となっていた。「とても実り多い1日でした。プラクティス1でもプラクティス2でも僕たちはとてもいい走りができて、順調にマシーンを煮詰めていくことができました。ミルウォーキーのテストで見つけた新しいセットアップの方向性のおかげで、とてもいいクルマに仕上がっていました。それはとても勇気づけられる展開でした」

 さらに嬉しいことに、No.14ABCサプライのマシーンは4番グリッドを手に入れたのである。「予選では、すべてをうまくまとめられたと思います。とても好調でした。ちょっとだけ残念だったのは、予選が終わる10分前まで僕たちが暫定ポールを手にしていたことです。けれども、その後で速いチームがタイムアタックするのがわかっていましたし、コースコンディションはセッションの終盤に向けて徐々によくなっていました。それでも、チームは素晴らしい仕事をしてくれましたし、2ラップのタイムアタックには僕自身もとても満足していました」

 「ただし、予選の後にウォームアップなどのセッションが設定されていなかったため、フルタンクでトラフィックのなかを走るチャンスがなく、レースセットアップでひとつだけ確信が持てないことがありました。しかし、ここまで走行した感触から、マシーンの仕上がりはとてもいいと感じていました」
レースが始まると琢磨は10番手まで後退したが、その後の数ラップでジェイムズ・ヒンチクリフ、ライアン・ブリスコー、エリオ・カストロネヴェスらを次々と攻略し、7番手まで挽回。しかし、ブリスコーとカストロネヴェスの反撃にあって9番手となった。

 「スタートではエンジンのマッピングが合っていなく、オーバーブーストを起こしてしまいました。インディーカーではオーバーブーストを起こすと、ペナルティとして数秒間だけエンジン・パワーが低下してしまいます。それによってスタートでは大きく順位を落としてしまいました。それと同時に、ダウンフォースも不足気味のようでした。この日は予選日よりだいぶ暖かく、風もやや吹いていました。僕たちは、空気密度はあまり下がらないと予想していましたが、ライバルたちのほうがダウンフォースを余計につけているように思われました」

 「今回はインディアナポリスのときと同じような調整式のリアウィングを使うことができたので、レース中でもセットアップの変更が可能でした。やがて僕はスピードを取り戻すと、トップグループと同じくらいのペースで走れるようになり、徐々にポジションを上げていきました。ところが、突然パワーが失われてしまったのです」

 25周目を終えた琢磨は惰性でピットまで戻った。しかし、メカニックたちの懸命の作業にもかかわらず、レースに復帰することはかなわなかった。「電気系トラブルが原因で、エンジンそのものに問題がないことはわかりました。僕たちはレースに戻れるよう努力しましたが、原因を突き止めることはできませんでした。そこでガレージにマシーンを押し戻し、いろいろなパーツを取り外していきましたが、エンジンを再始動することはできません。残念ながら僕たちの悪い流れはまだ終わっていないようでした。でも、速さは見せられたと思います」

 この後、インディカー・シリーズはシーズン中でもっとも充実して忙しい時期を迎える。なにしろ、アイオワ・スピードウェイで開催される次のイベントまで、わずか数日しかないのだ。そして、このコースでこれまで琢磨が数々の活躍を示してきたことはいうまでもない。

 「アイオワも大好きなコースのひとつです。昨年はトラブルによりレースを離脱してしまいましたが、僕たちの速さはお見せできましたし、今回こそはいい結果が得られると期待しています!」

written by Marcus Simons
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