RACEQUALIFYINGPRACTICE
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Rd.8 [Sun,20 June]
Iowa Speedway

栄光の表彰台まであと一歩というところで……
 オーバルレースに参戦してまだ4戦目だというのに、佐藤琢磨はアイオワ・スピードウェイで開催されたインディカー・シリーズで表彰台を手に入れられるポジションにつけていた。けれども、バックマーカーを追い越す際に不運な事故に遭い、3位の座を棒に振ることとなった。

 もしも完走を果たしていたら、ロータスKVレーシング・テクノロジーのダラーラ・ホンダはどんな成績を残していただろうか? まず、あの時点で琢磨は、このレースの勝者となるトニー・カナーンと今年のインディ500ウィナーであるダリオ・フランキッティに続く3位を走行していた。そして琢磨に続く4番手はエリオ・カストロネヴェスである。しかし、フランキッティは間もなくメカニカル・トラブルでリタイア、そしてカナーンはピットストップ作業の遅れで一時カストロネヴェスを追うポジションに後退し、そこからカストロネヴェスを改めて抜き直して勝利を手に入れたのだ。どう考えても、琢磨が表彰台に上れることは間違いなかった。

 けれども、250周のレースが残り73周となったところで、不可思議なバックマーカーの存在が琢磨をウォールとの接触に追いやった。“残り73周”は長い道のりだと思う人のために付け加えておくと、アイオワ・スピードウェイの全長は0.9マイル(約1.4km)で、ラップタイムはわずか18秒に過ぎないのである。

 この特徴的な“コースレイアウト”が、アイオワ・スピードウェイをインディカー・シリーズのなかでもひときわユニークな存在としている。「テキサスの直後にテストで立ち寄る予定になっていたワトキンスグレンで“右に曲がる”のを楽しみにしていました」と琢磨。「けれども、悪天候のためにスケジュールはキャンセルされてしまいます。さて、僕たちはアイオワに向かいました。アイオワはショートオーバルなのでロードコース用の大きなウィングを使いますが、ハイダウンフォース仕様でハイバンクなコースを走るため、スーパースピードウェイ用のハードタイアを装着することになりました」

 「前途の通りクルマのスペックが特殊なことから、ここではいつもよりも多く1時間のセッションを2回行なうプラクティスが設けられていたので、これは僕にとって非常に助かりました。コースやタイアをしっかりと学ぶ時間があり、レースに向けていろいろなセットアップを試すチャンスがありました。プラクティスの内容はとてもポジティブなもので、車の仕上がりにはとても満足していました」

 予選でも琢磨は7番手に食い込み、すべてが順調に進んでいることをうかがわせた。「予選はとてもチャレンジングでした」と琢磨。「スーパースピードウェイ用のタイアはハードですが、クォリファイ前のウォームアップランは2周しかなく、しかもラップタイムはたったの18秒しかありません。したがって、最初のアタックラップのターン1ではまだ充分にタイアは温まっていませんが、それでもやるしかありません。ものすごいバンプがあっても、ラインはキープしなければならないのです。ターン3とターン4ではアンダーステアとオーバーステアが顔を出しますが、前後のアンチロールバーとウェイトジャッカーを使って乗り切らなければいけません。ここで7番グリッドを獲得できて、本当に満足しています」

 オーバルレーシングの経験を徐々に積んできた琢磨は、レース序盤から安定した戦い振りを示していた。

 「これまでにオーバルレースで3回スタートを切ったので、少しずつ要領がわかってきました。今回はアグレッシブな姿勢で臨むことができ、ポジションを落とすことなく、実力派ドライバーに囲まれてスタートを切りました。バンプがあるなか、2ワイド、時には3ワイドになりながらターン1に進入するのは最高にエキサイティングでした」

 「テキサスでは、最初のスティントのセットアップをかなりコンサバティブにしたため、ひどいアンダーステアだったので、今回はより攻めたなアプローチで臨みました。ただし、マシーンの仕上がりはよかったものの、今回もアンダーステアは強めでした。そこで第1スティント、第2スティント、第3スティントのそれぞれが終わったところで、フロントのフラップとタイアの空気圧を調整して改善していきました」

 「トップグループとの戦いはとても励みになり、エキサイティングで、本当に楽しかったです! エリオとのバトルは最高で、何周にもわたって彼とサイド・バイ・サイドとなり、素晴らしい気分を味わいました」

 ライアン・ハンター-レイやスコット・ディクソンを手早く仕留めると、琢磨は3番手に浮上していた。「ディクソンをオーバーテイクすると、目の前にはあとふたりしか残っていなく、とてもエキサイティングに感じられました。ここまでずっとマシーンの調整を行なってきた結果、この時点でのバランスに非常に満足していたので、さらにスピードを上げるつもりでした」

 「僕は周回遅れのダニカ・パトリックとアレックス・ロイドをオーバーテイクしようとしていました。僕はかなりスピードに乗っていたし、何も心配なことはありませんでした。これまでに何度も周回遅れを処理していたのですが、今回ばかりはタイミングが悪かったようです。最初、彼らはコースの中央を走行していたので、僕はインサイドを狙いました。ところがターン3に進入したとき、アレックスがインサイドに降りてきたので、僕はスロットルを戻すと同時にブレーキをかけました。それでも彼との距離は急速に縮まっていき、ものすごいタービュランスに巻き込まれました。この直後、マシーンはとんでもない方向に向かい始め、すぐにマシーンを直進方向に立て直しましたが、その時にはハイレーンに行き過ぎていてタイア滓を拾ってしまい、コントロールを失ってしまったのです」

 「チームは一生懸命頑張ってくれたし、僕もオーバルレーシングを心から楽しんでいたので、とても残念な出来事でした。けれども、何事も経験を積み、そこから学ばなければなりません。今回は残念な結果に終わりましたが、オーバルにおけるポジティブなこともたくさん見つかりました。シーズ後半に再びオーバルレースに臨むときには、僕らはきっといい戦いができると自信を抱きました」

 今後はロードコースと市街地サーキットでのレースが続く。その皮切りは、7月4日に、1961年から1980年までF1アメリカGPの舞台ともなったニューヨークの伝説的なサーキット、ワトキンスグレンで開催される。「インディカーのことがかなりわかってきたので、ロードコースでの戦いは以前にも増して楽しみです。結局、テストはできませんでしたが、とても美しいサーキットなので、いまからレースが楽しみで仕方ありません」

written by Marcus Simmons
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